森保監督の “秘蔵っ子” 浅野拓磨が窮地、買取義務の発生を嫌ったハノーバーが起用拒絶で今季終了へ

 スポニチによりますと、ドイツ・ハノーバーに所属するサッカー日本代表の浅野拓磨選手がチームの事情で今シーズンの出場が絶望的になっているとのことです。

 「買取義務の発生を所属先のチームが嫌ったこと」が理由ですが、これ自体は珍しいことではありません。ただ、日本人選手がその影響を受けることは(おそらく)初めてであることから、騒ぎになっているだけと考えられます。

 

 ハノーバーのFW浅野について、クラブのキント会長がドル監督に文書で試合に起用しないよう指示を出したと、6日付のドイツ紙ビルトが報じた。

 アーセナルから期限付き移籍している浅野が10試合以上に先発した場合、ハノーバーに300万ユーロ(約3億7500万円)で買い取り義務が発生する契約条項があるという。浅野は現在9試合に先発しており、キント会長は「ハノーバーにプラスとなる決定が必要」と意図を説明。

 クラブ経営の視点では「浅野選手の買取義務が生じること」は損失と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、浅野選手が今シーズンにハノーバーで見せているパフォーマンスと買取金額が見合っていないからです。

 そのため、経営陣から「浅野を使うな」との指示が出るのは当然のことなのです。

 

浅野選手の保有権はアーセナルが持つが、イングランドの労働ビザを得ることはほぼ不可能という現実がある

 浅野選手が置かれている状況を整理すると、次のようになります。

  • 2016年夏に2020年夏までの契約でアーセナルに加入
  • イングランドの『労働ビザ』を取得できないため、ドイツに武者修行へ
  • 2018/19 シーズンはハノーバーに期限付き移籍
    • 10試合の先発で買取義務が発生
    • 金額は300万ユーロ
  • プレミアリーグは契約最終年の選手を期限付き移籍に出すことは不可

 まず、浅野選手が(保有権を持つ)アーセナルでプレーするには『イングランドの労働ビザ』が不可欠なのですが、「代表チームでの出場数」が足りないため、ビザが発給される可能性はゼロです。また、“特例” を使うだけの移籍金も費やされていないため、こちらの可能性もないと言えるでしょう。

 そのため、外国人選手の登録に障壁が少ないドイツ・ブンデスリーガに期限付き移籍をしていたという経緯があるのです。

 

“0得点0アシストの FW” を最下位に沈むクラブが300万ユーロを費やして獲得することはない

 次に、浅野選手の移籍先であるハノーバーの状態も思わしくありません。

  • 残り6試合(= 28節終了時)で最下位
  • 入れ替え戦までの勝点差は7
  • 浅野選手は0得点0アシスト

 ハノーバーは直近のリーグ戦で大型連敗が続き、降格がかなり現実味を帯びています。残り6試合で最低でも勝点差7をひっくり返すことが要求されているのですから、“奇跡” が必要な状況と言えるでしょう。

 つまり、チームは「来シーズンは2部を戦う」という前提で編成を行う必要が生じているのです。

 浅野選手が攻撃陣を牽引するパフォーマンスを示しているなら、300万ユーロを支払ってでも獲得する価値はあります。しかし、リーグ戦での成績は「0得点0アシスト」なのですから、買取義務を発生させることは阻止せざるを得ないでしょう。

 なぜなら、買取義務の発生は「1年でブンデスリーガに返り咲くために必要な選手を獲得するための予算」に影響が出るのですから、ハノーバーがアーセナルを満足させるクラブ経営をする “義理” は微塵もないのです。

 

イタリア代表のエル・シャーラウィ選手も「買取義務の発生」を嫌われて干された経験を持っている

 「買取義務の発生をクラブから嫌われて干される」というケースはそれほど珍しくありません。「パフォーマンスが低調だった」、「設定された移籍金が高すぎる」、「新監督のスタイルに合致しない」など様々な理由で “干される” ことになる選手はいます。

 代表例をあげれば、2015/16 シーズンにモナコ(フランス)へ期限付き移籍をしたイタリア代表のエル・シャーラウィ選手でしょう。

 モナコではリーグ戦15試合に出場しましたが、0得点0アシストと散々な内容で「買取義務は発生させない」と通告され、12月上旬から干される形となりました。そのため、エル・シャーラウィ選手の保有権を持っていたミランは期限付き移籍を切り上げ、ローマに貸し出すという対処をしています。

 ちなみに、エル・シャーラウィ選手はローマに加入した後半戦で8得点2アシストと復調していますので、当時のモナコが水に合わなかっただけと言えるでしょう。つまり、浅野選手も現時点で腐る理由はどこにも存在しないのです。

 

 浅野選手は FW ですから、ゴールやアシストと言った得点に直結する仕事を継続して行うことで捲土重来を期すことは十分に可能です。伸び悩みを見せている現状を打破することができるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。