マイナス面が知られてない中でサマータイム導入の議論が進むことは問題だ

 「東京オリンピックでの暑さ対策」を理由にサマータイムを導入する声が大会組織委員会などから上がり、日本政府への陳情を行っています。

 その中、技術者を中心に「(期日までの)準備期間が短すぎる」などと反対の声が出ていると NHK が報じています。マイナス面が世間に知られてない中で、サマータイム導入の話が進むことは問題と言えるでしょう。

 

 東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策の一環として、夏に生活時間を早める「サマータイム」の導入を求める声が出ている中、IT機器にどのような影響が出るかを専門家が話し合うシンポジウムが開かれ、準備期間が短すぎるなどとして反対する意見が相次ぎました。

 (中略)

 そのうえで、インターネットに接続された家電製品などでは対応が難しいことや、各地の地震計を取り替える必要があるなど、防災体制にも影響があることを挙げました。

 「オリンピックのマラソン競技を早朝の涼しい時間帯に開催したい」との思惑で『サマータイム導入』が出たのでしょう。

 ただ、導入におけるマイナス面が全くと言っていいほど語られてないことは問題です。特に、「システム改修に要する費用」や「健康面への負担」というデメリットは軽視できるものではないと言わざるを得ません。

 

“時間で管理されている機器” をすべて改修することが不可避

 サマータイム導入に反対しているのは立命館大学の上原哲太郎教授です。技術面からの視点で反対意見を表明しています。

 具体的な問題点として指摘されているのは「時計の自動設定」です。例えば、日本市場を対象とした家電製品はサマータイムを想定していません。

 そのため、消費者は家電製品の改修・買い替えを余儀なくされる可能性があります。

 IT 機器のソフトウェアを更新しなければならないのですから、アナログ時計を 1〜2 時間進めれば済むという話とは手間とコストが格段に異なります。この点を無視した『サマータイム導入論』は弊害をもたらすだけと言えるでしょう。

 

金融機関のシステム改修は間に合うのか?

 上原教授は「地震計の取り替え」を具体例として示していますが、一般人がより実感するのは「銀行の決済システム」でしょう。

 口座の資金を動かした場合、取引記録が残ります。サマータイムが導入された場合は「通帳に記載される時刻も変更されている必要がある」のです。

 もし、それができないなら、取引時間があやふやになったことによる問題が発生します。つまり、「期日までに取引が完了しなかった」などの余計なトラブルを引き起こす原因となる可能性があるのです。

 “時刻の健全性” が重要である分野ほど、導入前の準備が重要であることは言うまでもありません。「オリンピックに向けた2年間だけ、サマータイム導入」は世間一般に混乱をもたらすだけの愚行と言えるでしょう。

 

サマータイムは選挙に向けてマイナスポイントを重ねるだけ

 NHK や朝日新聞は「サマータイム導入に対する世間の評価は高い」と報じていましたが、これはプラス面だけを強調したアンケートに過ぎません。

 「酷暑が予想される東京オリンピックのマラソン競技を早朝に開催する」などとのメリットだけを記載した調査を実施すれば、おのずと好意的な回答が得られるからです。しかし、現実には大きな支出が必要となる上、システム変更を余儀なくされたことによるトラブルが頻発することでしょう。

 その状況下で、総選挙が行われることになるのです。有権者の恨みを買った状態で選挙に突入しようとする政党・政治家の判断は致命的と言わざるを得ません。

 準備期間のない中で、サマータイムを導入すれば、結果が悲惨なことになるのは明らかです。現状では安倍政権や自民党が大きな失点を記録する可能性が高いのですから、『サマータイム』を利用して倒閣運動をする界隈が出てきても不思議ではないと言えるのではないでしょうか。