ポドルスキが指摘したJリーグの課題は『ハリルホジッチが要求した内容』と同じ

 ヴィッセル神戸に所属するルーカス・ポドルスキ選手がドイツ紙のインタビューに応じたことを goal.com が伝えています。

 世界のトップに立った経験がある選手がJリーグの課題を指摘しています。指摘の内容は「スピードがなく、デュエルが存在しない」というものですが、ハリルホジッチ前監督が日本代表に求めたことと同じであることが皮肉だと言えるでしょう。

 

 ヴィッセル神戸に所属する元ドイツ代表MFルーカス・ポドルスキは、苦しい胸の内を明かしている。『シュポルトバッザー』のインタビューに応じている。

 (中略)

 続けて、「『Jリーグはプレミアリーグと同じようにエキサイティング』と言えば嘘になる」と語る。

 「ここのリーグはヨーロッパとのと直接比べることはできない。こっちではヨーロッパのようなデュエルは存在しない。スピードもより遅いし、競り合いもより少ない。だが、簡単に変えられるようなものじゃない。それに僕も33歳で身体的に昔のようなスピードはない。それでもまだサッカーすることに夢中だけどね」

 

ハリルホジッチが指摘した『縦へのスピード』と『デュエル』

 ポドルスキ選手は「文化や価値観の違い」を念頭に置いた指摘に留めていますが、「ヨーロッパに比べて、スピードが遅く、デュエルが存在しない」との明確な違いを述べています。

 『縦へのスピード』と『デュエル』はどちらもハリルホジッチ前監督が日本代表選手に要求していたことです。しかし、2018年のロシアW杯を前に日本サッカー協会は “それらの要素” を「切る」という決断を下しました。

 簡単に変えられるものではない要素であるにも関わらず、「変えるつもりはない」との決定をしたのです。欧州の第一線で活躍することが難しくなったポドルスキ選手がJリーグで大きな存在感を発揮しているという現実を直視する必要があると言えるでしょう。

 

“上手い選手” を抑えるには「スペース」と「時間」を消すことが鉄則

 どれだけ上手い選手であっても、ミスはします。特に、チームが劣勢時に “焦り” が出ると、ミスが散見されるようになり、チームが機能しなくなる様子は誰もが目にしているはずです。

 具体的には「時間」が制約されることで焦りが生じるから、ミスをする確率が高くなるのです。他には「スペース」を制限されると、同様にミスが生じやすくなります。

 ヨーロッパの主要リーグで「スペース」と「時間」をなりふり構わずに消しに来るのはイタリア(= セリエA)でしょう。自他ともに認めていますし、FW が得点を決めることが難しいリーグになっているのです。

 このような価値観は『ファンが求めるサッカー』によって形成されるものですが、「ヨーロッパ水準のインテンシティーがリーグに存在しないこと」は見直すべきです。

 Jリーグのチームから欧州のクラブに移籍した日本人選手が移籍先のチームで主力選手としてポジションを確立させることが一般的にならなければ、W杯で躍進することは難しいと言わざるを得ないでしょう。

 

アトレティコ・マドリードのような『堅守速攻型』のチームが立場を確立させられるか次第

 Jリーグに欠けているのは「デュエルを重視する堅守速攻型の強豪チーム」でしょう。『デュエル』と言うと「肉弾戦」のイメージが持たれますが、実際には「1対1」です。フィジカルだけが求められる要素ではありません。

 チームとしてプレスをかけても、局所では「1対1」が発生します。その時に相手選手が上回れるかで戦況が大きく変わるため、戦術的に重要視されているのです。

 “意図的に密集を作り出すチーム” が存在しますし、その状況で能力を発揮できなえれば、日本人選手が欧州のクラブでポジションを確立させることは難しいでしょう。チャンピオンズリーグに出場するレベルの水準は無理でも、各国リーグの中位クラブの水準にはJリーグも達することはできるはずです。

 ACL で対戦する韓国勢や中国勢の “ラフプレー・スタイル” とは一線を画すサッカーなのです。「デュエルを重視する堅守速攻型の強豪チーム」がJリーグに生まれない限り、欧州に挑戦した日本人選手が「スペース」と「時間」を制約された環境で苦労することは目に見えています。

 「ポゼッション」に価値観を見出す一方では日本サッカーがW杯でベスト8以上に勝ち進むことは難しいと言えるのではないでしょうか。