「日大が総力を挙げて潰しに行く」と脅しをかける理事が野放しだった訳だから、日大アメフト部の出場停止処分継続は妥当

 日本大学アメフト部の学生が試合中に対戦相手の関学の QB に悪質なレイトタックルを行った問題で、日大の井ノ口忠男・元理事が口封じを行っていたことが明らかになったと NHK が報じています。

 第三者委員会による最終報告書の中で明らかになったのですが、学校側が問題行為の隠蔽に走っていた実態が明るみに出ました。この件に対する処分は何ら行われていない訳ですから、日大アメフト部に対する出場停止処分の継続は妥当と言えるでしょう。

 

 反則行為があった試合から1週間以上がたった5月14日に選手と父親が大学に呼び出され、井ノ口元理事から「タックルが故意に行われたものだと言えばバッシングを受けることになる」と内田前監督らの指示がなかったように調査に対して説明することを求めたということです。

 そのうえで、井ノ口元理事は「私が大学はもちろん、一生面倒を見る。ただ、そうでなかったときは日大が総力を挙げて潰しに行く」と述べ口封じを図ったということです。

 第三者委員会はこの口封じについて「重大な隠蔽工作を行い真相解明を妨害したもので、日大の事後対応に看過しがたい問題を引き起こした」と厳しく指摘し、今後の部の再建については井ノ口元理事の影響力を完全に排除した状態で行わなければならないと強調しています。

 不祥事を起こした組織で隠蔽工作が行われることは珍しいものではありません。「問題だ」と自覚しているから、隠蔽に走るのです。

 日大アメフト部の件で特筆すべきは「理事自らが隠蔽工作のために圧力をかけている」という点でしょう。この事実が認定されたことで、日大内部での問題の根深さが浮き彫りとなりました。

 

スポーツ指導者の非常識な振る舞いがネットの炎上を機に知れ渡る

 日大アメフト部の問題は「現場出身の権力者が暴走した」という部分が大きいでしょう。“負のスパイラル” が始まり、誰もそのことにブレーキをかけられなかったのです。

 『日大アメフト部』という伝統がある一大勢力に物申すことは簡単なことではありません。

 悪質なレイトタックルが敢行された時、試合没収の権限を持つ審判員は権限を行使せず。関東学連もネットで大炎上するまでは動くことはなく、マスコミも同様でした。

 それが当たり前だったから、日大アメフト部出身の理事は選手に普段どおりに圧力をかけたのでしょう。もちろん、過去には “取引に応じた学生” がいたはずです。しかし、インターネットが普及した現代のコンプライアンス基準では逆効果となりました。

 隠蔽工作が火に油を注ぐ結果となっており、日大は危機対応をことごとく間違えたと言わざるを得ません。

 

理事自らが隠蔽工作に乗り出した上、告訴された内田前監督・井上前コーチの弁護費用の負担を検討した日大

 悪質タックルで世間からの批判が強まると、井ノ口元理事がタックルをした選手に「指示はなかったと証言しろ」と圧力をかけます。理事自らが隠蔽工作に乗り出していたのですから、極めて悪質な行為です。

 ただ、井ノ口元理事が自らの意志だけで圧力をかけたとは考えにくい事情があります。

 なぜなら、内田前監督も理事であり、立場や肩書きは井ノ口元理事よりも上位です。内田前監督が責任を問われて失脚すれば、自分が昇進する可能性が高くなる訳ですから、大炎上が起きている中で選手に圧力を加えるリスクを取るだけの見返りがないからです。

 また、日大が刑事告訴された内田前監督・井上前コーチの弁護費用の負担を検討したことも意味不明です。これは「学校ぐるみの行為」と世間にアピールしていることと同じであり、学校側としての対応に問題があるとの印象を強めるだけでしょう。

 

関東学連による日大アメフト部の出場停止処分継続は妥当な判断だ

 関東学連が「改善は不十分」との見解を示したことで、日大アメフト部は秋から始まる公式戦への出場は閉ざされました。この判断は妥当なものと言えるでしょう。

 アメフト部が所属する運動部を統括する保健体育審議会で実効性を伴う施策に具体性がないのです。不十分な状態では同様の悲劇が起きることは否定できません。

 日大アメフト部の保護者は「4年生にとっては最後のシーズン」と主張するでしょう。しかし、「4年生にとって最後のシーズン」は日大以外の学生にも言えることです。

 対戦相手校の生徒を意図的に負傷させたチームとの対戦に前向きな学校は存在しないと考えられます。理事が行った不祥事に対する “学校側のケジメ” もない訳ですから、現状維持(=出場停止処分の継続)は妥当と言えるはずです。

 まずは日大が学校法人として真っ当な再発防止策を出さない限り、アメフト部がピッチに復帰することは絶望的と言えるのではないでしょうか。