法律を制定・改正する権限を有する立法府の一員である国民民主党・玉木代表が規則を無視して代表質問時にタブレット端末の利用を試みる

 時事通信によりますと、1月30日に衆議院本会議で行われた安倍総理の施政方針演説に対する代表質問で、国民民主党の玉木代表がタブレット端末に保存した原稿を読もうとしたところ、端末の使用が認められなかったとのことです。

 ペーパーレス化は推進されるべきですが、まずは「玉木議員の端末使用手続き」が問題視されるべきでしょう。なぜなら、事前に許可を得るなど “立法府の一員” としてやるべきことをやっていなかったからです。

 

 30日の衆院本会議で行われた安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問で、国民民主党の玉木雄一郎代表が用意した原稿をタブレット端末で読もうとしたところ、与党の反対で認められなかった。

 本会議に先立つ衆院議院運営委員会理事会で与党側が「前例がない」と難色を示したのが理由。玉木氏は質問の冒頭で「国会のペーパーレス化のためにも、こうした古いルールを改めて進めていこう」と訴えた。

 「紙に印刷された原稿」でも「電子端末に保存された原稿」でも、政治家個人が使いやすいと感じる方を使えば良いことです。多くの人がこの意見を支持することでしょう。

 しかし、その前提として「電子端末の利用規則が制定されていること」が必須です。

 国民民主党・玉木議員が衆院本会議でやろうとしたことは一般的な民間企業でも問題視される行為です。その認識が欠けていることは問題だと言わざるを得ないでしょう。

 

国会議場内での電子端末の利用は議院運営委員会で禁止されている

 まず、携帯電話やタブレットなどの電子端末の利用は議院運営委員会で禁止されています。「時代錯誤」との批判があるでしょうが、“悪用のリスク” を懸念して規則が制定されたと言えるでしょう。

 「政治活動に限り、電子端末の利用を認める」との文言で利用が許可されていれば、妨害活動のツールとして利用されるでしょう。携帯の着信音を鳴らしたり、疑惑の証言を大音量で再生したりと様々な手法が考えられるからです。

 電子端末を国会の議場内で執務中に使用したいのであれば、適した規則を作る必要があります。立法府はそれが仕事であり、玉木議員も立法府の一員なのです。

 自らがやるべき仕事をせずに本会議の代表質問の場にタブレット端末を持ち込もうとする姿勢はパフォーマンスだと批判せざるを得ないでしょう。

 

“私物のタブレット端末” を業務に用いることは「情報漏洩の観点」から一般的な企業では禁止されている

 次に、玉木議員が持ち込んで利用していた端末が “私物” であることが問題です。個人の所有する電子端末を業務で利用することは民間企業では一般的に禁じられていることでしょう。

 なぜなら、情報漏洩が起きる大きな原因になるからです。

 業務中に私物の電子端末を利用できるなら、その中に機密情報をコピーしてしまえば情報を容易に盗み出せます。また、端末利用者に悪意がなくても、ウイルス感染などで端末内の機密情報を盗まれるリスクがあるのです。

 そのため、“私物の端末” を業務で使うという行為が問題なのです。事前申請もない状態で私物の電子端末を使おうとしたのですから、「待った」がかかるのは当然と言えるでしょう。許可されていた方が問題なのです。

 

「国会資料などの印刷待ち時間で審議を遅らせようとする野党戦術」を批判するのが本筋だろう

 国会ほど『働き方改革』に逆行する人物が多い環境はないでしょう。「ペーパーレス化を拒むことで印刷待ち時間を発生」させたり、「投票時に牛歩戦術を採用」したりと時間稼ぎをする国会戦術が横行しているからです。

 「タブレットなど電子端末の利用解禁」と「押しボタン式の採決導入」で効率的な働き方ができるにも関わらず、一部の野党が反対しているのです。

 反対のしわ寄せは霞ヶ関の職員に行っているのですから、“原因を作っている側の政治家” が問題解決に取り組まなければなりません。妨害目的の不信任決議案提出で無駄紙が大量発生し、時間が浪費しているのです。

 紙の国会資料が必要なら、必要と感じる国会議員が自分で印刷すれば良いのです。月100万円の『文書通信交通滞在費』を得ているのですから、国が紙で配布する必要性は少ないと言えるでしょう。

 

 電子端末を用いて代表質問を行いたいなら、価値を正面から主張し、有権者や議員の支持を得るべきです。それが民主主義であり、国会議員に求められる働き方です。

 国民民主党・玉木代表が採った手法は現状ではパフォーマンスと批判せざるを得ません。真っ向から電子端末の利便性を訴え、規則の変更を要求する姿勢が支持率を引き上げる要素になると言えるのではないでしょうか。