自民党、「反維新」を掲げて戦った大阪で思いっきりお灸を据えられる

 4月7日に投開票が行われた2019年の統一地方選で、大阪ダブル選挙で維新の会が勝利したと NHK が伝えています。

 「大阪維新の会が勝つ」ことは前評判どおりの結果であり、サプライズとは言えないでしょう。ただ、「維新が勢力を予想以上に盛り返した」という点は留意する必要があります。

 特に、『反維新』をいう “有権者に政策と見なされない政策” を掲げて野合に走った大阪自民党は根本的に組織運営を見直さなければならないと言えるでしょう。

 

 7日に投票が行われた大阪府知事選挙と大阪市長選挙は、ともに、いわゆる「大阪都構想」の推進を訴えた大阪維新の会が制しました。一方、あわせて行われた大阪府議会議員選挙では、大阪維新の会が過半数を獲得することが確実となったものの、大阪市議会議員選挙では、過半数の議席を獲得できないことが確実となっています。

 『維新』対『反維新』の構図になったのです。「与党が掲げた政策に反対する」という方針では有権者がそっぽを向くのは国会で証明済みのことです。

 これを大阪でやってしまった自民党の姿勢は問題ありと言わざるを得ないでしょう。

 

大阪では維新が2019年の統一地方選で一人勝ち

 大阪で行われた知事選・市長選での得票は次のとおりです。

  • 大阪府知事選(投票率:49.49%)
    • 当:吉村洋文(維新、2,266,103票)
    • 落:小西禎一(自公、1,254,200票)
  • 大阪市長選(投票率:52.70%)
    • 当:松井一郎(維新、660,819票)
    • 落:柳本顕(自公、476,351票)

 大阪維新がダブル選でそれぞれ力を見せつけたと言えるでしょう。「政策の信を問う」という形ではなく、「維新が掲げる都構想に反対する」というだけで結集した “野合” に有権者からの支持が集まらないのは当然です。

 この傾向は同時に行われた大阪府議会選・大阪市議会選でも現れています。

表:2019年統一地方選での主な政党の獲得議席数
大阪府議会
(定数:88)
大阪市議会
(定数:83)
大阪維新 51(+11) 40(+5)
自民党 15(-9) 17(-2)
公明党 15(±0) 18(-1)
共産党 2(±0) 4(-5)
立憲民主党 1(+1) 0(±0)

 府議会選では自民党が議席を落とし、市議会選では共産党が議席を落としました。その分を維新に取られたのですから、両政党が組んだことは「失敗」と言わざるを得ないでしょう。

 したがって、党勢を回復するのは抜本的な改革が必要な状況になっているのです。

 

『自党の政策』を掲げ、「対立する与党の内容よりもマシ」と有権者に思わせることが重要

 大阪で自民党が惨敗したのは「国会で野党がやっている有権者を白けさせる政策方針を大阪でやっているから」でしょう。『反与党』や『言いがかり』で支持率が伸びないのは国会で証明済みです。

 そのため、大阪維新の党が掲げる政策と張り合うことができる水準の『大阪自民の政策』を立案し、有権者の理解を得ることが重要なのです。具体的には以下の点を踏まえるべきです。

  • 理解を示すべき維新の方針:
    • 「大阪(の経済)を元気する」という政策方針
    • 組合などが抱える “利権” への厳しい姿勢
      → ヤミ専従や同和政策など
  • 批判の対象となり得る維新の政策:
    • 都構想
      →「二重行政の解消」が目的なら、大阪市が政令指定都市を返上しても実現可
    • 大阪府市エネルギー戦略会議

 「大阪を元気する」という政策方針に反対することは有権者に苦しい生活を強いることと同じであり、方針には理解を示さなければなりません。反対する場合は「この政策の方がより効果が得られる」という代案を示せなければ、有権者には無責任に映ることでしょう。

 また、“利権” に対して厳しい姿勢を採る必要もあります。ヤミ専従や同和など、マスコミが触れようともしない問題は以前として存在しているのです。「不公平は許さない」との姿勢は鮮明にしなければ、こちらも支持が伸ばす要因にはなり得ないと言えるでしょう。

 

経済政策に矛盾を抱える大阪維新を攻撃することは難しくない

 では、大阪維新の会をどのように攻撃するかと言いますと、「経済政策の矛盾」を指摘すれば良いのです。決して難しいことではありません。

 維新には『大阪府市エネルギー戦略会議』という “黒歴史” が存在します。ここにスポットを当てれば良いのです。

  • 「大阪を元気にする」と言っているが、維新は関電に『反原発』を要求
  • 『反原発』は電気代上昇を招くため、経済状況を悪化させる

 要するに、大阪維新は「言っていることとやっていることが異なる嘘つきで庶民の敵」と言える根拠があるのです。電気代が高騰する「反原発・再生エネ促進」を推進しているのが『大阪府市エネルギー戦略会議』であり、“ケチな大阪人” に訴えるべき点と言えるでしょう。

 つまり、どの政党にも維新を政策的に批判できる根拠を持っている状態なのです。

 ただ、「バラマキ型の社会保障充実」や「利権確保」という従来政策では有権者に響くことはないでしょう。『新たな成長政策』を打ち出すことが大前提であり、それが可能となる政党の運営体制が構築されていなければ、党勢は低迷することは避けられないと考えられます。

 

 自民党は谷垣禎一氏のような政治家を大阪府連のトップに据える必要があると言えるでしょう。“変わらなければならない点” と “変えてはならない点” が混在していることが現状で、“変わらなければならない点” が色濃く出ていることが問題なのです。

 政治離れが深刻化する前に歯止めをかけることが重要であり、大阪で苦戦し続けている自民党が党内から変革することができるのかが問われていると言えるのではないでしょうか。