築地再開発で補正予算5600億円を要求する小池都知事に対し、都民ファーストと公明党を除く都議会6会派が説明を要求中

 都議会で「築地市場跡地の再開発方針」を巡って与野党が対立し、本会議を開けない事態が発生していると読売新聞などが報じています。

 混乱の原因は小池都知事が「築地市場跡地を一般会計の5600億円で買い上げて再開発を行う」という形に方針転換したことです。これに対する説明を一切せずに議会を通過させようとしているのですから、都議会野党が反発するのは当然と言わざるを得ないでしょう。

 

 築地市場跡地の再開発方針を巡って東京都議会で与野党が対立し、20日に開会予定の定例会本会議を前にした委員会が開かれないなどの混乱に陥っている。2020年東京五輪・パラリンピック関連費を含む新年度予算案など重要議案の審議を控える中、都議会の空転が懸念されている。

 (中略)

 都は今年1月、跡地について、支出が市場関連事業に限られる市場会計から、一般会計に約5600億円で買い上げる所管換えをして再開発を進めると発表。築地での市場再整備はできなくなった。自民党都議は「知事から方針転換についての説明が一切ないまま、拙速に予算案を可決させようとしている」と批判する。

 自民党や共産党などの都議会野党が反発するのは当然です。小池都知事が要求する「補正予算5600億円」は新たな都民負担となるのですから、都知事か都議会与党が説明するのは当然と言えるでしょう。

 “説明のできない巨額予算” が議会を通過してしまう方が問題なのです。

 

「卸売市場機能を持った食の拠点」から「国際会議場を中核にした施設」に再開発方針を変更した小池都知事

 まず、小池都知事は築地市場跡地を『卸売市場の機能を持った食のテーマパーク』にすると2017年6月に発表しました。これは豊洲移転反対派(= 築地残留派)に支持されましたが、豊洲移転派を裏切るもので反発を招きました。

 豊洲で「千客万来施設」を運営する予定だった『万葉倶楽部』は築地に食のテーマパークを建設されると、収益性が悪化して採算が取れなくなります。そのため、ゴタゴタ劇が発生したのです。

 これは2018年5月に小池都知事が改めて陳謝したことで『万葉倶楽部』の態度は軟化。『万葉倶楽部』が2020年の東京五輪後に「戦略万来施設」を建設することで合意したのですが、築地市場の跡地利用が浮いた状態となりました。

 すると、小池都知事は2019年1月に「築地市場跡地を5600億円が買い上げ、国際会議場を中核した再開発を行う」と発表したのです。これは当初の予定と異なっている上、豊洲移転用の費用にも穴を開けることになります。

 だから、自民・共産・維新といった都議会野党が反発しているのです。

 

『方針転換で必要となる補正予算5600億円』に対する説明を小池都知事に求めることは不可避

 都議会与党である都民ファーストと公明党で『築地市場跡地の再開発に必要な補正予算(5600億円)』を通すことは可能です。しかし、「なぜ、巨額の補正予算が必要なのか」は説明させる必要があるはずです。

 巨額の補正予算が必要となる『現行案』が良いと考えているなら、それを都民の代表者で構成される都議会で堂々と説明できるでしょう。審議をせずに成立させようとする姿勢は問題視せざるを得ないのです。

 池川友一都議(共産党)の主張が的を得ていると言えるでしょう。築地市場の跡地を「売却」するのではなく、「賃貸」にする前提で開発計画は白紙状態なのが現状なのです。

 この方針が十分に説明されることなく、補正予算を成立させようとしている都民ファーストや公明党も小池都知事と同様の責任があるとの認識を持たなければならないと言えるでしょう。

 

“裕福な” 東京都が支払える予算規模かもしれないが、効率性という点では大きな問題だ

 東京都という資金力のある地方自治体からすれば、「5600億円程度の補正予算」という感覚なのかもしれません。ただ、限りある予算を効率的に使うという点では疑問が残る政策と言わざるを得ないでしょう。

 築地市場の跡地は「売却」することで、豊洲市場の移設費用に充てることが従来の計画でした。

 これを小池都知事は覆したのです。穴埋めが必要になりますし、それは都民に新たな費用負担を求めるものです。東京都が持つ資金力から見れば大したことがない規模かもしれませんが、それだけ巨額な予算が使えるのであれば社会保障関連に回すべきと考える都民も多いのではないでしょうか。

 仮に、年10億円で10年間に渡る継続的な案件を立ち上げたとしても、総額は100億円です。それを軽く凌駕する予算を都知事の独断で決まってしまうことは問題視されるべきです。少なくとも、説明をせずに補正予算を通そうとする都政には厳しい批判が寄せられるべきと言えるのではないでしょうか。