世耕大臣には関電に感謝を述べるだけでなく、「現場の過剰負担を解消する体制づくり」に向けた音頭取りをして欲しい

 NHK によりますと、世耕経産大臣が8日(土)に台風21号で大きな被害が出た関西電力本店(大阪)を視察し、感謝の言葉を述べるとともにあらゆる面でのサポートを申し出たとのことです。

 関電の社長を呼びつけるのではなく、事態が落ち着きつつある中で自ら出向いた点は評価されるべきでしょう。ただ、世耕経産大臣が実務力のある大臣であることを考慮すると、「現場の過剰負担を解消する体制づくり」に向けた旗振りもして欲しいところです。

 

 世耕経済産業大臣は、8日、台風21号による停電の復旧作業にあたっている大阪の関西電力本店を視察し、「他電力からの応援など、あらゆる面でサポートしていきたい」と述べました。

 (中略)

 このなかで関西電力の岩根茂樹社長から、最大でおよそ168万戸にのぼった停電がけさ6時の時点でおよそ5万9000戸に復旧したことや、台風の影響が大きく停電が続いている地域は道路の復旧を待って迅速に対応したいといった説明を受けました。

 これに対し「経済産業省として、道路の復旧や他電力からの応援などあらゆる面でサポートしていきたい」と応じていました。

 視察のあと世耕大臣は記者団に対して「これだけケーブルが切れ電柱が倒れている中で、短い期間で停電を5万9000戸まで減らしたことに感謝したい」と述べ、関西電力の対応を評価しました。

 

断線と電柱の倒壊が広範囲で起きれば、復旧に時間を要するのは当然のこと

 台風21号は非常に強い勢力を保ったまま、近畿を縦断しました。大阪南部(和泉)や和歌山は台風の進路の東側に位置していたため、暴風による大きな被害が出る結果となったのです。

 被害が広範囲に及べば、復旧に時間を要することは当然です。

 台風接近下のリスクの高い状況でも、復旧に向けた対応を強いられている現場の作業員がいるのです。この点は認識しなければなりませんし、過剰な要求で現場が疲弊しないような体制を構築する必要があると言えるでしょう。

 

復旧作業に当たることができる作業員の数は限定されている

 「停電が起きているのだから、復旧を最優先すべき」と声高に主張する人が多数派でしょう。しかし、それは現実には不可能なことです。

 なぜなら、電力会社は「需要」と「供給」のバランスを保ち続けなければならない状況にあるからです。

 もし、需要と供給のバランスが崩れれば、北海道のようにブラックアウトすることになります。断線や電柱の倒壊で需要が急減すれば、その分だけ供給を下げることが必須です。逆に復旧すれば、その分だけ供給量を増やす必要があり、供給作業を当たる人員を回すことはできないのです。

 したがって、送電網の管理を担当している作業員をフル稼働させることになるのですが、彼らもまた被災者である可能性を見落としてはなりません。

 徹夜など十分な休息がない中で作業を強いられれば、ミスが起きる確率は高くなります。政治家が一部住民の要望を背景に電力会社の従業員などに “ブラック労働” を強いている状況は是正に乗り出すべきと言えるはずです。

 

実務能力のある世耕大臣には現状を改善する体制作りを呼びかけて欲しい

 普通の大臣なら、「対処に当たった電力会社に感謝の言葉を述べる」だけで十分でしょう。しかし、実務能力がある世耕大臣には「1つ上の対処」をして欲しいところです。

 具体的には「現場作業員の負荷軽減に向けた体制構築に道筋を付けること」です。

 文句を言ったり、注文を付けたりすることは誰にでもできます。ただ、「現場作業員の負荷軽減に向けた体制構築」は政治家と電力会社が歩調を合わせることで可能となるため、実務能力がある大臣にこそ取り組んで欲しい課題です。

 例えば、停電が起きていることを連絡するにしても、電話連絡やメールの連絡口にクレーマーが殺到すれば埋もれてしまいます。そのため、『NHK の防災アプリ』などからも可能にするなど、人手が取られ過ぎないようにすべきでしょう。

 「停電発生の報告」や「電柱の破損」「断線」をアプリ経由の報告を可能にし、それをアプリの地図上で表示できるようにすればクレームも減るでしょう。関電側が障害発生を確認すれば、その情報をアプリで反映すれば無駄なメディア対応を削減することも期待できるからです。

 ただ、アプリが実際に使えるようにするには開発費用や人員が必要になります。また、枠組みから作る必要があるだけに “政治家” が呼びかける意味はあると言えるでしょう。

 

 与野党に関係なく、「長時間労働」を問題視しているのです。それが「停電からの復旧作業に当たる電力会社の従業員や関係者」に適応されていないことは問題として指摘しなければなりません。

 特に、文句を言っている住民を探し出し、“正義の味方” を気どるマスコミやパフォーマンス型の政治家から「現場で対応する人々」を守ることが重要です。これができなければ、社会システムは崩壊することは目に見えています。

 世耕大臣は実務能力の高い政治家なのですから、この問題を解決するために必要な布石を打つべきと言えるのではないでしょうか。