18歳を迎えた久保建英、関係者が「フリーでの海外移籍」に向けたリークを積極的に行い始めたことはマイナスだろう

 サッカー日本代表に選出された久保建英選手が6月4日に18歳の誕生日を迎え、居住国以外への移籍が可能になりました。

 「複数の強豪クラブが獲得に興味を持っている」との関係者の話を NHK が伝えていますが、移籍金がかからないフリーでの海外移籍は良いとは言えないでしょう。なぜなら、“加入後” に選手が不利益を被るリスクが大きいからです。

 

 久保選手は4日、誕生日を迎えて18歳となり、年齢でFIFAが定める条件を満たし海外クラブへの移籍が可能となりました。

 久保選手をめぐってはFC東京が残留を要請する一方、海外の複数の強豪クラブが獲得に興味を持っているということで、将来性豊かな逸材をめぐる今後の動向が注目されます。

 

18歳になったことで「居住国外への移籍」が可能になった

 サッカー選手の移籍には「契約解除金(= 移籍金)」が絡むため、これが「人身売買の温床になり得る」との理由で FIFA は18歳未満の国際移籍を原則禁止していました。トップ選手の移籍では何十億円以上の資金が動くのですから、この規制は妥当と言えるでしょう。

 ただ、以下の場合は「例外」として18歳未満でも国外への移籍は許可されていました。

  1. 両親が「サッカー以外の理由」で海外に移住した場合
  2. EU 市民で、16歳以上の年齢に達している場合
  3. 居住地が国境から50キロ圏内の場合

 島国である日本の場合、18歳未満のサッカー選手が国外移籍ができるのは「両親の都合」に限定されます。久保選手は例外要件のいずれにも該当していなかったため、バルセロナが FIFA から問題を指摘された際に帰国を余儀なくされたのです。

 しかし、18歳になれば、世界中のどのクラブとの契約を締結することが可能になります。そのため、選手の代理人などが「関係者」として売り込みを本格化させていると言えるでしょう。

 

『クラブの金庫』を “人質” に取れない「若手選手のフリー移籍」は推奨できない

 久保選手は「海外移籍を最優先」にしていると思われますが、(移籍金のかからない)フリーでの移籍は推奨できません。なぜなら、加入後に選手が厳しい立場に置かれる可能性が高いからです。

  • フリー(= 移籍金が0円)での移籍
    • 獲得費が不要であり、クラブに売り込みやすい
    • 資産的価値は少ないため、加入後の序列は低くなりがち
  • 移籍金を要する移籍
    • 獲得費を要するため、名乗りを上げるクラブは限られる
    • 資産的価値があるため、クラブ上層部が味方になりやすい

 フリー移籍の場合、所属先となるクラブは探しやすいでしょう。獲得費用が不要であるため、多くのクラブは「当たれば儲けもの」という感覚で話を聞いてくれるからです。

 しかし、加入後は状況が一変します。なぜなら、フリー移籍の選手はクラブの財政状況を人質に取っていないため、監督が起用に消極的でもクラブが被る損失は極めて限定的だからです。

 クラブ上層部から「久保を使え」との有形・無形の圧力があるのとないのでは大きな違いです。出場時間を確保する必要がある若手選手なのですから、「加入後」を見据えた移籍交渉をすべきと言えるでしょう。

 

フリー移籍をするならアヤックス、それ以外なら移籍金を伴う移籍に方針転換をすべき

 久保選手の移籍先として、バルセロナ、レアル・マドリード、PSG とビッグクラブの名前がスポーツ新聞で取り上げられています。しかし、これらのチームとは契約ができたとしても、トップチームの登録枠に入ることはないでしょう。

 ヨーロッパのトップチームで通用するフィジカル能力を10代の時点で持っていることは極めて稀です。

 「レアル・マドリードが4500万ユーロの移籍金を費やした」と報じられるヴィニシウス選手(18)でさえ、Bチームからのスタートとなっています。そのため、久保選手も同様にBチームや中堅クラブに期限付き移籍となる可能性があると考えられます。

 現状で移籍先を探すなら、アヤックスが理想でしょう。バルセロナと同じ「クライフ主義」がクラブの根幹に流れていますし、若手選手の育成が高く評価されています。

 また、成長した選手をビッグクラブに売ることを肯定的に捉えており、フリー移籍で加入する若手有望株選手にとっては最も理想的です。「資産価値が上がる(久保のような)選手を使え」との立場を採る有力クラブは少ないため、移籍先選びは慎重にしなければなりません。

 多くのビッグクラブは「この選手の資産価値が下がらないように使え」との圧力が一般的ですから、脂が乗り切ったトップ選手がフリー移籍で新天地を求めるのは状況が異なることを選手代理人は認識すべきでしょう。

 

 代理人の立場では「フリー移籍をさせた方が選手を獲得したクラブから得られる手数料が弾みやすい」というメリットがあります。

 選手の願望を上手く満たしている場合は問題ありませんが、代理人の私欲が優先されるケースもあるだけに去就の行方が大きな注目点だと言えるのではないでしょうか。