共産党・志位委員長、「個人請求権が残っていることは日本政府も認めている」と事実を歪曲して自称・元徴用工を援護
韓国の大法院(= 日本の最高裁に相当)が元徴用工に対する賠償を認める判決を下したことに対し、共産党の志位和夫委員長が「日本政府も個人請求権が残っていることは認めており、被害者の尊厳回復をすべき」と主張しています。
しかし、これは「事実の歪曲」であり、「極めて悪質な印象操作」と言わざるを得ないもです。
■ 共産党・志位委員長のツイート
韓国での『徴用工裁判』に勝利した原告の弁護士が来日し、新日鉄住金の本社前で “パフォーマンス” をした様子をメディアが報じてます。
その後、原告弁護士らは共産党・志位委員長との会談を行ったのですが、その際に志位委員長が次のツイートをしているのです。
「被害者個人の請求権は残っている」ことは日本政府も認めていることです。被害者の尊厳を回復する解決を求めていくことをお約束しました。
志位委員長のツイート内容は『日本政府の主張』と相反するものです。なぜ、このようなことが起きるのかと言いますと、「志位委員長が “請求権の対象先” を意図的に隠蔽しているから」です。
これは「フェイクニュース」として批判されても止むを得ない主張だと言えるでしょう。
■ 事実
1:『日韓基本条約』で「韓国人の日本に対する請求権」は消滅済み
本件でまず確認する必要があるのは『日韓基本条約(PDF)』で定義された内容です。第2条で財産および請求権に関する項目があり、その内容を理解する必要があると言えるでしょう。
- 第2条
- 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
- この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執つた特別の措置の対象となつたものを除く。)に影響を及ぼすものではない。
- 一方の締約国の国民で1947年8月15日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益
- 一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつて1945年8月15日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいつたもの
- 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。
要するに、「韓国は日本および日本国民・法人に対する請求権はなく、日本も韓国および韓国国民・法人に対する請求権もない」と『日韓基本条約』で明記されているのです。
この原則を無視している志位委員長の主張は問題と言わざるを得ないでしょう。
2:「韓国人による韓国政府に対する個人請求権」は『日韓基本条約』で否定されていない
日本政府が個人請求権を完全否定していない理由は「自国政府や企業に対する個人請求権は存在する」との認識があるからです。この権利は『日韓基本条約』で否定されておらず、日本政府の対応に落ち度はありません。
『徴用工裁判』で韓国人の原告が訴えたのは新日鉄住金や三菱重工などの「日本企業」であり、これらの日系企業を訴える権利は『日韓基本条約』で消滅しています。
ところが、“条約で消滅させた権利” を一方の条約締結国の最高裁が認め、両国関係の根幹を揺るがす事態が発生しました。条約の内容を破られた側の国が反発するのは当然と言えるでしょう。
つまり、共産党の志位委員長は「韓国政府に対する個人請求権のみを保持する韓国人」であるにもかかわらず、「個人請求権を持つ韓国人」と都合良く切り取り、日本政府に対応を要求しているのです。
日本政府は『日韓基本条約』で韓国政府に多額の経済協力金を拠出済みです。韓国人への個人補償を行うのは韓国政府の責任であり、日本政府や日本企業がすることではないのです。国交回復時に “補償金” が支払われたのは日韓だけであり、他国の事例は参考にならないことに留意しなければなりません。
3:日本企業が賠償に応じれば、弁護士業界は「過払い金訴訟」以来の “バブル” が訪れる
日本にいる一部の弁護士などが「新日鉄住金は徴用工裁判の判決を受け入れるべき」と主張しているのは “新たな金脈” ができるからに他なりません。
なぜなら、「従業員の募集」に応じたにもかかわらず、『徴用』と認定され、韓国の大法院で「日本の植民地支配による苦痛」を理由にした慰謝料請求が認められたのです。つまり、戦時中に日本企業で働いた経験を有する一定の年齢を超えた韓国人全員が慰謝料を獲得できる可能性があるのです。
過払い金訴訟で味を占めた弁護士が “二匹目のどじょう” を狙うのは当然と言えるでしょう。
当然、共産党も共産党員の弁護士が案件を請け負うことで、党費(= 党員が得た収入の10%)という形で収入がアップするのです。「党の活動資金を得るのために動いている」と言われても、否定することは難しいと言えるはずです。
そもそも、志位委員長が「個人請求権が残っている」と主張する内容に不備があるのです。「韓国人の韓国政府に対する個人請求権」を正確に言及せず、「韓国人の日本政府・企業に対する個人請求権」が存在すると誤解させる主張はフェイクニュースとして厳しく批判されるべきと言えるのではないでしょうか。