改修工事をせずにレオパレスが『認定』を取得できるのなら、「施工不良問題」が成り立たなくなるのでは?

 「国認定の仕様で施工する」と言いながら、実際には異なる仕様での施工が発覚して問題となっているレオパレス21が外壁の改修工事を回避することの検討をしていると共同通信が報じています。

 ただ、これを実行することは難しいでしょう。なぜなら、レオパレスの物件で発覚した施工不良は外壁だけではなく、界壁や天井にも存在しているからです。

 いずれの件も建築基準法に違反する事案であり、改修工事の回避は困難と言わざるを得ないでしょう。

 

 賃貸アパート大手のレオパレス21が、施工不良が発覚した外壁の改修工事を回避する方向で検討していることが28日、分かった。925棟で耐火や防火に関する国の認定に合わない不備が発覚したが、安全性は確保されているとして、工事をせずに認定を取得したい考え。国は耐火や防火試験の結果などを踏まえ、申請内容に問題がなければ認定を出す。

 この記事には矛盾が含まれています。レオパレス21が「改修工事を避けたい」と考えることは自由ですが、「改修工事をせずに済む」という事態になると思わぬ “飛び火” が発生することに留意する必要があります。

 

耐火・防火基準を満たさない現状が維持されるなら、『認定』は取得できないのでは?

 共同通信が取り上げたのは『外壁』部分での施工不良です。レオパレス21では耐火や防火に関する国の認定に合わない不備が発覚し、これが施工不良問題としてマスコミに取り上げられることになりました。

  1. 耐火・防火基準に適合しない材料や工法を用いていた不備が発覚
  2. レオパレス側は「安全性は確保されている」との理由で改修工事をせずに『認定』を取得したい考えとのこと
  3. 仮に「取得できた」とすると、
    • 「改修工事の必要はなかった」と主張できるため、施工不良問題の根幹が崩れる
    • 国の耐火および防火基準に疑念が生じる

 もし、レオパレス側の考えが実現すると、マスコミと国に “飛び火” します。

 まず、施工不良という不備が発覚したことで問題となったのですが、改修工事が不要となれば「不備ではなかった」とのお墨付きをレオパレスが得るからです。マスコミは『間違った内容の報道』で “大きな損害” を与えたことになるのですから、賠償を請求されることになるでしょう。

 次に、国の耐火・防火に関する基準にも疑念が持たれる形になります。「安全のために必要な基準が適切に設けられていないのではないか」との不信感はマイナス面が大きいと言わざるを得ないからです。

 したがって、「改修工事をせずに済むのか」は大きな注目点と言えるでしょう。

 

建築基準法に違反する施工不良は『外壁』だけではない

 レオパレス21の物件で施工不良が問題となっているのは『外壁』だけではありません。他にも問題となる箇所があるのです。

  • 外壁:防火・耐火基準に適合しない材料や工法が用いられる
  • 界壁(部屋間の壁):遮音基準を満たさない材料が使われる
  • 天井:二重に張るべき材料が一重になっている

 施工不良に手を染めた動機として「コスト削減」が報じられているのですから、『外壁』だけ、『界壁』だけといったケースは少ないでしょう。『外壁』『界壁』『天井』と “削れる場所” なら複数箇所に及ぶ形で不正が行われていたと考えるべき事案なのです。

 外壁部分だけを対象に「改修工事をせずに『認定』を取得したい」と主張しても、界壁や天井部分の改修工事も避けることができなければ世間の印象は悪いままです。対応が後手に回っている感は否めないと言えるでしょう。

 

国交省からの指導を受け、「第三者委員会」を設置したレオパレス

 また、レオパレスの事後対応は「良いもの」とは言えません。これは第三者委員会に該当する外部調査委員会が国交省からの指導を受ける形で設立されたからです。

 会社では、当初、原因究明については社内に設けた組織が、当時の担当者に聞き取りを行うなどして進めるとしてきました。

 しかし、国土交通省から調査の客観性を確保するよう指導を受けたことなどから方針を変更し、27日付けで、外部の弁護士3人による調査委員会の設置を決めました。

 調査委員会は、来月18日をめどにいったん中間報告を取りまとめ、その後、再発防止策や経営陣の責任についても検討したうえで、最終的な報告書をまとめる方針です。

 おそらく、「改修工事をせずに『認定』を取得したい」との考えは第三者委員会が発足する前に出ていたものでしょう。客観性を確保せずに “結論” を出せるのであれば、そうした考えが出ることは不思議ではありません。

 しかし、現実には第三者委員会が発足する形となったのですから、報告書の原型が見えるまでは本件に関する経営判断はストップすることになると予想されます。

 

 賃貸物件は居住者がいなければ、収益を上げることはできないのです。賃貸契約を敬遠する理由を作ったことによる弊害は今後も尾を引くことになるでしょう。原因を明らかにし、十分な対策を講じた上でそれを証明するという地道な作業が要求されていると言えるのではないでしょうか。