インターネット配信からの受信料収入を目論むNHK、地上波放送の受信料を月額35円だけ値下げすることで目眩しを図る

 日経新聞によりますと、NHK が「受信料を 4.5% 値下げする計画」を了承し、インターネットでの同時配信を行う上での前提条件をクリアする見通しとのことです。

 ただ、絶対値で示すと「地上波で月額35円、衛星放送込みで月額60円」に留まります。また、NHK はテレビ放送のインターネット常時同時配信による受信料負担を目論んでいるのです。

 「ネット受信料」も検討課題に入っており、『受信料モデル』が継続されること自体が論外と言わざるを得ないでしょう。

 

 NHK経営委員会は27日の会合で、NHKの執行部が提案した受信料を2020年度までに4.5%引き下げる計画を了承した。受信料の引き下げはNHKがインターネットでの放送の同時配信を始める前提として、政府が求めていた。記者会見した石原進委員長は値下げ幅について「人口の減少も進むなか、ぎりぎりの数字ではないか」との認識を示した。

 (中略)

 視聴者の負担は20年10月から現状と比べ、地上波では月額35円、衛星放送込みで同60円下がる。現状の受信料は地上放送のみの契約で同1260円、衛星契約は同2230円(いずれもクレジット払い、口座振替)。18年度に始める一部学生の受信料免除なども含め、NHKにとって422億円ほどの減収要因になり、受信料収入の約6%に相当する。

 

“パソコンやスマホのみを持つ人” から受信料を得られれば、減収分は楽に吸収できる

 NHK はインターネット同時配信を行う際の条件として政府から要求されていた「受信料の値下げ」を飲む決断をしました。

 年間422億円の減収となる見込みですが、経営へのダメージは限定的でしょう。なぜなら、NHK はインターネット同時配信を行うことで、パソコンやスマホといったネット接続機器の保有者から『ネット受信料』を要求することで吸収できるからです。

 「年間422億円の減収」は「月間で約35億円の減収」です。仮に、月額500円(税別)の『ネット受信料』を設定すると、パソコンかスマホしか持たない視聴者700万人から徴収できれば損失分(= 年間422億円)は回収できます。

 “テレビは持っていないが、スマートフォンは持っている” という人は若い世代を中心に多いでしょう。テレビ離れが進行することは「従来の受信料収入が減少すること」と同じです。

 『受信料モデル』に拘る NHK がネット接続機器保有者に受信料請求をしない保証はどこにも存在しないのです。

 

『ネット受信料』の創設は NHK 受信料制度等検討委員会が議題に出している

 NHK は「単にパソコン・スマートフォン等のネット接続機器を持っているだけで負担をお願いする、ということは考えていない」と受信料制度等検討委員会で表明(PDF)しています。

画像:NHK受信料制度等検討委員会での検討内容

 「費用負担者:全世帯 / PC 等設置者」や「費用負担方法:受信料型」といった文言が検討課題にあげられているのです。「ネット接続機器を持っていれば、受信料を請求する」ことを検討しているのですから、『ネット受信料』の創設は「現実に起こり得ること」と言わざるを得ないでしょう。

 

NHK は「地上波放送はスクランブル方式」、「ネット配信は DAZN 方式」を採用すべき

 NHK は「視聴機器(= テレビ)を保有している世帯に対し、受信料負担を要求している」のです。もし、「受信機器を保持しているだけで負担をお願いする、ということは考えていない」なら、『従来の受信料制度』は速やかに破棄しているはずです。

 なぜなら、「スクランブル放送を導入する」というすぐに対応できる選択肢が存在しているからです。どのテレビにも付属している B-CAS カードを使えば、容易に実現することは可能です。しかし、実際にはしていないのですから、NHK の説明を鵜呑みにする視聴者は少ないでしょう。

 これと同じことはインターネットでも可能です。Jリーグの独占放映権を持つ DAZN (ダゾーン)は会員登録し、ログインをしなければ視聴できません。

 NHK のインターネット配信も DAZN と同じモデルが適用されるべきでしょう。スポーツに興味のない人々にとっては「DAZN が提供するサービス」は無価値です。同様に NHK の配信内容に興味のない人が月額料金の支払いを強制されるなど論外と言えるはずです。

 

 公共サービスである電気・ガス・水道の料金は『一律定額』ではなく『利用量に応じた金額』が請求されるのです。

 NHK だけが『一律定額』の「受信料」が容認されていることは不公平です。『利用料に応じた金額』に該当する「スクランブル化」と「DAZN 型のログイン・同時接続台数制限」を実施すべきと言えるのではないでしょうか。