河野外相に「交渉の場以外で政府見解は述べない」と言われたことを忘れたマスコミが「見解を求める記者を無視するとは何事か」と逆ギレ

 11日(火)に行われた記者会見で、記者から北方領土問題をめぐるロシア・ラブロフ外相などのコメントに対する見解を求められた河野外相が4度も「次の質問をどうぞ」と発言し、記者からの質問に答えなかったと NHK が報じています。

 しかし、これは記者団がアホなだけです。外交交渉時に自らの手の内を明かすことは愚策ですし、「政府見解は交渉の場以外では述べない」と宣言されているからです。

 そのことすら忘れているようでは「事実を正確に報じる」ということをメディアやマスコミに期待することは難しいと言わざるを得ないでしょう。

 

 北方領土問題をめぐって、ロシアのラブロフ外相は、第2次世界大戦の結果、北方領土はロシアの領土となったことを日本が認めない以上、交渉は進められないと日本側をけん制したほか、トルトネフ副首相も、強い姿勢で交渉に臨むと強調しています。

 こうした発言について、河野外務大臣は、11日の記者会見で、記者団から見解を問われたのに対し、「次の質問をどうぞ」と4回にわたって繰り返し述べ、質問には、一切答えませんでした。

 そして、記者団が「公の場での質問に対し、そうした答弁は不適切ではないか」とただすと、「交渉に向けての環境をしっかり整えたい」と説明しました。

 ここまで自分のことを棚に上げるのは珍しいことです。マスコミ関係者の面の皮の厚さが証明された事案だと言えるでしょう。

 

マスコミは「12月4日(火)に行われた河野外相の記者会見で語られた内容」を再確認しなければならない

 まず、12月11日に「次の質問をどうぞ」との発言が出ることになった理由を確認する必要があります。それは1週間前の4日に行われた記者会見にあります。

画像:河野外相による記者会見(12月4日分)

 日露間で平和条約を締結するためには「北方領土問題」を解決することが不可欠です。その際、政府見解がメディアに報じられると、『見解に対するコメントの応酬合戦』が勃発してしまい、交渉のマイナス材料となる恐れがあるのです。

 そのため、河野外相は「交渉の場以外で政府の考え方を申し上げるのは、差し控えるというのが政府の方針」と記者会見で述べているのです。河野外相の発言は『日本の外務大臣』として当然のことであり、国益を考えたものと言えるでしょう。

 

「交渉の場以外では政府の考えは述べない」と伝えた大臣に「大臣の受け止めをお願いします」と質問した記者団

 次に、メディアが問題視した12月11日の記者会見の内容を確認することにしましょう。

画像:河野外相の記者会見(12月11日)

 最初に時事通信の越後記者が「ラブロフ外相のコメントに対する大臣の受け止めを」と口火を切ります。次に読売新聞の梁田記者が「原則的立場に基づく表明への反論はしないか」と質問をします。そして、共同通信の田中記者が「ロシア側だけが発言することによる懸念に対する見解は」と問うのです。

 “マスゴミ” と揶揄される理由が如実に現れていると言えるでしょう。なぜなら、いずれの記者も1週間前に河野外相が記者団に対して「交渉の場以外で政府の考え方(= 見解)を述べることを差し控えるのが政府の方針」と語ったことを完全に忘れて質問をしているからです。

 しかも、該当の回答は読売新聞の梁田記者が行った質問に対するものです。わずか1週間前に自分がした質問に対する回答を忘れ、取材対象者た対応を批判する内容の記事を書くこと自体が大きな問題と言わざるを得ないでしょう。

 

「奪われた領土は戦争でもしない限り、取り返すことは極めて難しい」という現実を見なければならない

 北方領土はロシアに不法占拠されたままの状態が続いていますが、交渉で取り返すのは至難の技です。これはロシアがクリミア半島で証明していることです。

 「交渉」で済むなら、経済制裁のリスクを取ってまで「武力を背景にした併合」を選択する価値がなかったからです。しかし、実際は武力を背景に併合に踏み切りました。それだけ「交渉」で領土を取り戻すのは難しいことなのです。

 交渉の場合、『万人が納得する妥結案』は存在しません。北方領土問題では日本共産党が主張する「千島列島の全島返還」という “強硬論” が発生することが容易に想像できますし、それによって交渉が失敗に終わる可能性が高くなるからです。

 現に日露戦争後の講和条約交渉で講和案がロシア側からメディアにリークされ、『日比谷焼き討ち事件』などが発生しているのです。自分たちの要求内容が相手に知られるほど交渉では不利になるのですから、“虫の良い要求” が受け入れられる可能性は低いと見ておく必要があるのです。

 

報復を受ける心配がないから、メディアは「我々の稼ぎのためにネタを提供しろ」と横柄な態度を採る

 日本は「平和な国」で反社会的勢力を挑発でもしない限り、報復行為を受けることはないでしょう。だから、既存メディアは政治家や企業に失礼極まりない態度を取り続けるのです。

 マスコミの記者団が欲しいのは「紙面や放送時間を埋めるためのネタ」です。ネタを取ることが最優先であり、国益を損なうことが代償であったとしても、「ネタを寄越せ」と要求する習性を持っていることは過去の振る舞いが証明しています。

 一部の記者は「記者は市民を代表している」と主張していますが、記者が代表しているのは「所属組織」であり、「市民」ではありません。営利企業に勤務し、金目当ての連中が「市民の代表」を名乗ること自体が詐欺的行為なのです。

 『報道』が特別扱いされた時代は終わりを迎えました。インターネットを使い、誰もが一次情報源にアクセスできる時代になったことで『報道』は『情報流通業』になったのです。

 情報をマスコミが意図的な編集している実態は公然と指摘される時代になりました。マスコミの身勝手な言いがかりはメディアの掲げる『正義』では押し通せなくなったのです。この現実を見据え、正確な情報を発信し続けない限り、マスコミへの信頼は低下し続けると言えるのではないでしょうか。