自民党総裁の上限が3期9年であるにもかかわらず、「10年で所得を3割伸ばす」と主張する石破元幹事長
NHK によりますと、自民党総裁選に立候補した石破茂・元幹事長が東京・銀座で街頭演説を行い、その中で「10年で所得を3割伸ばす」と訴えたとのことです。
この主張は『空手形』である可能性が極めて高いと言えるでしょう。なぜなら、自民党総裁の任期は3期9年が上限であり、現状では総理大臣を連続で10年務めることはできないからです。
問題を列挙し、政権の対応を批判することは誰にでもできることです。総理大臣として実績を残す意気込みがあるなら、重要問題のどれか1つにでも具体的な政策を述べることができなければ、話にならないと言わざるを得ません。
自民党総裁選挙に立候補している石破元幹事長は、消費税率を引き上げても国民生活に影響が出ないよう、10年で所得を3割伸ばすことを目指すと訴えました。
(中略)
そのうえで「消費税を上げても、やっていける経済環境を作らなければならない。国民一人一人の所得を10年で3割伸ばす」と述べ、消費税率を引き上げても国民生活に影響が出ないよう、10年で所得を3割伸ばすことを目指すと訴えました。
経済政策に失敗すれば、どの国でも政権基盤を維持することが困難になります。そのため、「国民の所得を伸ばす」ということは最重要課題の1つと言えるでしょう。
野党の支持率が伸び悩んでいるのは「経済成長は不要」と公言したことで、現役世代の離反を招いたことが原因です。“老い先短い高齢者” の支持を狙ったところでジリ貧になる現実を認識できていないことは致命的なことなのです。
「所得を増やす」には「企業が収益を上げ続けられること」が必要不可欠だ
国民の所得を伸ばしたいのであれば、民間企業が収益を上げ続けられる経済環境を維持することが必要不可欠です。政治家に問われているのは「そのための政策をどれだけ有しているか」だと言えるでしょう。
労働者であれ、自営業者であれ、所得を増やすためには収益を上げ続けることが重要です。
「最低賃金を上げれば良い」との意見もありますが、その手法は失敗に終わると韓国のムン・ジェイン政権が証明済みです。なぜなら、最低賃金に見合う労働力を提供できない人物は雇用されなくなるからです。
また、企業が負担している様々なコストが上昇しすぎると、経営状態の良好な企業から海外に移転してしまいます。そうなると、国内での雇用が失われることになる訳ですから、優良企業が国内に投資を行うような魅力的な市場を作ることが政治家には求められているのです。
企業にとっては『人件費』も、『法人税』も、『電気代』も “コスト” である
石破元幹事長は「所得を伸ばす」と訴えていますが、企業の視点では「人件費が増える」ということを意味しています。つまり、企業にコスト増を求めており、負担が増加するだけの企業からは反発を招く結果になるでしょう。
なぜなら、企業にとっては人件費・電気代・法人税はどれもコストであることに変わりないからです。
例えば、FIT が導入されたことで電力利用者である企業も再生エネルギー割賦金の支払いを強制され、支払いコストは大きく増加しました。この状況で「企業は賃上げに応じるべき」と政治家が主張しても、「政治が決めた FIT で、賃上げ用の予算は準備できない」と反撃されるだけでしょう。
「リーズナブルな価格での電力の安定供給」と「周辺地域の遜色のない法人税率」という条件を整えた上で、企業に賃上げを迫らなければ、賃上げに消極的な企業に『強い説得力を持つ拒否の理由』を提供することになるのです。この点を石破元幹事長のような政治家は強く認識する必要があると言えるはずです。
「原発再稼動」、「年金制度の積立方式への移行」、「解雇規制の緩和」など政策は数多く存在する
労働者の所得を増加させる政策が見当たらないのではありません。数多く存在するのですが、日常的に応援してくれる熱狂的な支持者の離反が起きるため、口にすることを避けているだけなのです。
原発再稼動 |
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年金制度の改革 |
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解雇規制の緩和 |
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これらは “誰かが着手しなければならない問題” です。しかし、野党の支持基盤になっている項目ばかりで、国会対策で野党を甘やかすだけの与党は問題を先送りにしている状況なのです。
ある程度は先送りにしても、経済にマイナスが生じることは避けられるでしょう。ですが、経済をプラスにしたいのであれば、こうした問題に着手することが必要です。
石破元幹事長は複数存在する重要問題に対して、具体的な政策を何1つ言及していないのです。すべての重要問題に具体的な対策を準備することは不可能ですが、どの重要問題に対しても具体策が1つも見当たらないことはさすがに問題であると言わざるを得ません。
そもそも論として、自民党総裁の任期は最長で3期9年なのです。「10年で所得を3割伸ばす」という公約は明らかに『空手形』と言えるでしょう。
このような主張が政治家としての信用を傷つける原因になるのです。「石破元幹事長には公平・誠実ではない」と判断される原因となるだけに無責任は発言は自身の評判を落とすだけであることを自覚する必要があると言えるのではないでしょうか。