ファーウェイ、アメリカで詐欺罪および企業秘密窃盗で起訴される

 NHK によりますと、アメリカの司法当局がファーウェイを詐欺罪で起訴し、関連会社を企業秘密に対する窃盗罪で起訴したとのことです。

 ファーウェイは「アメリカ当局を欺く形でイランとの取引を行ったこと」が理由で、関連会社が「Tモバイルから企業秘密を盗んだこと」が起訴の理由でしょう。これにより、ファーウェイと関係の深いソフトバンクには逆風が強まる恐れがあります。

 

 アメリカ司法省は28日、ファーウェイの孟晩舟副会長と法人としてのファーウェイなどを詐欺の罪で起訴するとともに、関連会社2社を他社の企業秘密を盗んだ罪で起訴したと発表しました。

 起訴状によりますと、このうちファーウェイの関連会社2社は、アメリカの携帯電話大手、Tモバイルが開発したスマートフォンのテストに使うロボットの写真を許可無く撮影したり、研究室から無断で部品を持ち出したりしたということです。

 また関連会社では、競合する他社の機密情報を入手するために、社員どうしを競わせ、毎月、最も貴重な情報を盗み出すことに成功した社員には特別ボーナスが支給されていたと指摘しています。

 

組織ぐるみで競合他社から機密情報を入手することを奨励していた実態の指摘は重い

 ファーウェイが機密情報の窃盗に働いていたと指摘されているのは「品質向上のため」です。

 ファーウェイ製品は「タッピー」と呼ばれる “Tモバイルの品質検査ロボットによる検査” で失格となる割合が競合他社よりも高いことが問題となっていました。こうした課題はどの業種の会社でも直面することであり、自社の研究開発力で乗り切ることが王道と言えるでしょう。

 しかし、ファーウェイは「Tモバイルからタッピーに関する技術を盗み出すこと」で検査を突破しようとする手段に出たのです。

 明らかにコンプライアンスを無視した行為ですし、他社の機密情報を取得するほど特別ボーナスが支給される制度が適用されていることは企業として致命的です。生じた疑念を払拭できないのであれば、市場から追放されるのは止むを得ないと言えるでしょう。

 

中国政府が国内市場で外資に嫌がらせをした行為と似ているようで異なる

 中国政府はファーウェイに対するアメリカ当局の動きを「不公平」や「正当な経営行為を阻害する」などと批判の声を出すでしょう。なぜなら、自分たちが国内市場で外資系企業にしてきた行為をアメリカ当局もしているはずと考えているからです。

 ですが、この指摘は的外れであり、効果は出ないでしょう。なぜなら、中国の当局は “言いがかり” を付けることで外資系企業に嫌がらせをしますが、アメリカの当局は起訴することで根拠を示しています。

 また、該当企業のトップが「有効な同一国のパスポートを複数枚所持している」など、素人でも「一線を画した問題である」と実感できる案件となっているのです。

 そのため、中国政府の代弁者としての役割を担う個人や組織は極めて少数となるでしょう。

 

米中貿易の取引材料にしても、門前払いを受ける可能性がある

 アメリカと中国は1月30日からワシントンで貿易問題を巡る閣僚会議を行う予定であるため、ファーウェイへの圧力は “取引のカード” として使われている可能性はあります。

 ただ、中国が貿易面で一定の譲歩を示したことでファーウェイ問題を幕引きにする可能性は低いでしょう。これは「イランへの制裁破り」という中国との貿易問題とは別の案件に位置しているからです。

 要するに、利害関係者が異なるのです。中国との貿易問題は「アメリカの農業従事者」が主な利害関係者です。一方、イランへの制裁に敏感なのは「ユダヤ系」です。そのため、アメリカは個別に対応という形を採り、それぞれの問題で国益を最大化する戦略を採る可能性が高いと言えるでしょう。

 それにより、ファーウェイに近いソフトバンクが “とばっちり” を受ける可能性があります。傘下のスプリントがTモバイルとの合併で審査が続いているのですが、「ファーウェイ関連会社によるTモバイルへのスパイ行為」は心象を悪化させる要因になります。

 そのため、「ソフトバンク色も排除すること」が承認の条件となる可能性も捨てきれないだけに厳しい立場に置かれることを念頭に置いておく必要があるでしょう。

 

 主導権を握られる形になっている中国がアメリカとの貿易問題でどのような形で折り合いを付け、ファーウェイ問題をどう収束させようとするのかに注目すべきと言えるのではないでしょうか。