安倍首相、モディ首相来日時に「中国よりもインドを重要視する姿勢」を鮮明にする

 NHK によりますと、来日中のインド・モディ首相に対し、安倍首相が自身の別荘に招くなど厚遇を行ったとのことです。

 日中首脳会談での中国政府に対する姿勢よりも厚遇であり、インドにプライオリティーが置かれていることを示した形になります。この外交姿勢は評価されるべきと言えるでしょう。

 

 安倍総理大臣は、日本を訪れているインドのモディ首相と、山梨県にあるみずからの別荘で夕食を取りながら会談しました。安倍総理大臣が別荘に外国の要人を招いたのは初めてで、首脳間の強固な関係を内外にアピールする狙いがあるものとみられます。

 (中略)

 両首脳は、29日は総理大臣官邸で12回目となる日印首脳会談に臨むことにしており、安全保障分野での協力や、日本企業の進出の促進など、政治、経済両面で結びつきを強めていくことで合意する見通しです。

 インドが中国と匹敵する「市場のポテンシャル」を有していることは誰もが認めることでしょう。

 ただ、中国は『共産党の意向』で物事が劇的に動くという特徴がある一方で、インドは『財閥』など民間面での関係を政府が上手くサポートできるかがポイントだと言えるでしょう。

 

通貨スワップ協定の性質も「日中」と「日印」では大きく異なる

 中でも大きな違いは『通貨スワップ協定』でしょう。日本は中国およびインドと相継いで通貨スワップ協定を締結しましたが、内容が大きく異なっているのです。

  • 日中通貨スワップ協定:
    • 総額3兆円
    • 対象の通貨は『日本円』と『人民元』
  • 日印通貨スワップ協定
    • 総額8兆円強(750億ドル)
    • 対象の通貨は『米ドル』

 インドとの通貨スワップ協定は『日中通貨スワップ協定』の3倍弱の規模があり、基軸通貨である「米ドル」が用いられています。これは「インドで金融危機が起きないためのセーフティーネット」としての色合いが強いものだと言えるでしょう。

 一方で、『日中通貨スワップ協定』は「日本円」と「人民元」ですから、中国に進出した日系企業に対するための色合いが強く、目的自体が大きく異なっていることに留意が必要です。

 

インフラ整備においても大きな市場が残されている

 インドは多くの人口を抱えている上、電気・ガス・水道などの公共インフラにおいても大きな市場が残されていることが魅力点と言えるでしょう。

 そのため、原子力発電所の輸出に向けた取り組みが行われているのです。人々が生活する上で「電気」は必要不可欠ですが、火力発電所で賄うと大気汚染が深刻になってしまいます。

 経済発展とともにガソリン車が一般的になるのですから、発電には「クリーン・安価・大規模」の3点が重要であることは言うまでもありません。また、増え続ける人口を抱えた国では「飲料水の確保」も重要な項目になります。

 公共インフラにおいて、日本とは比べ物にならないニーズがインド市場には存在している訳ですから、民間企業などがインドで展開しやすい制度を政府が設ける意味は大きいと言えるでしょう。

 

「中国の侵出を抑止する」という狙いで、インドと歩調を合わせるのは有益なこと

 日本にとって、インドは地理的にも戦略的にも重要な国家です。石油資源の多くは中東からインド洋を通って輸送されているのですから、『インドの民主的な発展』が地域の安定に貢献することは明らかです。

 また、中国とは領土問題を抱えており、日本と歩調を合わせることに対する問題はない状態です。したがって、経済面での協力で良好な関係を築き、外交方針でもスタンスを合わせることが “王道” になるでしょう。

 インドは国全体にまで公共インフラが整備され切っておらず、様々なニーズがあります。その中から日系企業が収益を得られる案件を獲得するために、日本政府がどれだけサポートできるかがポイントになるはずです。

 両国首脳間の良好な関係を活かし、良い案件を確保できるかが注目点だと言えるのではないでしょうか。