JOC 管轄下で発生する “パワハラ問題” への特効薬は「指導者・上層部の人物によるクラブと代表での役職兼任を禁止すること」である

 読売新聞によりますと、体操の宮川紗江選手が「自身の指導者から暴力を受けていた問題」で、聴取時に日本体操協会から「暴力行為があった」と証言するよう強いられるなどの “パワハラ” があった訴えたことで第三者委員会が設置されるとのことです。

 競技管理団体の上層部が絡むパワハラ問題はレスリングでも起きており、抜本的な対策を講じる必要があるでしょう。少なくとも、指導者や競技管理団体の上層部にいる人物がクラブと代表で役職を兼務できないよう規則を設けなければならないと言えるでしょう。

 

 体操女子の宮川紗江選手(18)が自身の指導者選定などをめぐり、日本体操協会の塚原千恵子強化本部長(71)らからパワーハラスメントを受けたと訴えている問題で、協会は30日、都内で幹部による緊急対策会議を開き、調査のための第三者委員会を設置することを決めた。メンバーはこれから選定し、弁護士を含む3人ほどになる見通し。

 (中略)

 暴力問題の聴取にあたった塚原本部長、塚原副会長から高圧的な姿勢で「あのコーチはダメ」などの言葉を投げかけられたと訴えた。

 宮川選手は2つの問題での当事者となっており、それぞれを分けて対処する必要があります。

  1. 速見佑斗コーチからの暴力行為
  2. 塚原千恵子・女子強化本部長らからの「証言の強要」と「所属クラブ変更の圧力」

 『パワハラ問題』などとのレッテルを使うのではなく、問題行為を具体的に指摘し、それぞれの件について適切な対処を実施する必要があると言えるでしょう。

 

速見佑斗コーチからの宮川紗江選手に対する暴力について

 まず、『パワハラ問題』の発端となった「速見佑斗コーチからの宮川紗江選手に対する暴力行為」ですが、これは宮川選手自身が認めていることです。

 そのため、「暴力を振るった」という事実を基に速水コーチに処分を科す必要があります。宮川選手が「速水コーチに対する処分軽減」を求めていますが、『暴力』は有効な指導方法ではありません。

 処分は科されるべきであり、処分保留とすべきではないのです。

 ただ、「宮川選手の注意力が散漫であり、怪我を予防するために厳しい口調で注意した」など、“厳しい態度で接しなければならないケース” があることも事実です。こうした状況であることが確認・認定できた場合に限り、通常の処分内容よりも軽減するべきと言えるでしょう。

 

塚原千恵子・強化本部長の “強要発言” について

 次に、塚原千恵子・強化本部長が宮川選手に行った発言は問題となり得る部分が複数存在しています。そのため、第三者委員会の設置を決めたのでしょう。

  • 強化プロジェクトへの参加を辞退した宮川選手に対し、「このままだと五輪に出られなくなるわよ」と発言
  • 「暴力の話が出ている、認めないと厳しいことになる」
  • 「あのコーチはダメ、私なら速水コーチの100倍教えられる」
  • 「うちに来なさい」

 塚原千恵子氏の発言が問題となるのは『代表チームの女子強化本部長』と『朝日生命体操クラブの副校長』という2つを掛け持ちしていることでしょう。

 代表チームを預かる監督・コーチが強化プロジェクトへの参加を辞退した選手に「五輪出場権を逃すことになるよ」と発言することは問題ではありません。しかし、その人物がクラブチームも現在進行形で指導しているなら、この発言は大問題です。

 なぜなら、“代表チームの人事決定権” を使い、自身が率いるクラブチームを強化する選考を行うことが可能となるからです。これは女子レスリングでも同じ構図の問題が起きており、協会側が是正に乗り出す必要のある問題と言えるでしょう。

 

「指導者・上層部の人物によるクラブと代表での役職兼任を禁止すること」が改善策

 パワハラ問題が起きる原因の1つは「代表チームの選考権を持った人物がクラブチームも率いている」という点でしょう。

 ほとんどの競技は「日本代表に選ばれるか」によって、選手への注目度は大きく変わります。そのため、「自らが指導するクラブチームに所属する選手を『日本代表』に選出する」という “親心” が働く傾向が強くなります。

 また、「自らが指導するクラブチームに所属する選手のライバル選手を選考で落とす」ことも可能です。その選手が圧倒的な実力・実績を持たない限り、落選の理由は後から何とでも作ることができるからです。

 したがって、『日本代表チーム』と『クラブチーム』での役職兼任は禁止とするべきです。

 

 そうすることで、「代表チームの選考権」を背景にした強要・強制行為は従来より大きく減少するはずです。“パワハラ問題” の有無に関係なく、『朝日生命体操クラブ』で指導者を務める塚原夫妻に「日本体操協会の役職から退くこと」を要求しなければなりません。

 塚原夫妻が『体操・日本代表』を私物化できる状況が整っており、これを是正することが宮川選手が当事者となっている問題の1つを解決する有効策と言えるのではないでしょうか。