“反原発・再生エネ重視” で電気代が高騰することは『民主主義のコスト』であり、そのツケは「不況」という形で国民に回ってくる

 読売新聞が11月15日付の社説で「太陽光発電施設 環境を破壊しては本末転倒だ」と主張しています。

 これは民主党政権時に全量固定買取制度(= FIT)が始まった段階で指摘されていたことです。7年近くも言及しなかったことですが、社説で堂々と批判を述べた点については評価すべきと言えるでしょう。

 

 太陽光発電施設の建設を巡る環境破壊や住民とのトラブルが目立つ。

 地球環境への負荷が少ない再生可能エネルギーの施設が、周辺環境に悪影響を及ぼしては元も子もない。対策を進めたい。

 (中略)

 政府は、再生エネを将来的な主力電源と位置付ける。再生エネによる電気について、電力会社が事業者から固定価格で買い取る制度を創設した。これにより、太陽光発電事業への参入が相次いだ。

 普及を促してきた以上、政府はトラブル対策でも責任を持って、自治体を支援すべきだ。

 世界基準と比較して “ありえない高額での買取価格” が提示された FIT は「民主党政権の負の遺産」と言えるでしょう。なぜなら、それによって「太陽光発電バブル」が発生し、乱開発を引き起こす原因となったからです。

 原因を作った側である立憲民主党の方針を批判するのではなく、自民党政権にトラブル対策を求める読売新聞の姿勢は非難されるべきことと言わざるを得ないでしょう。

 

太陽光発電や風力発電が引き起こす問題を “ひた隠し” にする環境保護派

 「エコ」や「クリーン」という言葉が都会で生活する人々には受けるのでしょう。そのため、太陽光や風力という『再生可能エネルギー』が良い印象を持たれているのだと考えられます。

 しかし、そうした発電であっても、問題点が存在している現状が “ひた隠し” にされていることが問題なのです。「 “周辺環境に悪影響を及ぼす再生可能エネルギー” はクリーンではない」と言わざるを得ないからです。

  • 太陽光発電:
    • 環境アセスメント不要
      → 景観破壊や土砂流出を誘発
    • 自然災害による設備破損が頻発
      → 立ち入り検査制度は存在せず
    • 太陽光パネルの廃棄問題が未着手
  • 風力発電:
    • 羽根の回転による騒音問題
    • 強風による倒壊事故

 「未使用の平地に太陽光パネルを設置すること」は土地の有効的な活用例として歓迎されるでしょう。逆に、山を切り開いて太陽光発電所を造成することは明らかに「本末転倒」と言えるはずです。

 このような不都合な問題が全国各地で発生しているのですから、本来であれば、環境保護団体やリベラル派が問題として大々的に取り上げていなければなりません。しかし、左派メディアは問題と向き合っていないのです。これは由々しき事態と言えるでしょう。

 

裕福なリベラル派からすれば、電気代高騰は “取るに足らない問題”

 リベラル派は再生可能エネルギーを礼賛していますが、その根底にあるのは「自分たちの生活に悪影響が出ない」という確信があるからでしょう。

 欧米では “シャンパン・リベラル” と揶揄される Champagne Socialist が存在します。裕福なセレブなどが「リベラル的な理想論」を語り、理想に共感した貧しい庶民がその手足としてデモ活動などを行うことが特徴として現れています。

 彼らの主張が『反原発・再生可能エネルギー礼賛』なのですから、欧米崇拝の傾向が強い日本のリベラルが方向性を真似るのは当然と言えるでしょう。

 裕福なセレブにとって、月々の電気代は微々たるものです。「1回のディナー代 > 1ヶ月の電気代」であれば、電気代が倍増しても気にはならないでしょう。“高級取り” で知られる新聞社が「高額な FIT」に理解を示すのはそうした背景が存在するのです。

 

電気代が上昇するほど製造業は競争力を失い、経営不振による事業規模減少を招く

 “シャンパン・リベラル” の特徴は「キレイゴトを主張するが、責任が生じる当事者にはならない」ということでしょう。

 「政府は ーー すべきだ」との主張はしますが、「私は ーー をすることで成果を出した。行政はこれを参考にした支援策を展開すべき」とは言いません。なぜなら、後者は『本物のリベラル』でなければ、主張できない内容だからです。

 電力市場での価格よりも高い買取価格が定められた再生可能エネが占める割合が増加すれば、電気代は上昇します。「電気代上昇を “コスト” として社会が許容できるか」が大きな問題と言えるでしょう。

 なぜなら、電気代が上昇すれば、製造業は市場での競争力を失います。経営が悪化すれば、従業員の解雇が現実味を帯びることになりますし、製造業は就業人口の多い業種です。このリスクを容認できるかは全員がシビアに考える必要があることなのです。

 「原子力発電は不要。電気代が現在の倍以上になっても反原発・再生可能エネ推進を貫く」と言う意見が多数派になるなら、これも『民主主義』に基づく決定であり、尊重されなければなりません

 ただ、中国やロシアが原発に前向きであり、中国系企業やロシア系企業との競争に太刀打ちできなくなる現実は念頭に置いておく必要があると言えるでしょう。「経済」という点での議論が無視されている現在の状況は問題視されなければならないと言えるのではないでしょうか。