何でもかんでも現場に押し付ければ精神的に病んで休職を余儀なくされる教員が増えるのは当然の結果である

 うつ病など精神疾患による教員の休職者が増加していることが文科省の調査が明らかになったと読売新聞が報じています。

 教員の仕事量が増加し、長時間労働が深刻化しているのですから、精神的に病む人の数が増加するのは当然です。「精神疾患を発症する人をゼロにすること」は不可能ですが、発症しやすい環境の是正に乗り出すことは可能なはずです。

 まずは「何でもかんでも現場の教員に押し付けている現状」を止めることから始める必要があると言えるでしょう。

 

 2017年度にうつ病などで休職した公立小中高校などの教員は前年度比186人増の5077人だったことが、文部科学省の調査でわかった。

 (中略)

 精神疾患による休職者はこのうち5077人で、全教員の0・55%に当たる。今年4月までに復職したのは1994人、引き続き休職したのは2060人で、1023人は退職していた。世代別では30代(0・63%)が最も割合が高く、40代(0・62%)、50代以上(0・57%)などと続いた。現場で経験を積み、責任が増す年代ほど、心の病にかかる傾向がみられた。

 精神疾患での休職者は急増しており、最近25年で4倍超になった。文科省の担当者は「休職者が高止まりしている背景には多忙化などによるストレスもあり、働き方改革で業務を見直すことが必要」としている。

 

“仕事量に押し潰される教員” が散見されることが問題

 経験を積めば、責任ある仕事が任されるのは民間企業でも同じことです。民間企業の場合は「アウトソーシング」という形で業務量を削減する選択肢を採ることは可能ですが、公立校では困難です。

 教員全体の業務量は増え続ける一方、少子化を理由に教員の増員は行われる気配はありません。

 その結果、教員1人あたりの業務量は増加することになるのですから、“潰れる教員” が出てくるのは当然の結果だと言えるでしょう。このような事情があるから、「校長や教頭にはなりたくない」という教員が出てくることになるのです。

 

本来の仕事ではない『部活動の指導』と『いじめ問題への対応』が教員の大きな負担となっている

 教員の負担が増している理由は「本来の仕事ではない業務」が次から次へと押し付けられているからです。その主な理由は次の2つでしょう。

  1. 部活動の指導
  2. いじめ問題への対応

 まず、放課後や休日に行われる部活動で「授業の準備」などに充てる時間が取られます。休日に試合や大会が行われる運動部を担当する教員ほど、時間管理が困難になるでしょう。

 部活動を指導できるノウハウを既に持っている教員なら、負担を限定することは可能です。ただ、学校に割り当てる教員は「教科」によって決定するのであって、「担当する部活動」ではないのです。そのため、無理を強いられる教員が発生する問題点があることは周知されていなければならないのです。

 また、「いじめ問題への対応」が現場の教員に丸投げされていることも重荷となっています。

 「いじめの発生件数」ばかり取り上げられ、批判や査定の対象になるから「いじめではない」との防衛本能が働くのです。教員が責任を持つべきは「いじめ問題の初動」までであり、暴力行為が確認された時点で傷害事件として警察の介入を求めるべきなのです。

 他人に暴力を振るうような生徒の将来を守るために、教員に理不尽な “しわ寄せ” が行き、業務量が増加して休職になるなど本末転倒と言わざるを得ないでしょう。

 

文科省の無責任な体質が「教員の休職者問題」の元凶

 教員の休職者問題は “文科省の方針” が根底にあるのです。トラブルが起きた際の解決策が「現場の運用で対処します」では責任転嫁と同じです。

 『学問の自由』を維持するために、学校内で発生する暴力問題の解決を専門家ではない教員に強いることが間違った判断なのです。刑事事件に該当するなら警察を入れ、民事なら弁護士に介入してもらうべきでしょう。

 なぜなら、そうすることで教員のリソースを本来の役割である『授業』や『部活動』に割り当てることが可能になるからです。

 「いじめ問題の情報共有を怠ったら懲戒対象」というのは『いじめ問題』への介入を強制され、教員全体の業務量が増す結果となるのです。そうした事態に陥らないために、初期の段階から “揉め事の解決” を専門とするプロフェッショナルに委託できるような体制を構築しておくことが重要です。

 『部活動問題』も同じです。スポーツとして今後も活動して行きたいと考える運営者がいるクラブは「将来の選手や熱心なファン」になってくれる学生を雑に扱うことはないでしょう。なぜなら、先行投資を行う現場の当事者であると同時に、悪評が立つと本業であるトップチームが損失を被ることになるからです。

 責任を負わない立場にいる者が理想論を現場に押し付けた結果、最前線にいる教員が精神疾患などで倒れているのです。まずは文科省などが「何でも現場任せにし、業務量を削減する改革を実施しない姿勢」を改める必要があると言えるのではないでしょうか。