環境省が太陽光パネルの大量廃棄に備えてリサイクルの義務化を検討、悪質業者の発生を見越した「デポジット制度」も検討すべき

 日経新聞によりますと、環境省が耐用年数が切れた太陽光パネルが大量廃棄される事態が発生することが見込まれるため、パネルのリサイクルを義務付ける方針を固めたとのことです。

 「リサイクルの義務化」は不法投棄に対する一定の歯止めをかけることが期待できるでしょう。ただ、発電をしなくなった太陽光発電所を放置したままにするなどの “放棄” にも対応は必要なのです。

 「リサイクル・廃棄用の資金積立(= デポジット制度の導入)」も検討すべきと言えるでしょう。

 

 環境省は太陽光パネルのリサイクルを利用者などに義務付ける方針を固めた。パネルの耐用年数は20年程度で、2012年に始まった固定価格買い取り制度(FIT)で急速に普及が進んだパネルが30年ごろから大量の廃棄が見込まれるため。義務化により不法投棄を防ぐほか、資源の回収にもつなげる。

 「自然にやさしい」とのイメージ戦略と「高額な FIT」という実利で、太陽光発電バブルが発生しました。

 発電に使う太陽光パネルはいずれ耐用年数を迎えるため、適切に処分する必要があります。しかし、問題なのは「処分のルールが存在しない」ため、不法投棄や放置をするパネル所有者が発生する恐れがあるのです。

 その是正に取り組もうとしている環境省の動きは評価すべきと言えるでしょう。

 

『家電のリサイクル制度』のように太陽光パネルを適切な形で廃棄すべき

 “エコ” のイメージがある太陽光発電ですが、太陽光パネルには有害物質が含まれており、一般ゴミとして処分することはできません。また、「光が当たると発電し続ける」という性質があるため、下手にさわると感電のリスクもあるのです。

 そのため、“処分に必要な技術を持った業者” が『適切な手法』を用いて、耐用年数が切れた太陽光発電パネルを処分するというルールが必要なのです。

 発電に使った機材を適切に処分してこそ、「再生可能エネルギーはエコであり、環境にやさしい」と言えるのです。しかし、現状では「太陽光パネルを処分するためのルール」が存在しないため、不法投棄や野ざらしにする業者が発生することが予想されます。

 ルールも罰則もないなら、所有者がコストをかけて不用品を処分する動機はありません。“儲かるビジネス” として太陽光発電に参入していることが明らかなのですから、処分費用まで電力消費者に回されるような制度設計は論外と言わざるを得ないのです。

 

“残土処理券” のような廃棄体系は「反面教師」としなければならない

 環境省が「太陽光パネルのリサイクル義務化」を方針づけたのは大きな一歩です。ただ、制度の設計をきちんと行う必要があるでしょう。

 なぜなら、建設業界で横行する “残土処理券” の形で太陽光パネルの廃棄が横行すると、適切な形での処分が阻害される原因になるからです。

 ニュースで「違法に積み上げられた建築残土が崩壊し、近くの道路などに流れ込んだ」という報道を見聞きしたことはあるでしょう。それと同じことが太陽光パネルでも起きる恐れがあるのです。

 “パネル処理券” を発行した業者が「自らの所有地に耐用年数が切れた太陽光パネルを放棄する」という形で “処分” をすることも十分に考えられるのです。「所有地に “一時保管” をしているだけで、不法投棄ではない」との詭弁を呈することが可能になるのですから、廃棄・処分の制度設計が重要です。

 「資源の回収」とともに「パネルに含まれる水銀などの有害物質の分離と処分」が求められていると言えるでしょう。

 

リサイクル義務を無視する事業者・所有者の発生を見越したデポジット制の導入を検討すべきだ

 法令遵守の意識を持った事業者や所有者は「リサイクルの義務化」というルールに真摯に対応するでしょう。その一方で、ルールを平気で破る者が出てくることも想定できるため、「正直者がバカを見る」という事態が起きないような制度を作り、運用する必要があります。

 特に、「パネルを処分する費用がない」などの開き直りを見せる者は “逃げ得” を狙うため、デポジット制度を設けるなどの対策は必須です。

  • 太陽光パネルを用いた発電事業者がパネル処分用のデポジット費を支払う
  • デポジット費は「年度ごとの積立方式」を採用
  • デポジット費の支払いが滞っている事業者・個人には FIT の支払い分から相殺
  • パネルを適切に処分したことが証明されれば、デポジットは返却

 要するに、自動車を運転する際の『自賠責保険』と似た制度を太陽光パネルを用いた発電にも導入すべきなのです。

 太陽光パネルの最終的な所有者が責任を持って処分とすると、ダミー会社を “最終的な処分責任者” に仕立て上げようとする輩が現れるでしょう。そうすることで FIT から得られる利益を最大化することが可能になるからです。こうした現状の問題点を1つずつ潰していく地道な作業が環境省には期待されているのです。

 

 太陽光発電は “環境にやさしい” との印象が先行していますが、「環境破壊を引き起こすリスクも高い発電手法」なのです。FIT に目がくらみ、環境破壊のリスクが放置されるようなことがないように行政側が適切なルール作りをする意味は大きいと言えるのではないでしょうか。