韓国で大気汚染が深刻化し、ムン・ジェイン大統領が緊急措置を指示するまでの事態となる

 韓国で大気汚染があまりに深刻となったため、ムン・ジェイン大統領が緊急の措置を講じるように指示を出す事態になっていると NHK が報じています。

画像:スモッグがかかった韓国の街並み

 「中国からの黄砂」が主要因の1つですが、それだけでは「世界ワースト1位」を記録するまでには至らないでしょう。韓国国内の “事情” もあるため、当面はこの状況が続くことになることが予想されるのです。

 もし、韓国旅行を考えているのであれば、「春先は避けるべき」と言えるでしょう。

 

 韓国では、例年春先に、中国大陸から来る黄砂や交通渋滞の影響などで、大気汚染が深刻化していて、このうち、ソウルでは、先月下旬以降、大気汚染物質のPM2.5の1日の平均濃度が、WHO=世界保健機関の基準25マイクログラムを大幅に上回る状態が続いています。

 (中略)

 韓国政府は、ソウルをはじめとした一部の地域を対象に、排出量などに応じて一部の車両の通行を規制したり、火力発電所の出力を8割以下に制限したりする異例の措置を6日まで6日連続でとっています。

 ソウルでは、観光への影響を懸念する声も聞かれ、政府として対策を迫られています。

 

PM2.5 は中国由来がメインだが、大気汚染の原因は PM2.5 だけではない

 日本を含むアジア極東地域は春先になると中国大陸から黄砂が飛来します。そのため、大気汚染が引き起こされることになります。

画像:PM2.5の検出状況

 黄海を隔てて中国と面する韓国・ソウルも例外ではなく、中国で PM2.5 が多く検出された数日後には韓国でも数値が上がるという状況となっています。そのため、中国由来の PM2.5 に悩まされていると言えるでしょう。

 ただ、「PM2.5 は中国の問題」と批判できない事情が韓国にあることも事実です。それは石炭火力発電所の存在です。

 

韓国は電力の 50% 弱を石炭火力で発電し、発電所は韓国西部・黄海に面した忠清南道に集中している

 韓国の電気料金は「安価」なのですが、その理由は「発電コストが安い電源が主力となっているから」です。石炭火力が 43%、原子力が 30% とコストが安い電源で全体の約4分の3を占めているのです(PDF)。

 ここで問題となるのは『石炭火力発電』です。石炭火力は火力発電の中で最もコストが安い電源ですが、大気汚染物質や温室効果ガスを大量に排出するという欠点があります。

 途上国で大気汚染が問題となるのは「資金的な理由から『石炭火力発電』の割合が増えてしまうため」であり、これと同じことが韓国でも起きているのです。

 韓国の石炭火力発電所がどこに多くあるかと言いますと、黄海に面する韓国西部の忠清南道です。首都ソウルに電力供給をする上では忠清南道に建設することは合理的です。

 しかし、黄砂が押し寄せる春先には、忠清南道にある『石炭火力発電所』から排出された大気汚染もソウルに流れ込むことになるのです。これが韓国の大気汚染が中国国内よりも悪い数値を記録する大きな原因と言えるでしょう。

 

石炭火力を原子力かLNG火力に置き換えれば、大気汚染問題を解決できるが「弱者の味方」を自称する左派政権にはハードルが高い

 大気汚染の原因は「石炭火力」と「自動車」がメインなのですから、排出される原因物質の量を減らす政策をすることで問題を緩和することが可能です。例えば、『石炭火力』を『原子力』または『LNG火力』置き換えることで大きな効果が得られるでしょう。

画像:石炭火力を置き換えた場合

 理想は「石炭火力の割合を減らして、原子力の割合を増やすこと」です。割合が 1% 下がるとコストは340億円、二酸化炭素の排出量は840万トンも減少するのです。

 これは日本のケース(PDF)ですが、韓国でも同様の数値が出ることでしょう。しかし、左派は原発に否定的であるため、“最善の改善策” を採ることができません。したがって、“次善の策” を採らざる得ないのです。

 次善の改善策は「石炭火力の割合を減らして、LNG 火力の割合を増やす」です。この方針でも、大気汚染の状況は改善しますが、発電コストが上がるため電気代の状況を招いてしまうという問題があります。

 そのため、『弱者の味方』を自称することが多い左派政権にとっては「支持層からの突き上げ」への対処を強いられるため、発電手法の置き換えに積極的になる理由は少ないと言えるでしょう。

 

 韓国の大気汚染は深刻になっていますが、問題となるのは「黄砂が日本にも飛来する3月・4月」に限定されています。したがって、韓国旅行を楽しみたいのであれば、この時期は避けるべきでしょう。

 健康的にも勧められないですし、旅行の醍醐味の1つである風景を楽しむことができないからです。「反原発の代償」が思わぬ形で噴出しており、左派やリベラル派は主張方針を見直す必要があると言えるのではないでしょうか。