「火器管制レーダー照射を行ったことは棚上げにする」とのメッセージを韓国側に送った岩屋大臣の姿勢は容認できるものではない

 6月1日にシンガポールで日韓の防衛相による非公式会談が行われ、4日の閣議後に岩屋防衛相が「再発防止の考えを韓国側から引き出せた」と評価していると NHK が報じています。

 この対応は完全な逆効果と言わざるを得ないでしょう。問題行動を起こした韓国を不問とする対応であり、“棚上げ” による効果は期待できません。なぜなら、火器管制レーダーの照射を行った現場を韓国国防省が統制できていないからです。

 「 “非公式会談後の発言” は責任を持つ必要のないリップサービス」との認識を持つ必要が岩屋大臣にはあると言えるでしょう。

 

 岩屋大臣は閣議のあと、記者団に対し、「レーダー照射問題について、日本政府の見解を改めて伝え、再発防止を強く求めた。残念ながら認識の一致に至らなかったが、会談終了後、チョン国防相も『こういう事案が起こらないようにしたい』と話していた」と述べ、韓国側から再発防止の考えを引き出せたと一定の成果があったという認識を示しました。

 

自衛隊員の命を守る責務を軽視する岩屋大臣は罷免に値する

 火器管制レーダーを照射することは「攻撃意志がある」と示していることと同じです。韓国海軍は通常の哨戒活動を行っていた自衛隊機に火器管制レーダーを照射したのですから、この件に対する再発防止策を講じる必要があります。

 したがって、「同じ状況に置かれた韓国軍が今後は火器管制レーダーを照射しない」と韓国国防相に公言させることが現実的な再発防止策になるでしょう。なぜなら、双方が納得できる “落としどころ” だからです。

  • 日本側
    • 事態の悪化を回避できる
    • 「いきなり火器管制レーダーを照射した行為は間違い」との認識を示したと国内向けに説明可能
  • 韓国側
    • 事態の悪化を回避できる
    • 「火器管制レーダーは照射していない」との当初の国内向け説明の維持が可能

 しかし、「水面下での手打ち」を模索すると、“非がある韓国側の姿勢” を容認することになります。日本の国防に問題が生じることになりますし、何より最前線にいる自衛隊員の命を危険にさらすことになります。

 この認識が欠落している岩屋防衛相は罷免に値すると言わざるを得ないでしょう。

 

批判が噴出した自民党の会合は正しい

 岩屋大臣が非公式の日韓防衛相会談を行ったことに対し、自民党の会合では批判が上がったと NHK が伝えています。

 5日開かれた自民党の国防部会などの合同会議で、小野寺前防衛大臣は「レーダー照射問題で、韓国側は日本の反論を恣意的(しいてき)に使ってきた。そういう相手だということを十分認識して対応してほしい」と述べ、慎重な対応を求めました。

 また出席した議員からは「レーダー照射問題だけでなく、『徴用』をめぐる問題で韓国側がきちんと対応しないかぎりは非公式であれ、会談すべきではなかった」などと、安易に会談すべきではなかったと批判する意見が出されました。

 韓国は「不誠実な対応」に終始しています。そのため、非公式であっても会談する必要性は極めて少ない状況です。現に、「未来志向で両国は一致した」とメディアに報じられ、火器管制レーダー照射問題は「解決済み」との空気を醸成されているのです。

 「明らかに手順を間違えている」と言わざるを得ないでしょう。

 

“現場を戒めることができないトップ” と『胸襟を開いたトップ会談』をする意味はあるのか

 「トップ同士の会談で何とかなる」と思っているのは人治主義です。要するに「トップダウン」であり、民主主義とは異なることを自覚しなければなりません。

 岩屋大臣は「様々な問題があるからこそ胸襟を開いてトップ同士が話をすることが重要」と述べていますが、“決まりごとを守らない相手” からの損害を被るのは現場です。

 日韓両国での防衛協力が必要なら、決まりごとを守ることが大前提です。現状は「韓国側に決まりごとを守る意志がない」のですから、韓国の姿勢に理解を示す必要は皆無です。つまり、「優しい顔」を見せることは完全に逆効果なのです。

 前任者を平気で否定する国と『胸襟を開いたトップ会談』をしただけでは不十分なことは明らかです。決まりを守らない相手と共同作戦を展開することなど不可能ですし、もし実行すれば背後から撃たれる結果を招くことになるでしょう。

 

 韓国は「自分たちに落ち度がある現状で相手国のトップと会談を行ったこと」が成果になりますが、一方の日本は「会談を行ったことで得られた内容」が成果であり、会っただけでは何の意味もないのです。

 この認識が欠落し、韓国に利する行為を続けている岩屋防衛相は罷免すべき十分な理由があると言えるのではないでしょうか。