朝日新聞、「ドイツに難民が根付く」と実際の数字を隠した “見出し詐欺” を行う

 朝日新聞が9月6日付けの記事で「ドイツ、根付く難民たち」とのタイトルで「難民の4人に1人が職を得ている」と好意的に報じています。

 しかし、記事全文を確認すると、本文の内容がタイトルに反映されておらず、“見出し詐欺” に手を染めていると言わざるを得ません。

画像:朝日新聞の記事に対するファクトチェック

 

■ 朝日新聞が報じた記事

 朝日新聞の高野弦記者が9月6日付の記事で以下のように報じました。

画像:朝日新聞が9月6日付で報じた記事

 欧州に押し寄せる難民の受け入れをドイツのメルケル首相が決断してから3年が過ぎた。その後、難民排斥を掲げる右翼政党が台頭したものの、国内では4人に1人が職を得て社会に溶け込んでいる。経済界からは送還が決まった人々の引き留めを求める声が上がり、政府も検討を始めた。(グンタースブルム=高野弦)

 導入部からは、「ドイツにやって来た難民の4人に1人が職を得て、社会に溶け込んでいる」と読み取れるでしょう。しかし、「導入部に書かれた内容」と「記事本文に書かれた内容」が異なるのです。

 これは “見出し詐欺” として批判しなければならないことと言えるでしょう。

 

■ 事実

1:朝日新聞の記事(本文)に書かれていた内容

 朝日新聞の記事(本文)に書かれている内容を確認すると、記事の導入部にある記述は不適切と言わざるを得ません。

画像:朝日新聞の記事

 2015年9月4日。押し寄せる難民を前に、メルケル首相は欧州連合(EU)の規制を無視する形で受け入れを決断。同年から今年7月までにシリア、アフガニスタン、イラク、ナイジェリアなどから約150万人がドイツで難民申請した。政府機関の労働市場・職業研究所によると、就労可能年齢(15〜64歳)の25.4%がブリムコさんのようにドイツ国内で働き、生活基盤を築きつつある。

 

2:「就労可能年齢の4人に1人」と「難民全体の4人に1人」は全くの別物

 朝日新聞の記事は導入部で「国内では4人に1人が職を得て社会に溶け込んでいる」と書いています。

 ただし、これは「国内では就労可能年齢の4人に1人が職を得て社会に溶け込んでいる」の意味であり、「難民全体では何人に1人が職を得ているのかは不明」なのです。

画像:「4人に1人」でも意味は大きく異なる

 例えば、日本の “家族モデル” として登場する4人家族は「4人に1人が職を得て、社会に溶け込んでいる」と表現することが可能です。父親は働いていますが、専業主婦である母親や子供たちは働いていません。

 「ドイツの難民は日本的な家族と同じ」との誤解を生じさせる記事であることは明らかであり、問題であると言えるでしょう。

 なぜなら、ドイツの難民は「就労可能な年齢にある難民の4人に1人しか職を得られていない」からです。つまり、75% は職を得ることができていないのですから、行政からの援助(= 生活保護など)に依存していることになります。

 専業主婦(や専業主夫)である可能性を最大限考慮しても、就労可能な年齢にある難民の2人に1人は行政の “お世話” になっているのです。難民全体に対象を広げると、その割合はさらに大きくなるでしょう。

 

 メルケル首相は規制を無視する形で難民をドイツに呼び寄せ、無駄な行政の支出を招いたのです。ドイツ滞在中に難民とならざるを得ない状況に置かれたのであれば、支援の手を差し伸べるべきです。

 しかし、国外からわざわざ難民を呼び寄せたことで国内を混乱に陥れたことは「失政」として反面教師にしなければならないと言えるのではないでしょうか。