北電に大規模停電の全責任を押し付けた上、国に尻拭いを要請する北海道知事と道議会の姿勢は論外だ

 NHK によりますと、北海道の高橋はるみ知事が20日に開かれた道議会で「北海道電力の責任は極めて重い」と発言し、再発防止の徹底を求めたとのことです。

画像:道議会で答弁する高橋はるみ知事

 この発言は極めて問題でしょう。そもそも、北海道は電力が不足していたのです。高橋知事や道議会が「泊原発の再稼動に否定的」だったのですから、大規模停電の全責任を北電に押し付けることは筋違いと言えるでしょう。

 

 高橋知事は、地震のあと道内全域で停電が発生したことについて、「停電により道民の暮らしや産業活動は重大な影響を受けており、道民の生命、財産を預かる知事として極めて深刻な事態と受け止めている。電力会社としての北海道電力の責任は極めて重いものと考えている」と述べて、再発防止の徹底を求める考えを示しました。

 北海道電力には2018年の時点では電気事業法に基づく供給義務があります。

 確かに、供給義務を果たせなかったことは「北電の落ち度」と言えるでしょう。しかし、供給力不足の原因を作ったのは北電ではなく、原発再稼動に否定的だった “地元” なのです。

 その責任を北電に押し付けることは論外だと言わざるを得ません。

 

原発が立地する自治体が「再稼動の拒否権」を持っているという現実

 安倍政権が原発再稼動にあまり積極的ではないことは確かです。これは野田政権(民主党:当時)が原子力規制委員会に関係なく、「電力不足の懸念」を理由に大飯原発3・4号機を再稼動させたことと比較すれば明らかと言えるでしょう。

  1. 原子力規制委員会による安全審査
  2. 原発立地自治体からの再稼動同意

 もちろん、安倍総理には原発を再稼動させる “力” はあります。

 1は「設置審査」であり、「再稼動審査」ではありません。また、2は法的根拠がなく、そもそも不要な項目です。ですから、政権が「原発再稼動をする」との意志を表明すれば、再稼動に向けた動きはすぐに始まる状況なのです。

 しかし、政権が原発再稼動の意向を示すと、野党やマスコミが「強引な政治手法」とバッシングキャンペーンを展開することが目に見えています。“返り血” を浴びることが確実ですから、原発再稼動に熱心な政治家はごく僅かと言えるでしょう。

 その結果として、原発の立地自治体が再稼動に対する拒否権を持つ事態となっているのです。

 

北電に責任転嫁をしたいなら、『泊原発再稼動を求める決議』を通しておくことが不可避

 行政が企業の経営体力を奪う市場環境を作っておきながら、「企業の責任は重い」と批判する姿勢はあまりに無責任です。JR 北海道や北海道電力が置かれた環境は北海道の政治家たちが作り出した “人災” と言えるでしょう。

 北電は『泊原発』と『苫東厚真火力』に、建設中の『石狩湾LNG火力』を加えたトリプル体制への移行が進んでいる状況でした。

 しかし、反原発運動に乗っかり、『泊原発』の稼動を妨害。『苫東厚真火力』に全てを委ねるという危ない経営状況を直視しないために、「電力は足りている」との “大本営発表” を繰り返す北海道新聞に同調していたのです。

 少なくとも、北海道知事・道議会・道新に北電を批判する資格はありません。また、北海道民の声を代弁する資格もありません。

 『泊原発の再稼動を求める決議』を通し、「地元は “拒否権” を発動する気はない」ことを明確にしなければ、北電を批判する資格は生まれないと言えるでしょう。

 

地震発生前の状態に戻ったところで、北海道の根本的な電力不足は解決されていない

 高橋知事は「旅行受け入れに支障はない」と18日に述べましたが、この効果は低いでしょう。なぜなら、『苫東厚真火力』に過度に依存するという地震発生前の状態に戻っただけだからです。

 北海道の “根本的な電力不足” には解消の目処が立っていませんし、冬季に同様のブラックアウトが発生すれば、多数の凍死者が出ることでしょう。そのリスクが極めて低いことを論理的に示し、大きな声で何度も PR しなければ、(特に海外からの)観光客が戻ってくる見込みは低いのです。

  • 今冬の電力需給と供給力の見通し
  • 交通網の現状
  • 避難体制と災害時対応の周知(外国人観光客を含む)

 知事を務めるなら、上記項目を中心とした情報発信を精力的にやらなければなりません。北電を吊るし上げることで、自分たちの失政に対する責任を転嫁するなど以ての外であると言わざるを得ません。

 

北海道電力は『泊原発の再稼動を求める仮処分』を申請することが責務

 大規模停電の責任を押し付けられている北海道電力ですが、札幌地裁に『泊原発の再稼動を求める仮処分』を申請すべきです。

 なぜなら、「慢性的な北海道内の電力不足を解決するために弊社は奔走した」と真正面から主張できるからです。「緊急性」がありますし、「被保全権利」も認められると思われます。

 もし、地裁が仮処分を認めなければ、電力不足は北電の責任ではなくなります。原発再稼動を妨害してきた政治家や新聞社が自らの責任を転嫁しているのですから、冬季の停電時に凍死者が出た責任が押し付けられるのは自明と言えるでしょう。

 供給義務から解放される2020年までは『原発再稼動』を堂々と主張し、その後は「経営基準」からシビアに判断すれば良いだけです。経営が立ち行かなくなる原因を作る政治家やメディアから組織を守るための動きをまずは優先させなければなりません。

 

 北海道の政治家やマスコミは北海道電力に負担を押し付けることで、本来の市場水準よりも価格などで恩恵を受けてきたのです。北電が厳しくなったからとの理由で国からの支援を要請するのは論外と言えるでしょう。

 まずは「本来よりも低価格な電気料金」という形で恩恵を享受してきた地元が利益分を吐き出す必要があると言えるのではないでしょうか。