「反差別運動をする先住民を嘲笑する悪者」に仕立て上げられた高校生、虚偽報道をした NBC にも名誉毀損で2億7500万ドルの損害賠償を起こす

 2019年1月に「アメリカの首都ワシントンにあるリンカーン記念館前で反差別運動をする先住民の男性を取り囲んで嘲笑する高校生」の映像がインスタグラムに投稿され、大きな波紋を呼びました。

 事実であれば明らかな差別問題なのですが、事実は逆でした。“先住民の男性が” 高校生に接近した上、この男性は取り囲まれておらず、男性の支援者が高校生にヘイトスピーチを浴びせていたのです。

 悪者に仕立てられた高校生は名誉毀損を理由にメディアを提訴。3番目に提訴された NBC への請求額は2億7500万ドルになっているとワシントンタイムズが報じています。

 

 Attorneys for Nicholas Sandmann filed a $275 million lawsuit Wednesday against NBCUniversal over its coverage of the Kentucky teen, accusing the network of creating a "false narrative" driven by its "anti-Trump agenda."

 The lawsuit, the third filed by the Sandmann attorneys against major media outlets, alleged that NBC targeted the Covington Catholic High School student in its reporting on his Jan. 18 encounter with Native American activist Nathan Phillips at the Lincoln Memorial.

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 Sandmann attorneys L. Lin Wood of Atlanta and Todd V. McMurtry of Fort Mitchell, Kentucky, have also sued the Washington Post for $250 million and CNN for $275 million over their coverage of the episode, and have indicated there may be more complaints.

 

先住民ネイサン・フィリップスの被害申告を鵜呑みにして報じたアメリカ・メディア

 問題の発端は CNN が「先住民男性を取り囲み、からかう高校生 動画が波紋呼ぶ」とのタイトルで報じた件です。何が問題かと言いますと、被害者だと主張するネイサン・フィリップス氏の申告内容が全くのデタラメだったのです。

  • フィリップス氏が詠唱を始めたところ、1人の高校生が近づいてきた
    → フィリップス氏が接近した
  • 高校生らに囲まれ、恐怖を感じる中で詠唱を続けた
    → フィリップス氏が囲まれた事実はない
  • 周囲にいた高校生の仲間らがはやし立てていた
    → フィリップス氏の支援者がヘイトスピーチをしていた

 要するに、事実と180度異なる真逆の内容が報じられていたのです。「裏取り」をマスコミが行っていれば、このような誤報が世に出ることはなかったはずです。

 しかし、当然の確認作業が行われておらず、無実の高校生が “世界の悪者” にマスコミによって仕立て上げられたのです。巨額の損害賠償が請求されるのは当然のことと言えるでしょう。

 

悪者にされた高校生はマスコミに対し、1社あたり2億5000万ドル超の損害賠償を求めて提訴

 悪者に仕立てられた高校生ニコラス・サンドマン氏は代理人弁護士を立て、名誉毀損による損害賠償訴訟を提訴。NBC が3社目となりました。提訴されているマスコミと請求額はそれぞれ以下のとおりです。

  1. ワシントン・ポスト:2億5000万ドル
  2. CNN:2億7500万ドル
  3. NBC:2億7500万ドル (New)

 プロレスラーのハルク・ホーガン氏がゴシップサイト『ゴーカー』を「プライバシーの侵害」で訴えた際、1億4000万ドルの損害賠償が認められました。「1アクセスに付き、〇ドル」という形で賠償額が算出されており、この形がサンドマン氏の訴訟でも適用されるかが焦点になるでしょう。

 サンドマン氏に対する報道の内容は明らかな虚偽ニュースであり、名誉が著しく毀損されたことは明らかだからです。これを「報道の自由」を掲げて野放しにしていることは大きな問題と言わざるを得ないからです。

 

「フェイクニュースを流したメディアに対して損害賠償請求が行われたこと」に対する自社の見解を日本のマスコミは示すべき

 「報道の自由」を主張するマスコミはアメリカのメディアがサンドマン氏から損害賠償訴訟を起こされた件に対する自社の見解を発表すべきでしょう。なぜなら、日頃からマスコミが「言論の萎縮を招く」と批判していることが現実に起きているからです。

 ただ、ほとんどのマスコミは見て見ぬ振りをすると予想されます。

 これは「メディアの誤報」が原因で起きた損害賠償訴訟であり、同業者の肩を持ちにくいことが理由です。「言論の萎縮を招く」と擁護すれば、「デマを流しておきながら開き直るのか」と火に油を注ぐ結果になることは目に見ています。

 記事を配信する前の裏取り作業すら行っていない “低レベルのメディア” を擁護することで生まれる価値はありません。最低でも苦言を呈し、自社で同様の失態を招かないよう体制を見直すことが要求されていると言えるでしょう。

 

 日本でもマスコミによって名誉毀損がされた場合は同様の損害賠償が認められるべきでしょう。そのためには各媒体に応じた賠償額の算出方法が定められているべきです。

 新聞なら発行部数、テレビなら視聴率と配信回数、インターネットならアクセス数という形で算出することが一般的になるべきと言えるのではないでしょうか。