ムン・ジェイン大統領、米韓首脳会談を前に「ケソン工業団地の操業再開強硬論者」を統一部長官に任命する

 韓国・朝鮮日報によりますと、ムン・ジェイン大統領が韓国統一部の長官にキム・ヨンチョル(金錬鉄)氏を任命したとのことです。

 内閣改造のニュースなのですが、キム氏の政治姿勢が「ケソン工業団地の操業再開」の強硬派であることが問題と言えるでしょう。要するに北朝鮮への制裁解除を声高に訴えている人物が統一部のトップに就任したのです。

 「『北朝鮮包囲網』の枠組みに加わる気はない」と行動で示しているのですから、韓国への対応は否が応でも変化させなければならないのです。

 

 長官不適格を理由に国会人事聴聞報告書が採択されなかった韓国統一部(省に相当、以下同じ)の金錬鉄(キム・ヨンチョル)長官と中小ベンチャー企業部の朴映宣(パク・ヨンソン)長官をはじめとして、行政安全部の陳永(チン・ヨン)長官、文化体育観光部の朴良雨(パク・ヤンウ)長官、海洋水産部の文成赫(ムン・ソンヒョク)長官に文大統領から任命状と花束、そしてそれぞれへの指示事項が手渡された。

 (中略)

 まず文大統領は金錬鉄長官に「大きく期待している」とした上で、南北関係と米朝関係における「善の循環」を求めた。これに対して金長官は「(大統領が)強調しているのは『平和こそ経済』という点だ」とした上で「最善を尽くしたい」と意欲を示した。

 この閣僚人事で改めて示されたのは「ムン・ジェイン政権の最優先事項は『北朝鮮に対する宥和政策』である」という点でしょう。

 キム・ヨンチョル氏が統一部長官に指名されたことに対し、(保守系の)野党などは「反対」をし、議会での承認は得られませんでした。そのため、ムン大統領が強行任命に踏み切ったのです。メッセージ性の強い行為と言えるでしょう。

 

4月10日に米韓首脳会談を控える中で、“従北派” の統一部長官を任命したムン・ジェイン大統領

 ムン・ジェイン大統領の政治的手腕に首を傾げざるを得ないのは4月10日に米韓首脳会談が控えているという点です。「ケソン工業団地の操業再開」に不快感を示すアメリカを “逆なで” する行為をしているのですから、自殺行為に近いものがあると言えるでしょう。

  • 2月28日:米朝首脳会談が決裂(ベトナム・ハノイ)
  • 3月8日:キム・ヨンチョル氏が統一部長官に指名
    → 韓国議会の野党が反発する
  • 3月26日:「金剛山観光とケソン工業団地の操業再開の話をするならアメリカに来るな」と言われたとの報道が韓国で出る
  • 4月8日:ムン大統領がキム・ヨンチョル氏が統一部長官に強行任命
  • 4月10日:アメリカで米韓首脳会談(予定)

 『北朝鮮からの信頼』を維持するために奔走しているとの表現が当てはまると言えるでしょう。

 周辺国や関係当事国が「北朝鮮への制裁が必要」との認識を持つ中で、韓国だけが「制裁緩和」に向けて動いているからです。キム・ヨンチョル氏は「ケソン工業団地の操業再開論者」ですし、「北朝鮮への制裁は不要」との立場を採っています。

 したがって、制裁維持の姿勢を示すアメリカへの挑発を行った状態で首脳会談を迎えることになると考える必要があると言えるでしょう。

 

北朝鮮(= キム・ジョンウン)のご機嫌取りしか頭にないムン大統領

 ムン・ジェイン大統領が「ケソン工業団地の操業再開」や「金剛山観光」に執着している理由は「キム・ジョンウン委員長がそれらの再開を無条件で行いたいと言及したから」でしょう。

 新年の会見でキム委員長がそのように発言したのですから、親北派のムン・ジェイン大統領が奔走するのは当然です。なぜなら、韓国政府の最優先事項が『北朝鮮への宥和政策の推進』なのですから、対米・対日・対中の優先度は相対的に低くなるのです。

 韓国が周辺の大国からの影響を受けないだけの国力を持っているなら、自国の国益のみを追求する外交政策を敢行したとしても、影響が限定的となるでしょう。

 しかし、韓国の国力では非現実的です。しかも、韓国政府が求める制裁緩和は “抜け駆け” であり、中国やロシアを出し抜く行為に他なりません。

 北朝鮮北部で陸続きになっている中国やロシアは制裁に(名目上とは言え)協力する中で、南部で陸続きになっている “アメリカの同盟国” である韓国が「制裁破り」を実際に行おうとするのであれば、ほぼすべての周辺国から恨みを買うことは避けられません。

 この現実を軽視し、北朝鮮のみしか眼中ない政権運営をするムン・ジェイン大統領の姿勢は問題だと言わざるを得ないでしょう。

 

「韓国を日米の陣営に引き止めるべき」との主張も無駄であることを示している

 韓国政府は政治的に「北朝鮮との一蓮托生」を選択しているのです。したがって、日本やアメリカといった『海洋勢力』側の陣営に引き止めることは難しいと言えるでしょう。

 なぜなら、韓国側に留まる意志が見えないからです。

 これまでは「韓国が中国や北朝鮮に傾倒しないように」との考えで、韓国の “要望” を実現するために日本は労を惜しみませんでした。しかし、結果は「自分たちの要求が満たされて当たり前」との韓国の儒教的価値観を確固たるものにしただけで徒労に終わりました。

 コストを費やした分の価値が得られないことが明確になったのですから、従来の価値観を見切る必要があります。これが遅れるほど損失分は大きくなるのですから、否が応でも変わらなければならないのです。

 基本条約の内容を遵守する行動をしない現在の韓国ムン・ジェイン政権に理解を示すほど、日本の有権者からの支持を失うことに直結するとの現実を認識しなければなりません。ダブルスタンダートで押し通すことは不可能な時代になっていることを自覚する必要があると言えるのではないでしょうか。