FCA、フランス政府からの注文を理由にルノーへの統合提案を撤回 日産はルノーを切って FCA との提携を模索すべきでは?

 フィアット・クライスラー(= FCA)がルノーに経営統合を持ちかけていた件ですが、報道が出てから1週間も経たない内に提案が取り下げられたと日経新聞が報じています。

 提案が撤回された理由は「フランス政府からの介入」とのことであり、「フランス国内での雇用維持」を強く求められたからでしょう。FCA は「要求を満たす価値はない」と判断したのです。日産もそれに続くべきですし、場合によっては提携のパートナーを FCA にすることも検討する必要があると言えるでしょう。

 

 欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は6日、仏ルノーに対する統合提案を取り下げたと発表した。ルノーの筆頭株主である仏政府の介入により、望んでいた条件での統合は難しいと判断した。世界販売台数は両社だけで世界3位、ルノーと提携する日産自動車などを含めるとトップになる企業連合づくりを目指したが、白紙に戻った。

 初報が出た際にも言及しましたが、ルノーと FCA は「アライアンス(= 企業提携)」の可能性はあっても、「企業統合」は難しい状況でした。

 「統合の提案が示されている」とのニュースを見た人が “真っ先に考えた懸念事項” が理由で統合提案が白紙撤回されたのです。ルノー側の立場が「厳しい立場」であることが改めて浮き彫りになったと言えるでしょう。

 

フランス政府による「フランス国内の雇用維持」の要求は企業から嫌われる

 FCA はルノーに対して「企業統合による収益力強化」を提案したものと予想されますが、1週間で提案を取り下げる形となりました。

 これはルノーに強い影響力を持つフランス政府が「提案に応じる条件はフランス国内での雇用を維持すること」との条件を付けたため、FCA が 席を立ったのでしょう。

 フランス国内のルノー工場は収益性が低いため、生産台数を積極的に増やす必要性はありません。規模を縮小して高級車を中心にシフトし、日常的に使用する一般車は人件費の安い EU 加盟国での生産を強めるべき経営状況にあります。

 しかし、それをしてしまうと、フランス国内の雇用情勢が悪化します。そうなると、フランス政府の支持率が下がってしまうため、自らの保身のために民間企業の経営に介入することが常態化しているのです。

 

ルノー(≒ フランス政府)の立場は「統合の相手は日産でも FCA でも構わない」というもの

 経営という点に重点を置いて判断するなら、「FCA のルノーに対する統合提案は合理的」と言えるでしょう。しかし、ルノーに最も強い影響力を持つフランス政府が重要視しているのは「経営」ではなく「国内の雇用」です。

 つまり、「フランス国内の雇用が守られるなら、企業の経営状況が苦境に陥っても良いというスタンス」なのです。

 企業経営者ほどの長期的な時間がない政治家が「目先の雇用情勢」に固執する傾向にあります。フランスの政治家にとっては「国内の雇用」が重要であり、企業を使い捨てにすることを何とも思っていないでしょう。

 その企業が外国企業であれば尚更です。収益を出すことが求められる企業が不利益を出してまでフランス政府の顔色を伺い続ける意味はありません。潮時が訪れていると言えるでしょう。

 

日産は提携相手をルノーから FCA に変更することを考えるべきではないのか

 ルノー(の背後にいるフランス政府)の “狙い” が鮮明になった訳ですから、日産側は態度を変えることを匂わせるべき時期に来ていると言えるでしょう。

 具体的には「提携パートナーを FCA に変更することを検討している」とルノーに匂わせ、不平等なアライアンスの是正に乗り出すべきです。FCA は経営上の弱点がありますから、ルノーを切った後の提携先としては理想と言えるはずです。

 日産は FCA と競合関係にありますが、これは北米市場でのこと。ジープなどのクライスラー部門とはライバル関係ですが、ヨーロッパが主戦場のフィアット部門はテコ入れが必要な状況にあります。

 ですから、「提携の範囲」を上手く定めると、ルノーとのアライアンスを上回る効果が得られる見込みはあると考えられるでしょう。

 揺さぶりをかけてくるルノーに対し、日産が逆襲に出ることも必要になります。対等なアライアンス関係にするために日産がどのように立ち振る舞うのかに注目と言えるのではないでしょうか。