横審の審判部への苦言は当たり前、説明が下手すぎる阿武松親方のためにも「説明マニュアル」を作成すべきだ

 「横綱審議委員会が “異例” の審判への物言いを付けた」とスポーツ報知が報じています。

 批判の対象は「阿武松親方(元関脇・益荒雄)の説明」でしょう。なぜなら、審判長を務めた際の説明が他の親方と比較してあまりに下手すぎるからです。

 現状を改善できないなら、審判長の座を辞すべきです。

 

 日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会の定例会合が27日、東京・両国国技館で行われ、夏場所中の取組で物言いがついた際、審判長の勝負説明が不明瞭だったとして苦言を呈した。

 11日目の朝乃山ー佐田の海戦では、阿武松審判長(元関脇・益荒雄)が「朝乃山のかかとが先に出ており、朝乃山の勝ち」と言い間違い、館内からブーイングが起きた例などがあった。

 矢野弘典委員長(産業雇用安定センター会長)は「大事な場面がいくつかあった。もっと分かりやすく、説明の仕方の問題。審判の権威、信頼を高めてほしい」と土俵下へ異例の“物言い”をつけた。

 

「阿武松親方の説明」と「藤島親方の説明」には雲泥の差がある

 大相撲では物言いが付いた際に「勝負審判による協議」で結論が出されます。正面・審判長を務める親方が「協議の結果を場内に説明する責務」を担っているのですが、説明能力に著しい差が生じていることが問題なのです。

 “説明の内容が分かりやすい親方” の代表例は藤島親方(元大関・武双山)でしょう。

  1. 行司軍配が上がった理由に言及
  2. 物言いの内容を説明
  3. 協議の結果を発表
  4. 「どちらの力士が勝ったのか」の結論を述べる

 なぜなら、藤島親方の説明は上述の項目を満たしており、観客や視聴者にとって分かりやすいものだからです。

 藤島親方なら「行司軍配は朝乃山を優位と見ましたが、朝乃山の体が先に落ちているのではないかと物言いが付き、協議した結果、佐田の海のかかとが先に出ており、行司軍配どおり朝乃山の勝ちといたします」と説明していたでしょう。

 しかし、阿武松親方はこれができないのです。日本相撲協会の理事であり、審判部長でもある阿武松親方が職責を果たせていない現状は重く受け止めなければならないと言わざるを得ないでしょう。

 

審判長を務める親方用の『説明マニュアル』を作成し、それに基づく説明を徹底すべきだ

 令和元年5月場所・11日目の1番での説明ミスだけで阿武松親方を批判するのは間違いと言えるでしょう。ですが、阿武松親方の説明が良くないのは好角家は認識しているはずです。

 物言いが付いた際、阿武松親方は「東方(または西方)力士の勝ちといたします」との説明を何度かしています。

 「説明時に力士名で述べられないケース」が散見されるのは審判長として力量不足が問われる状況です。力士が東西どちらの方から登場するのかは日によって変わります。また、手元にカンニングペーパーを持っている審判の説明としては不十分と言わざるを得ません。

 説明理由が不十分では審判の威厳低下を避けるのは不可能です。それを避けるためにも『説明用のテンプレート』を作成しておく意味は大きいと言えるでしょう。

 

時間がかかり過ぎた13日目の栃ノ心と朝乃山の物言いによる協議も改善の余地がある

 また、物言いによる協議の時間がかかり過ぎたことも反省材料にしなければなりません。6分ほどの協議時間は長すぎですし、観客を待たせていることを勝負審判は自覚する必要があります。

 「行司軍配を覆す十分な根拠を確認できなければ、最初の判定を維持する」との原則を徹底し、協議をスムーズに進行させるべきだからです。

 勝負審判(の1人)が「見た」と強弁しても、スローで繰り返し確認することができる映像がないなら、映像を結論の根拠とすべきです。勝負審判の主張が優先されるなら、映像室との確認など「無駄な作業」に他ならないでしょう。

 角度が問題になるなら、カメラの設置場所を工夫すれば済む話です。難しい話ではありませんし、客の入りが少ない午前中に行われる幕下などの取組でカメラテストを行うことで最適な設置場所を見つけることはできるはずだからです。

 

 力士が土俵上でどれだけ優れた内容の取組を見せても、勝負審判の雑な説明でぶち壊しになる可能性は十分に存在するのです。その認識を持ち、対応をする必要が日本相撲協会にはあると言えるのではないでしょうか。