深刻な食糧難に見舞われていると伝えらえた北朝鮮、短距離弾道ミサイルを発射して自ら梯子を外す

 5月4日に北朝鮮が日本海に向けて複数の飛翔体を発射したと NHK が報じています。NHK は「飛翔体」とオブラートに包んだ表現をしていますが、北朝鮮は「戦術誘導兵器」と公式に発表しています。

 また、発射のは「ロシアのイスカンデルを模した兵器」であることが確認できるのです。「深刻な食糧難」を理由に北朝鮮への支援を訴えた WFP (= 国連世界食糧計画)のメンツを完全に潰した愚行と言わざるを得ないでしょう。

 

 北朝鮮は4日、日本海に向かって複数の飛しょう体を発射し、短距離弾道ミサイルに似た兵器が含まれていたという指摘が出ています。仮に飛しょう体が弾道ミサイルだった場合、国連の制裁決議に違反する可能性があります。

 これについてポンペイオ国務長官は5日、FOXテレビに出演し、「飛しょう体は数回発射され、短距離だった」と述べ、短距離弾道ミサイルの可能性は排除できないという認識を示し、今後、詳しく分析するとしています。

 

北朝鮮が発射したのは「イスカンデルを模したミサイル」

 北朝鮮が発射したのはロシア製の短距離弾道ミサイル『イスカンデル』を模した兵器であることは確定的です。

 『北朝鮮版イスカンデル』は昨年2月に行われた軍事パレードで “お披露目” されていましたが、実際に発射されたのは今回が初めてと見られています。

 『イスカンデル』は「ロシア軍の現役短距離弾道ミサイル」で、精密誘導能力を有する主力兵器です。これを模した兵器を北朝鮮が発射したのですから、「弾道ミサイルの発射技術を用いた発射行為を禁ずる」という国連決議に違反することは明らかと言えるでしょう。

 そのため、北朝鮮に “甘い顔” をすること自体が論外となるのです。

 

WFP (=国連世界食糧計画)による「北朝鮮への食糧支援」の呼びかけに冷水を浴びせる行為

 北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射する前日に、スイス・ジュネーブで WFP (= 国連世界食糧計画)が「北朝鮮の深刻な食糧難」を理由に支援を呼びかけていました。ところが、ミサイル発射で逆効果になったと言えるでしょう。

 国連世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)は3日、今年3~4月に北朝鮮で行った実地調査の結果、北朝鮮の食糧事情がここ10年で最悪となっていると発表した。

 (中略)

 3日、ジュネーブの国連欧州本部で記者会見したWFPの報道官は「人道支援がなければ、さらに何百万もの人が飢えに直面する」と述べた。WFPの北朝鮮事業はカナダ、フランス、スウェーデン、スイス、ロシアなどの援助を受けているが、資金難に陥っている。

 WFP は「人道支援」を根拠に「北朝鮮の食糧難を改善するための資金拠出」を呼びかけています。

 ただ、独裁国家である北朝鮮に資金援助をしたところで、北朝鮮国民に支援が行き渡らないことは明らかです。そのため、北朝鮮の脅威とは無関係の国しか資金拠出に前向きではないのです。

 北朝鮮は食糧事情が思わしくない中でも、周辺国を恫喝するために弾道ミサイルの開発・発射を強行して来ました。この事実がある以上、国レベルで支援を表明する “お花畑国家” が現れることは考えにくいと言わざるを得ないでしょう。

 

「射程距離 400km の弾道ミサイルが発射された」という事実を韓国はどう直視するのか

 今回、北朝鮮が発射した短距離弾道ミサイルに対して厳しい姿勢を採らなければならないのは韓国でしょう。「国連決議」と「2018年のピョンヤン宣言」に違反する可能性が極めて高いからです。

 射程距離が約 400km ありますし、韓国と北朝鮮の国境線にある DMZ (= 非武装地帯)から発射されることになれば、韓国全土のほとんどが射程圏になるからです。

 日本のマスコミのように『飛翔体』などと誤魔化すようでは国防に問題が生じることになります。北朝鮮を徹底的に擁護してきたムン・ジェイン政権にとって逆風の原因になっていることは明らかなのです。

 非核化を行っているとは言えず、弾道ミサイルによる周辺国への恫喝を止める気配がないのが北朝鮮なのです。「段階に応じて制裁を解除することは馬鹿げた判断」と言わざるを得ないでしょう。北朝鮮の行為に対し、厳しい姿勢を見せることができない政党や政治家は要注意と言えるのではないでしょうか。