イギリス議会が「2月26日までの離脱協議継続」を否決、3月29日が期限のハードブレグジットが近づく

 NHK によりますと、離脱協定案の修正をめぐる EU との協議が難航しているイギリスで2月26日まで協議を続ける方針を示したイギリス政府に対し、議会が提案を否決したとのことです。

 “チキンレース” の状況から大きな変化は生じていませんが、ハードブレグジットが現実味を帯び始めたと言えるでしょう。期日である3月29日までにどういった動きがあるのかを見守り続ける必要があります。

 

 イギリスのメイ首相は、離脱協定案の修正をめぐるEUとの協議が難航していることから、当初の予定を変更し、26日まで協議を続ける方針を今週、発表しました。

 議会では14日、この方針について採決が行われ、賛成258票、反対303票で否決されました。与党・保守党からも反発する議員が相次ぎ、67人が棄権しました。

 (中略)

 首相官邸は声明で、「離脱の日に間に合うようEUと協議を続ける」として、方針を変更する考えはないことを強調しました。

 バークレー離脱担当相は、14日夜もEUのバルニエ首席交渉官と電話会談を行いましたが、来月29日の離脱まで1か月半となる中、メイ首相の求心力の低下は著しく、協議はさらに難航することが予想されます。

 

“にらみ合い” の続く状況で『譲歩』を選択する動機が見当たらない

 イギリスの EU 離脱交渉は完全に「膠着状態」となっています。これは “囚人のジレンマ” が起きていることが大きな理由です。

 当事者全員が「痛み分け」を許容するなら、ソフトブレグジットで落ち着くことでしょう。

 しかし、現実にはイギリス政府・イギリス国民・ EU といった当事者の立場にある全員が「自分たちの利益の最大化」を念頭に置いているのです。

 外交は騙し合いですから、相手が裏切ることを想定しておく必要があります。そのため、「最初に『譲歩のカード』を切るにはリスクが高く、その代償は受け入れられない」との認識がある以上、誰も動こうとしない膠着状態に陥っているのだと言えるでしょう。

 

3月中旬までは「時間だけが経過する」という形になるのではないか

 おそらく、イギリスの EU 離脱交渉は進展がないまま時間だけが経過することになると予想されます。

 EU は『新たな離脱協定案』をまとめてしまうと、他の加盟国に「ゴネ得を狙う外交戦術は有効」とのメッセージを送ってしまうことになります。したがって、再交渉に消極的な態度を採り、実質的な譲歩は皆無に近い内容の協定案しか認めないでしょう。

 選択肢に幅があるのはイギリス政府ですが、「『ハードブレグジット』か『現在の離脱協定案』のどちらかを議会が選べ」と迫ることができます。「我々がイギリス国民が納得する離脱協定案を EU と取りまとめる」と宣言する政党・政治家が見当たらないのですから、状況が大きく動くことはないでしょう。

 一方の『残留派』は「EU からの離脱通知を一方的に撤回する」というカードを土壇場で行使する考えを持っていると思われます。

 しかし、これは EU 市民がイギリス社会保障制度にタダ乗りする現状を放置するものであり、「現状が改善されないから、離脱派が国民投票で勝利したという現実に目を向ける必要がある」と言えるでしょう。

 

最後の1週間で慌てふためかないよう、ブリグジットに向けた準備をしておくことが官民双方の責務

 『イギリスの EU 離脱問題』以外にも、重要な案件は存在しています。そのため、大きな動きがないことを理由に対処の優先度を下げたくなる誘惑に駆られることでしょう。

 しかし、その油断が命取りになる恐れがあるのです。「ブレグジット」が起きる前提で準備を行っている必要がありますし、場合によってはイギリスから既に脱出済みでなければなりません。

 ハードブレグジットが起きる可能性が上昇する一方なのですから、損失を最小限に留める準備を完了させておくことがトップの責務となるはずです。

 運命の “分岐点” は徐々にですが、確実に近づいているのです。慌てふためくことがないように入念な準備を行い、その時に冷静な行動ができるのかが問われていると言えるのではないでしょうか。