タイが「TPP 参加の申請」を表明、経済圏の規模拡大が現実となるかが注目点
日経新聞によりますと、タイ政府が TPP への参加を申請するように関係部署に指示したとのことです。
過去にはインドネシアが「参加の意思」を表明していましたが、タイは「参加の申請」という形で実際に行動を起こしました。TPP の規模が拡大する可能性が極めて現実的になったことは歓迎すべきことだと言えるでしょう。
タイ政府は月内をめどに、米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を申請する。軍事政権のソムキット副首相(経済担当)がこのほど、通商政策を担う商業省に現政権下での申請を指示した。自動車産業などが集積する東南アジア屈指の工業国が加われば、日系企業にもサプライチェーン(供給網)の構築などで恩恵がありそうだ。
TPP11 に新たなメンバーが加わることは歓迎すべきことです。その1番手として、製造業が「重要なサプライチェーンの一角」として位置づけているタイが加わる見通しであることは大きなプラス効果がもたらされることだと言えるでしょう。
日本と経済的な結びつきが強いタイ
タイは日本との経済的な結びつきが強いため、「TPP に加入することによるメリットはある」と言えるでしょう。外務省が発表している基礎データでも次のように示されています。
- 輸出:
- 額:2153億ドル(2016年)
- 主要品目:コンピュータ類・自動車類・農作物・食品加工品等
- 相手国:アメリカ・中国・日本
- 輸入:
- 額:1947億ドル(2016年)
- 主要品目:機械器具・原油・電子部品等
- 相手国:中国・日本・アメリカ
輸出・輸入の両方で日本は上位3カ国に顔を出しているのです。タイには自動車メーカーが生産工場を置いている関係で、両国間では自動車や部品の貿易が数字としては大きくなっています。
タイから日本への「天然ゴム」や「食品」などが、逆に日本からタイへは「鉄鋼製品」が特徴的な輸出品目となっています。これらは TPP の加入によって関税障壁が取り除かれるのですから、両国の消費者が恩恵を受けられる可能性が高くなると言えるでしょう。
「ASEAN を対象にした競争力を企業が持てること」は大きい
タイで生産することが容易になると、ASEAN など途上国の側面が残っている国々での競争力が増すことになるというメリットを享受すること可能になります。
例えば、タイでは首都バンコクの生活水準は先進国と変わらないでしょう。しかし、北部などでは “途上国の色合い” が強く、高額な人件費を要する先進国の工場で生産した製品の競争力は劣るという問題に直面しているのです。
人件費が安価なタイでの生産が容易になるほど、そうした市場での競争力が増す訳ですから、チャンスが増えることになると言えるでしょう。
ASEAN 全体が対象国になるのですから、タイが TPP 参加申請を表明したことは経済的に歓迎すべきことです。日本とは産業構造が異なる国であり、日本国内に対する悪影響は少ないと考えられるからです。
注目点は「タイから TPP 加入の申請が実際に行われるか」になります。参加の意向は過去にインドネシアが表明していましたが、「参加申請を指示した」と表明したのはタイが1番手です。
月内を目処とのことですので、3月中に具体的な動きが起きることでしょう。申請が行われ、TPP の経済圏が拡大することになるのかに注目です。