留学ビザで在籍中の学生が今年度だけで700人超が退学・所在不明となっている東京福祉大学の対処には出入国管理上の問題がある

 NHK によりますと、東京に本部がある東京福祉大学で今年度に約700人の留学生が退学したり、所在不明になっているとのことです。

 問題なのは「所在不明の留学生が多数発生している」という点です。「就労目的の人物が『留学ビザ』で来日し、その後に失踪すること」が常態化していれば、これは “不法就労ルート” として機能していることと同じです。

 出入国管理上の問題として厳格に対応する必要がある案件と言えるでしょう。

 

 東京 豊島区に本部がある東京福祉大学で、今年度およそ700人の留学生が退学したり、所在不明になったりしていることがわかり、国は大学に聞き取り調査を行うことにしています。

 大学によりますと、東京 豊島区など全国に4か所あるキャンパスのうち、東京 北区のキャンパスに在籍していたベトナム人やネパール人などのおよそ700人の留学生が今年度、退学したり、所在不明になったりしているということです。

 大学にはおよそ5000人の留学生がいますが、多くが留学ビザで研究生として在籍しているということです。

 

学生が退学することに問題はないが、留学生の場合は「出国」がセットになる

 学生には「退学」を選択する自由があります。これは留学生でも同じです。ただ、『留学ビザ』で在留資格を得ている留学生の場合は「退学後の立場」に大きな変化が現れます。

 なぜなら、学校に通うことを辞めた時点で在留資格の “条件” を満たさなくなるからです。

 学生の立場を放棄したのであれば、速やかに「出国」をすることが求められます。しかし、東京福祉大学の件では「留学生が失踪している」のです。

 これは「留学が目的ではない人物が留学生として来日していること」と同じです。現状を是正する必要があるだけに、国の大学政策そのものを改善しなければならないと言えるでしょう。

 

私立大学は少子化の影響で経営難が深刻化し、「留学生頼み」が進行している

 大学運営は自由化で私立大学が増加し、定員数は増えました。しかし、日本は少子化で学生の絶対数が減少する傾向にあったのです。そのため、ブランドを確立できていない新規参入校ほど経営難に苦しむことになります。

画像:私立大学・短大の経営状況(読売新聞より)

 1年前に読売新聞が報じた「私立大や短大の2割弱が経営難に陥っている」が根拠と言えるでしょう。

 日本国内で学生を集め切れないとなると、「留学生に頼る」しか学校を維持する道は残されていません。そのため、『留学ビザ』で “目先の学生を集め” に走る学校が出てきても不思議ではないのです。

 学校法人側は「留学生の卒業後の生活」まで面倒を見る必要はなく、『留学ビザ』を持つ学生が失踪しても「責任」を問われることはありません。

 これでは不法就労の片棒を担ぐことの引き換えに「留学生が納める学費」を手にすることができるのですから、不正が横行することは当然と言わざるを得ないでしょう。

 

学校法人の運営を助けることになる「無償化」は愚策と言えるだろう

 日本政府は「教育無償化」に舵を切りつつありますが、これは経営に苦しむ学校法人に対する補助金の拠出と変わらないと言えるでしょう。

 “全入時代” を迎えており、経営難の学校に補助金を投入してまで維持する意味はありません。「供給過多」の状況となっているのですから、「授業料の引き下げ」など “学生優位の条件” を各大学が提示するなどの対策を求めることが筋です。

 「学生から選ばれない大学」を維持することはナンセンスですし、就労目的の人物に対して『留学ビザ』を乱発する大学も同様に厳格な管理・監督下におく必要があるはずです。

 少なくとも、今年度だけで700人もの留学生が退学・失踪する東京福祉大学の件は大問題ですし、氷山の一角として他大学にもチェックを入れるべき事案と言えるでしょう。出入国管理上の案件として厳しい対処をする必要があると言えるのではないでしょうか。