毎日新聞、5月28日付の社説で「北朝鮮の短距離弾道ミサイルは日本にとって大きな脅威」と確認不足の雑な主張を展開する

 毎日新聞が5月28日付の社説でトランプ大統領を国賓としてもてなしたことに対し、「長期の国益にかなうのか」と批判しています。

 どういった論評をするのかは個人の自由ですから、「良好な日米関係」に批判的な新聞社が存在しても問題ではありません。しかし、社説に事実誤認の内容が含まれている点については厳しい批判を受けるべきことと言わざるを得ないでしょう。

 

毎日新聞が5月28日に掲載した社説

 毎日新聞がトランプ大統領の来日に関して発表した5月28日付の社説で問題なのは以下の部分です。

画像:5月28日付の社説

 会談では、北朝鮮問題も協議した。懸念されるのは、北朝鮮が今月上旬に短距離弾道ミサイルを発射したことについてトランプ氏が問題視しない姿勢を示していることだ。

 決裂した2月のハノイでの首脳会談後、米朝関係は足踏みしている。失敗との批判を招かぬよう対話路線を維持したいのだろう。

 しかし、あらゆる弾道ミサイルの発射を禁止した国連安全保障理事会決議に違反するのは明白だ。なにより、短距離弾道ミサイルは日本にとって大きな脅威である。

 首相は対北朝鮮政策について「日米の立場は完全に一致している」と強調した。日本への直接の脅威をめぐる米国との危機認識の共有はできているのだろうか。

 この社説で問題なのは「短距離弾道ミサイルは日本にとって大きな脅威」と述べている部分です。なぜなら、この部分が事実と異なるからです。

 

『北朝鮮が5月上旬に発射した短距離弾道ミサイル』の射程距離では日本に届かない

 一般的な『短距離弾道ミサイル』の射程距離は 800〜1000 km です。しかし、“今月上旬に北朝鮮が発射した短距離弾道ミサイル” は『ロシアのイスカンデル型』です。

 本家イスカンデルの射程距離は推定 400km。命中精度を捨てて距離重視で飛ばせば 500km 弱は期待できるかもしれませんが、現実には「長くても 400km 強」と言えるでしょう。

 そうなると、非武装地帯(= DMZ)から発射しても、対馬に届くかは極めて微妙です。

 5月に発射された短距離弾道ミサイルで最も飛んだ距離が 420km。『日本には届かない兵器』に対して「大きな脅威」と社説で言い切ってしまう毎日新聞の姿勢は問題と言わざるを得ないのです。

 

 大手新聞社には「校閲」があるのですから、きちんと機能していれば社説に含まれる矛盾などを事前チェックで見つけることは難しくないはずです。

 「結論優先」で論理の破綻に対して見て見ぬ振りをしているから、情報源を多様化しているデジタル・ネイティブ世代を中心に読者離れを引き起こしているのでしょう。新聞社の知的レベルを知らしめるための絶好の社説になっていると言えるのではないでしょうか。