カナダで身柄を拘束されたファーウェイ・孟晩舟CFO、中国と香港の計7通のパスポートを駆使していた人物だったことが明るみに出る

 カナダ・バンクーバーで中国の大手通信機器メーカー『華為技術(ファーウェイ、Huawei)』の CFO 孟晩舟(モン・ワンジョウ)氏が当局に身柄を拘束されました。

 拘束された理由は「アメリカが経済制裁を科すイランに対して違法に製品を輸出した」というものです。また、拘束された孟晩舟氏が「複数のパスポートを保有していた」と読売新聞が報じており、こちらが本命とも言えるでしょう。

 

 米国の要請でカナダで身柄拘束された、中国の通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)(46)が、少なくとも7つのパスポート(旅券)を保有していたことが、カナダ検察の訴追資料から明らかになった。孟氏側は旅券の押収に応じることを条件に保釈を求めているが、検察側は孟氏が複数の旅券を使い分けていることから保釈後に別の旅券を使って国外に逃亡する恐れが極めて高いと反論している。

 孟晩舟(モン・ワンジョウ)氏が拘束された容疑は「(子会社を通す形で)イランへの違法輸出に関わった疑い」によるものです。この容疑だけだと、ZTE (中興通訊)が過去に行ったことと同じであり、幹部の身柄を拘束する必要はありません。

 ZTE は「アメリカ企業との取引を禁じる」との制裁を受けましたが、米中首脳による会談の結果、「追加の罰金を支払うこと」で制裁の内容が見直された経緯があるからです。

 

7枚の有効なパスポートを保持することが一般の中国人に可能なことなのか

 中国政府は「孟晩舟(モン・ワンジョウ)氏の拘束」に反発していますが、それは隠したい理由があるからでしょう。なぜなら、カナダ検察が訴追資料で「孟晩舟氏が少なくとも7つのパスポートを保有していた」と明らかにしたからです。

 「中国の旅券(パスポート)が4通、香港の旅券が3通」とのことですが、外交旅券など例外はあるものの、「パスポートは1人1通」が基本です。

 しかし、孟晩舟氏は「有効な中国旅券を1人で4通も保有している」のです。これは「あり得ないこと」です。

 中国では「汚職」が問題となっており、習近平(シー・ジンピン)総書記が “虎狩り” との名目で汚職一掃を進めています。そのため、中国以外の国籍を取得することによる不正蓄財に当局の監視の目が光る状況で、複数の旅券を保有すること自体が資産家の中国人にとってはリスクなのです。

 

個人が「有効な自国のパスポート複数枚を保有する」意味とは?

 次に、「個人が同じ国の有効な旅券(パスポート)を複数枚保有するメリット」が一般人にはほとんどありません。パスポートを使い分けたいのは “曰く付きの理由” がある場合に限定されるでしょう。

  • 刑事罰を受けるなど他国から入国を拒否される恐れがある場合
  • 特定国への入国など個人の動きを知られたくない場合

 例えば、犯罪歴を持つ山田太郎氏(仮名)の場合、本人のパスポートではA国への入国が拒否される場合があります。この場合、山田太郎氏は『別人(= 例えば、田中一郎氏名義)の正規旅券』を保有し、田中一郎氏になりすませば、A国に入国することは可能でしょう。

 また、当局に出入国の記録を保持されたくない場合に『別人の正規旅券』を利用することは有効な手段です。ただ、これはスパイやテロリストが使う手法であり、一般人が使用する芸当ではありません。

 「複数国の正規旅券を保有する」ことはあっても、「特定国の正規旅券を複数保有する」ことはないと言えるでしょう。

 

指紋などを使った『生体認証』に一部の左派が猛反発するのはスパイ活動が困難になるから

 “曰く付きの人物” にとって厄介なのは指紋や網膜を使った『生体認証』です。なぜなら、旅券(= パスポート)を使い分けることは簡単ですが、『生体認証』を使い分ける手段が存在しないからです。

 先ほどの山田太郎氏(仮名)を例にしましょう。

 山田太郎氏(仮名)が『本人名義の正規旅券』と『他人(= 田中一郎氏)名義の正規旅券』を使い分けることは容易です。クレジットカードやポイントカードと同じ感覚で使えますし、「正規旅券」なのですから出入国審査で引っかかることはありません。

 しかし、ここに『生体認証』が組み込まれるとスパイなどの “曰く付きの人物” にとっては厄介なことが発生します。

  • 山田太郎氏(仮名)の旅券:顔写真と『本人の生体認証情報』が付随
  • 田中一郎氏(仮名)の旅券:顔写真と『山田太郎氏の生体認証情報』が付随

 要するに、「田中一郎氏(仮名)と山田太郎氏(仮名)が持つ生体認証情報が同じ」という事実が簡単に露呈し、不審な人物が即座に浮かび上がることとなるのです。

 これによって不審者の特定が進み、治安が良くなることが期待されるのですが、一部の左翼界隈は猛反対をしています。『生体認証』という「なりすましが極めて困難な手法」で本人確認をされると、非合法活動が難しくなるからです。

 左派は「人権」を理由に指紋捺印などへの反対運動を展開して来ましたが、それによって北朝鮮のスパイ活動をサポートする形になっていたことは決して忘れるべきではないと言えるでしょう。

 

 少なくとも、最高幹部の1人である孟晩舟氏が「特定国の正規旅券を複数保持し、実際に利用していた」という事実が確認されたのですから、それを根拠にファーウェイ製品への疑いを持つことは当然のことです。

 「スパイではない」との主張に理解を求めたいのであれば、まずは「なぜ孟晩舟氏が複数の中国旅券や香港旅券を保持・行使することができたのか」を説明する必要があると言えるのではないでしょうか。