水産資源の回復には『乱獲ができない制度』が有効であることが福島県沖で示される

 NHK によりますと、原発事故の影響で回数や実施海域を限定する試験的な漁が行われている福島県の沖合で漁業資源が震災前より大きく回復していることが県の調査で明らかになったとのことです。

 この結果は「水産資源の保護」を行う上で有益な情報となるでしょう。なぜなら、「漁場を一定期間休ませること」が資源の保護に役立つという根拠になると考えられるからです。

 

 原発事故の影響で試験的な漁が続けられている福島県沖では、震災前に比べてヒラメがおよそ8倍、ナメタガレイがおよそ7倍と、資源量が増えていることが県の調査でわかりました。

 (中略)

 福島県沖では、原発事故の影響で回数や海域を限定した試験的な漁が行われていることが、資源量の増加につながっていると見られています。

 一方、福島県沖の魚介類を対象にした県の放射性物質の検査で国の基準を超えたものは平成27年4月以降出ておらず、県は豊富な資源を復興につなげるため、販路の回復を支援することにしています。

 漁が行われると、漁獲量の分だけ資源量が減少します。漁を見合わせることで、資源量が増える傾向にあるのは自然な成り行きと言えるでしょう。

 福島沖の漁場が原発事故で “死んでいる” なら、資源量が増加することはないはずです。日本は海洋国であり、『乱獲問題』に取り組む必要があります。福島県沖で起きていることを参考に、貴重な水産資源が枯渇しないような仕組み作りが不可避だと言えるはずです。

 

“オリンピック方式” では『乱獲』を招く結果になるだけ

 日本で漁業を行うには免許が必須です。これは地元漁協に付与される漁業権が免許の形を採っていることに起因します。

 「免許がなければ、漁業ができない」という形で『乱獲』に歯止めをかける狙いなのですが、これが裏目に出たことで水産資源の枯渇が問題になっているのです。これは「漁業権免許があれば、取れるだけ取る」ことが可能となっているからです。

 「資源の枯渇が問題だ」と批判をしても、(漁業権を持つ)漁業者は「生活がかかっている」ことを理由に反発することは目に見えています。

 また、水産庁が漁獲量の規制に動いても、漁業者は同様の理由で猛反発をすることでしょう。漁業者の売上は漁獲量に比例するからです。しかし、収入は漁獲コストを売上から引く必要があり、人件費の安い国の漁業者との競争で不利な立場に置かれています。

 そのため、収益を上げるために多くの漁獲量を出そうとし、乱獲に拍車がかかるという悪循環を招いているのです。

 

自主規制で乱獲に歯止めをかけるのは困難、強制力を持った規制を行政ができるかが注目点

 自主規制を設けたところで、効果はほとんど現れないでしょう。なぜなら、漁業者は自分の生活がかかっていますし、現在の生活水準を維持できるだけの十分な収入を手にしている漁業者は少ないと考えられるからです。

 そのため、資源保護を本気で考えるなら、水産庁などの行政が強制力を持った規制を設けなければなりません。

 ただ、漁業者からの(恫喝を含めた)猛反発が予想される上、漁協からの応援を受ける政治家や政党も規制強化に反対の声をあげることでしょう。この状況下で規制を設けることができなければ、漁獲資源が枯渇することは時間の問題なのです。

 ところが、当の水産庁が漁獲資源の保護に消極的なのです。「資源を取り尽くして漁業そのものが立ち行かなくなる可能性の方が高い」と言わざるを得ません。

 

絶滅の危機に瀕するウナギに対する有効な規制が設けられていないことが行政の立場を示している

 行政が「漁獲資源の保護」に消極的な理由は『鰻』に対する姿勢を見れば明らかでしょう。資源保護ではなく、漁獲量維持に奔走し、絶滅に向けたアシストをしている有様だからです。

画像:“うなぎ絶滅キャンペーン” による皮肉ツイート

 “うなぎ絶滅キャンペーン” の皮肉がすべてを示しています。

 消費量に連動して漁獲資源量が勝手に増加する訳ではないのです。この現実を無視したことによる規制は漁獲資源の保護に何の影響も与えないことを自覚しなければなりません。

 おそらく、福島県沖での漁が再開されると、安さと大きさで一気に漁獲量が伸びるでしょう。漁業が制限されていた分を短期間で取り尽くしてしまえば、資源の枯渇が起きることは目に見えています。

 

 漁を制限すれば、漁獲資源が回復することは原発事故の副産物という形で明らかになりました。この教訓を上手く活用することで、日本周辺の漁獲資源を保護する仕組みを作る『土台』となるように行政が動くべきと言えるのではないでしょうか。