太陽光発電による開発トラブルを避けるため、国がようやく環境アセスメントの義務化に動き出す

 読売新聞によりますと、環境省が太陽光発電所を国の環境アセスメントの対象に加える方針を固めたとのことです。

 太陽光発電をするための用地を確保するために乱開発が行われ、それによる様々な問題が各地で発生しています。むしろ、今まで「環境アセスメントをする必要すらなく、太陽光パネルを設置する工事が可能」だったことが大きな問題と言えるでしょう。

 導入のきっかけを作った際に政権を担っていた立憲民主党はこの問題に対して真摯に向き合わなければならないはずです。

 

 環境省は、太陽光発電所を国の環境アセスメント(影響評価)の対象に加える方針を固めた。大規模な計画が急増し、森林伐採や景観破壊を巡って住民とのトラブルが相次いでいることが背景にある。30日に有識者の初会合を開き、来年にも実施を目指す。

 「環境にやさしい」との “触れ込み” でアピールしている太陽光発電が森林伐採などを始めとする環境問題を引き起こしていることは本末転倒です。

 そもそも、発電所を建設する際は『環境アセスメント』は実施が義務づけられているべきものであり、「その必要すらない」との認識で法整備されたことが問題と言えるでしょう。民主党政権(当時)の失政の1つであり、是正に取り組むのは後継政党である立憲民主党の責務であるはずです。

 

各地で環境問題を起こす太陽光発電

 太陽光発電による環境問題は全国各地で発生しています。

  • 山陽新幹線の線路脇にある太陽光発電施設が豪雨で崩落(兵庫県神戸市)
  • 「土石流発生の恐れがある」と町が反対(山形県飯豊町)
  • 海沿いの太陽光発電建設計画に市が規制条例を制定(静岡県伊東市)
  • 太陽光パネル設置のため、国立公園内の樹木を無許可伐採(三重県志摩市)
  • 四万十川沿いの太陽光発電所の建設計画を市が不許可(高知県四万十市)

 無許可での伐採を除いた案件は『環境アセスメント』が事前に実施されていれば、全国区で取り上げられる問題にはならないでしょう。

 太陽光パネルを設置することができれば、設置者は儲かるのです。『儲け』のために『環境』を破壊するインセンティブを与える仕組みを作り上げた民主党政権の責任は重大であると言わざるを得ません。

 

“FIT による高価格水準での全量買取保証” が乱開発を招いた大きな要因

 市場よりも高額な買取価格で保証されているなら、参入を表明する企業が列を連ねることでしょう。

 しかも、「環境アセスメントは不要」です。発電した分は電力会社がすべて買い取ってくれる上、建設時の “厄介な調査” や環境対策などは不必要なのです。これほどの “オイシイ話” は滅多にないはずです。

 義務づけられていない項目にコストを費やす企業は少数派でしょう。現状では「太陽光パネルの廃棄費用は誰が出すのか」というルールすら、存在しないのです。

 「高額な価格で売電し、太陽光パネルの廃棄などコストが必要となる前に事業から撤退する」という “食い逃げ” が可能な状態となっているだけに、一定の資金を用意できる業者が環境を無視した乱開発をするのは自然な流れなのです。この点を是正することは必須事項と言えるでしょう。

 

「環境問題」に熱心な左派界隈は「太陽光発電による乱開発」を批判し続けているのだろうか

 太陽光発電所の建設による乱開発を強く動機づけたのは FIT (全量固定買取制度)であることは否定できません。

 FIT の制度そのものは一般的なものですが、建設時に発電手法と同様の『環境アセスメント』が不要だったことが環境問題の呼び水となりました。これは民主党政権(当時)の責任問題であり、「環境問題」に取り組む左派界隈には現状を是正することを提案し続ける責務があります。

 しかし、そうした運動にはあまり熱心ではなく、なぜか「反原発」を掲げている有様です。

 明らかにピントがズレた対応をしてしまっています。これでは “真っ当な野党” どころか、“マシな野党” になることが現実目標と言えるでしょう。そのぐらいの矛盾を世間にさらしてしまっているのです。

 

 「環境にやさしい発電方法」が「環境破壊の元凶」では話になりません。この事実を隠し通そうとするほど、太陽光発電所の建設反対派に正当性を与える要因となり、再生エネ普及の障害となってしまうのです。

 この点を自覚し、正攻法で発電所が建設できるようにするために必要なルールや法整備に環境保護派と歩調を合わせることが多い野党は取り組むべきと言えるのではないでしょうか。