「首脳会談での日本の譲歩」による関係改善を期待する韓国に対し、日本政府筋から「首脳会談見送り」の情報が流れる

 共同通信によりますと、安倍首相は6月に大阪で行われる G20 などの機会を利用してムン・ジェイン大統領との首脳会談を見送る方向で検討しているとのことです。

 首脳会談をすることで得られる効果が日本側には存在しないのですから、韓国以外の国との首脳会談を行った方が合理的です。「韓国を甘やかさない」という意味でも、現時点では「見送り」を選択すべきだと言えるでしょう。

 

 安倍晋三首相は6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会合の際、韓国の文在寅大統領との個別の首脳会談を見送る方向で検討に入った。複数の政府関係者が13日、明らかにした。韓国人元徴用工の対日賠償請求問題などを踏まえ「文氏に冷え込んだ日韓関係を改善する意思が感じられず、建設的な対話が見込めない」(官邸筋)との判断に傾いた。

 首脳会談を行う前提として、「実務者による協議」が重要になります。ここでの交渉で両者の方向性が一致し、建設的な対話ができれば、首脳会談が意味を持つことになるのです。

 最近は報道が出ていませんが、北方領土に関する日露間の交渉が具体例と言えるでしょう。トップダウンの傾向が強い国であっても、実務の段階で拗れた問題は首脳間だけで解決されることはないと言えるのです。

 

首脳会談で「安倍首相からの助け船」を期待する韓国側

 日韓首脳会談を期待しているのは韓国側です。これは日経新聞の取材に応じたチョ・ヒョン韓国外務省第1次官が言及していますし、次のようなメリットがあるからです。

  • 首脳会談後に「未来志向の二国関係を築くことで合意した」と(勝手に)発表できる
    • 日本側が「関係改善に一層の努力をする」と表明してくれた
    • 「政治と経済は別」というツー・トラックを推進する

 対北朝鮮外交や経済政策などで結果を残せていないムン・ジェイン政権は行き詰まっている状況です。しかし、現状のままで日韓首脳会談を漕ぎ着けることができれば、上述の成果を手にすることができるのです。

 首脳会談を希望するのは当然と言えるでしょう。

 しかし、日本側には何のメリットもありません。むしろ、日本だけがマイナスを被ることになります。“助け船” を出す価値が日本政府には何も存在しないのですから、首脳会談をする意味は皆無と言わざるを得ないのです。

 

「韓国政府の虚偽発表」を指摘しても、日本側が裏切り者扱いされるだけ

 「首脳間での会談は重要」と主張する人々もいるでしょう。しかし、事実と異なる発表を平気で行った前歴がある韓国政府と会談を行うこと自体がそもそもリスクなのです。

  1. 韓国政府が「安倍首相も一定の理解を示した」とメディアに発表
  2. 日本政府が「事実と異なる」と否定
  3. 韓国政府関係者の談として「日本国内の反発で日本政府が方針転換した」と韓国メディアが報じる
  4. 日本メディアが韓国側の見解として転電

 要するに、「言ったもの勝ち」の状況を韓国が得ることになるのです。対応を迫れている立場にある者に “自らの詭弁を展開できる舞台” を準備することは愚策と言わざるを得ません。

 まずは韓国政府に「両国関係が抱えている問題にどう対処するのかを示せ」と迫ることが日本政府の最優先事項なのです。

 

自衛隊機に対する火器管制レーダー照射問題も横たわったままであることを忘れてはならない

 それから、日韓関係では「韓国海軍による自衛隊機への火器管制レーダー照射問題」も忘れてはなりません。韓国側の苦し紛れの言い訳をしたあげく、有耶無耶なままで幕引きという扱いになっているからです。

 この件については来日予定のムン・ジェイン大統領に対し、マスコミが「韓国の文民統制はどうなっているのか」と正面から追求すべき案件と言えるでしょう。

 「韓国に対する日本の一方的な配慮」を促すような提灯記事を書いたところで、マスコミの存在意義は薄れる一方です。

 これは韓国政府により近い距離にいる韓国メディアが日本語の翻訳記事を出した時点で日本の既存メディアは太刀打ちできなくなるからです。記事の内容で勝負できない時点で衰退するは不可避であり、そのことを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

 「日韓首脳会談の見送りを検討」という日本政府筋からの情報は “観測気球” の傾向があります。それを踏まえた上で、見送った場合に日韓の両国にどのような事態が起きると想定できるのかを中立的な視点で論じるメディアがあっても良いと言えるのではないでしょうか。