徴用工裁判の原告が今度は韓国政府を相手取って提訴、逃げ道は存在するものの韓国側が苦境に立たされる

 NHK によりますと、韓国での『徴用工裁判』で韓国政府を相手取った訴訟が12月20日に起こされたとのことです。

画像:韓国政府を相手取った徴用工裁判が起こされたことを報じるNHKニュース

 この訴訟は「被害者に寄り添う」とされるムン・ジェイン政権にとって、ブーメランになるリスクがあると言えるでしょう。逃げ道が存在することも事実ですが、ダブルスタンダードになる可能性があるだけに “腫れ物” となることが予想されます。

 

 太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、強制的に働かされたと主張する韓国人やその遺族ら1000人余りが、韓国政府を相手取り、補償を求める訴えをソウルで起こしました。「徴用」をめぐっては、日本企業に賠償を命じる判決が韓国で確定しましたが、今回の訴訟の原告側は、韓国政府が補償すべきだという立場です。

 (中略)

 原告側は「徴用の被害者が日本のどの企業で働かされたのか、多くの遺族は把握していない」として、本来は日本企業に賠償を求めたくても現実的には韓国政府を相手取って訴えを起こすしかない人たちもいるという事情を説明しました。

 原告側が要求しているのは「1人当たり1億ウォン(= 約1000万円)の補償」です。この額は大法院(= 日本の最高裁に相当)が『徴用工裁判』で賠償を命じた額と同じであり、訴えの根拠としては正当性があると言えるでしょう。

 そのため、被告となった韓国政府(= ムン・ジェイン政権)にとっては難しい対応を迫られることになったと言えるでしょう。

 

「韓国政府に補償する責任はない」との判決を下すのは政治的に難しい

 韓国政府を相手取って起こされた『徴用工裁判』が厄介なのは「原告敗訴の判決を政治的に出しにくい」という点に集約されます。

  • 原告勝訴:韓国政府が賠償責務を負う(= 上限なし)
  • 原告敗訴:韓国政府への “突き上げ” が起きる

 まず、『原告勝訴』はあり得ません。なぜなら、韓国政府が賠償責務を負うため、自称・徴用工が大量に発生し、多額の補償費用を捻出しなければならなくなるからです。

 逆に、『原告敗訴』の判決を下してしまうと、反政権運動の “燃料” と化してしまいます。日韓基本条約で「韓国人は個人請求権は韓国政府が受け持つ」と主張した手前、無下にすると政権への反発が強まることは避けられそうにないからです。

 そのため、ムン・ジェイン政権がどのように振る舞うかが大きなポイントになると言えるでしょう。

 

二枚舌を駆使して玉虫色の決着を目指す他に解決策は見当たらない

 『徴用工裁判』では「日本の植民地支配は違法で、慰謝料を請求できる」との判決が下されました。

 ムン・ジェイン大統領や日本共産党などは「個人請求権は消滅していない」と大法院の判決とは異なる主張を展開していますが、日韓基本条約で「相手国の請求に応じる義務は存在しない」と明記済です。

 つまり、どのような名目の請求であっても、日本政府・日系企業には応じる義務はないのです。「義務」がないのですから、相手側の “自発的な行為” を促すしか方法がありません。

 しかし、日本側が “自発的な行動” を起こす可能性はゼロに近い状況です。親韓派の姿勢を鮮明にする朝日新聞などですら、韓国人の心を癒す活動に資金を投じたことを報告していないのですから、韓国側の期待に沿った動きが出る見込みは絶望的と言えるでしょう。

 したがって、日本側に責任転嫁をすることができず、韓国国内で決着させなければならない状況にあるのです。「確定判決」によって韓国政府の首が絞まる可能性が高いため、玉虫色の決着に持ち込むための法廷戦略が駆使されることになると考えられます。

 

日本の外務省が “韓国政府を相手取った徴用工裁判の原告” を唆していたら大したもの

 効率性という点で、『徴用工裁判』の原告らが韓国政府を相手取って訴えることは必然性があります。なぜなら、日本政府や日系企業の場合は「勝訴しても、原告に賠償金が支払われない」という事態が起きているからです。

  1. 「大法院での勝訴」が前提
  2. 被告が支払いに応じなければ、「資産の差し押さえ」が不可避
  3. 韓国国内に資産がなければ、第三国での “差し押さえ裁” が必須
  4. 日本政府が ICJ に訴え出るなどの要素も加味する必要あり

 日韓基本条約で「請求に応じる義務はない」と明記されている以上、“条約を破る政府” や “背任をする企業経営陣” が存在することは期待できません。そのため、日本側は請求先として最初から無理筋なのです。

 しかし、韓国政府は異なります。「韓国人の個人請求権を消滅させることと引き換えに巨額の経済協力金を得ている」のです。支払いを請求する理由がある上、被害者に優しいムン・ジェイン政権を相手取った訴訟は「千載一遇のチャンス」が訪れていると言えるでしょう。

 日本の外務省がこの訴訟を背後で煽っていれば大したものです。ただ、慰安婦問題などで上手く立ち回ることができていなかったのですから、その可能性は極めて低いと言わざるを得ないでしょう。

 

 『慰安婦問題』にせよ、『徴用工裁判』によせ、いずれも韓国の国内問題なのです。日本政府が解決のための資金を拠出する必要はない訳ですから、「内政問題の責任を日本に転嫁するなど言語道断」と切り捨てる必要があると言えるのではないでしょうか。