マクロン大統領が暴徒化したデモ隊の圧力に屈し、最低賃金の引き上げなど経済を停滞させる政策の実施に踏み切る

 NHK によりますと、デモ活動が暴徒化したフランスでマクロン大統領が「最低賃金の引き上げ」などの対策を打ち出したとのことです。

 ただ、この対策はマイナス面の方が大きく現れることでしょう。なぜなら、韓国ムン・ジェイン大統領が実施している経済政策と同じだからです。日本は「反面教師」にする必要があると言えるでしょう。

 

 マクロン大統領は10日、テレビを通じて国民に演説し、「今回の事態を招いたのには私にも責任がある。皆さんのことを最優先にしてこなかったという印象を与えてきたかもしれない」と述べたうえで、「今、フランスは経済的にも社会的にも緊急事態にあり、よりよい暮らしができるフランスを作らなければならない」と述べました。

 そのうえで、最低賃金の引き上げや、残業代やボーナスを非課税にして手取り給与を増やすなどの対策を打ち出しました。

 マクロン大統領が発表した対策は以下のものです。

  1. 最低賃金の引き上げ:月額100ユーロの増額
  2. 定年退職者への課税を一部免除
  3. 残業代やボーナスは非課税

 これらの対策により、「所得の増加」は見込めるでしょう。しかし、この対策によって生じるマイナス面を無視することはできないのです。

 

「財源」をどこから用意するのか

 マクロン大統領への抗議が激化した発端は「燃料税の引き上げ」です。

 表向きは「二酸化炭素の排出量を削減する」というものでしたが、実態は「予算確保の財源」であったこともあり、デモ活動の発端となりました。マクロン大統領は「燃料税の引き上げ延期」を表明しており、税収は減少することが確定しています。

 しかし、過激なデモ活動が沈静化することはなく、マクロン大統領は『第2段の対策』を講じることで沈静化を図りました。

 『第2段の対策』は「労働者へのバラマキ」であり、そのためには予算(= 財源)が必要です。ところが、「燃料税の引き上げ延期」など税収を減らす方針を明らかにしてしまっていますので、EU の財政規律を遵守することは難しくなったと言えるでしょう。

 

失業率が高い状況で「最低賃金を引き上げる」ことは愚策

 次に、『バラマキ型の対策』を打ち出した時期が適切とは言えません。なぜなら、韓国でムン・ジェイン大統領が行った失政を彷彿させるものだからです。

 「手取り増加」を目的としたバラマキ政策により、労働者の生活は楽になるでしょう。しかし、職を持っていない人からすれば、就職するハードルが上がることを意味しているのです。

 企業からすれば、労働者を雇用するコストが上昇します。つまり、新たに雇用することには消極的となることが予想されるため、高い失業率が記録されているフランスの若者層にとっては迷惑極まりない対策に他ならないと言えるでしょう。

 最低賃金を引き上げるなら、日本のように「失業率が低い状態」で踏み切らなければ、景気が余計に落ち込む “引き金” になってしまうのです。

 

「抗議活動が過激化すれば、大統領が政策を転換する」とのメッセージを送ったことも問題

 また、暴徒化したデモ隊に「譲歩」したことも問題です。これは “間違ったメッセージ” を送る結果になってしまったからです。

 民主主義国家では「有権者からの支持を得た議員による議会での手続き」が重要です。しかし、デモ隊という “一部の民衆の意向” に配慮し、正規の手続きを迂回できる手段があることを示してしまったのです。

 デモ活動を行い、それが過激化すれば、大統領が「デモ隊の要求を受け入れる妥協案」を提示してくれるのです。

 デモ活動が止む理由はどこにも存在しないでしょう。なぜなら、マクロン大統領の政治に不満を持つ層が入れ替わり立ち替わり『要求する内容』を変更してデモ活動を継続することが予想されるからです。

 マクロン大統領の誤ったメッセージによる “ツケ” を払うことになるのはこれからが本番でしょう。デモ隊側には「デモ活動を止める理由」はほとんどないことが理由です。

 

 フランス政府は国内問題の影響で「新たな予算の捻出」に迫られている訳ですから、「フランス政府が管理下に置くルノーが保有する日産株の売却」を日産に持ちかけるなどを行うべきでしょう。いずれにせよ、フランス政府も一気にレームダック化したと言えるのではないでしょうか。