広島カープが不振に陥った原因は「投手陣と守備陣の劣化を攻撃陣がカバーできなくなった」から

 セリーグを3連覇した広島カープが2019年シーズンは開幕から5カード連続で負け越すなど、不振に陥っています。

 丸選手が FA で巨人に移籍したことで攻撃陣の迫力が低下したことは否定できないでしょう。しかし、それ以上に投手陣や守備陣の劣化に歯止めがかけることができていない状況が改善点だと言えるでしょう。

 

3連覇が始まった2016年は投手陣も守備陣もリーグ屈指の好成績だった

 強力打線が注目されがちな広島カープですが、3連覇が始まった2016年シーズンに目を向けると、投手陣や守備陣の成績も秀でていることが確認できます。

表:カープのチーム守備成績(2019年4月14日現在)
防御率 与四球 被HR 失策
'16年 3.20
(3.48失点/試)
418
(2.92個/試合)
101
(0.71本/試合)
67
(0.47個/試合)
'17年 3.39
(3.78失点/試)
476
(3.33個/試合)
92
(0.64本/試合)
71
(0.5個/試合)
'18年 4.12
(4.55失点/試)
535
(3.74個/試合)
138
(0.97本/試合)
83
(0.58個/試合)
'19年 4.09
(5.33失点/試)
63
(4.2個/試合)
11
(0.73本/試合)
19
(1.26個/試合)

 相手に四球・本塁打・エラーを与えず、1試合での失点数は「4点未満」でした。ところが、被本塁打の項目を除き、3連覇をする中で失点(防御率)・与四球数・エラー率は年々悪化していたのです。

 2018年は1試合平均で 4.55 失点でしたから、打線からの擁護が強烈だったと言えるでしょう。

 

1試合平均で5得点を計算できる打線は “例外” というべき存在

 カープが3連覇できた大きな要因は「打撃戦で勝ち切れる打力を有していた」ことが大きいと言えるでしょう。なぜなら、1試合平均で5点を計算できたからです。

表:カープのチーム打撃成績(2019年4月14日現在)
四球 本塁打 長打率 併殺打
2016年
(4.78得点/試)
500
(3.5個/試合)
153
(1.07本/試合)
.421 85
(0.59本/試合)
2017年
(5.15得点/試)
511
(3.57個/試合)
152
(1.06本/試合)
.424 95
(0.66本/試合)
2018年
(5.04得点/試)
599
(4.19個/試合)
175
(1.22本/試合)
.431 85
(0.59本/試合)
2019年
(3得点/試)
48
(3.2個/試合)
13
(0.87本/試合)
.323 10
(0.67本/試合)

 得点力を高めるためには「出塁率の高い打者を並べ、強打者と勝負せざるを得ない状況を作る」ことが重要です。

 カープで言えば、田中選手と菊池選手の1・2番コンビが出塁役。丸選手と鈴木選手が強打者の役割を担っていました。併殺打も少なく、理想的な上位打線が機能していたため、投手陣の成績が悪化する状況でもカバーできていたことが連覇の理由と言えるでしょう。

 しかし、丸選手の離脱でチームのバランスが完全に崩れてしまったのです。

 

リーグ MVP を受賞した選手が抜けた打線に「1試合平均5得点」を期待することは非現実的

 丸選手が抜けた2019年のカープ打線に「(過去2シーズンと同じ)1試合平均5得点超」を期待するのは無謀です。2年連続リーグ MVP を獲得した選手が抜けた穴はそう簡単には埋まらないからです。

 つまり、カープ打線は「1試合平均4点台後半の得点力」が現実的な目標でした。

 そうなると、2018年シーズンに「1試合平均 4.55 失点」だった投手陣と守備陣が「1試合平均の失点数を4点台前半」にすることがノルマとなります。与四球数が年々増加していましたから、これに歯止めをかけることが大きな目標だったと言えるでしょう。

 しかし、実際は2018年よりも与四球数とエラー率が悪化。その結果、防御率は2018年水準と同じであるものの、1試合平均の失点数は5点超と悪循環を招く結果となっています。

 ただ、改善点は見えているだけに効果的な改善策を監督・コーチ陣が施すことができるかが注目点になるでしょう。

 

 打線の援護が期待できるチームでは投手陣が「ビッグイニングを作らせなければ、打線が援護してくれる」と開き直ることが重要です。ヤクルト・巨人・DeNA を含め、打線が持ち味となっているチームの中でどこの投手陣が最初に割り切り始めるのかに注目と言えるのではないでしょうか。