「少子化が深刻な日本で『割賦式の年金制度』だけで老後の生活費を捻出するのは不可能」という現実から逃げる与野党は偽善者

 NHK によりますと、「老後に2000万円が必要になる」との金融庁審議会の報告書を受け、野党が「政府の対応を問い質す必要がある」と主張しているとのことです。

 これは偽善と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、「不足分を埋め合わせる解決策」を与野党に関係なく提示して議論すべき案件だからです。

 「報告書は撤回された」と言う与党も、「政府の対応を問い質す」と主張する野党も無責任です。「年金だけでは生活できない」ことは民主党政権が誕生する前から分かり切っていたことです。年金問題を政局として利用する政党・政治家は論外だと言えるでしょう。

 

 老後の資産形成をめぐり「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の報告書について、野党側は政府の対応をただす必要があるとして予算委員会の集中審議の開催を求めたのに対し、与党側は応じない考えを伝えました。一方、党首討論については来週19日に開催することで合意しました。

 

発端は「平均収入と平均支出の差額」をマスコミが「不足」と騒いだこと

 老後の資産形成で問題となったのは「老齢者無職世帯の平均収入(= 月21万円)と平均支出(= 月26万円)の差額」です。

 平均収入と平均支出の差に「不足」という意味合いはないのですが、マスコミが「毎月約5.5万円の赤字」と報道。「年金の他にも2000万円が必要となる」という主張が一人歩きをする形となりました。

 ただ、老後の生活が年金だけで賄うことができないのは以前から判明していたことです。2012年7月の時点で日経新聞が「年金、20代は2000万円超の払い損」との記事を書き、「普通の人でも資産運用をしなければいけない」と警鐘を鳴らしています

 これを政治家や情報を扱うプロであるマスコミが「知らなかった」では話になりません。事実を正確に伝え続けなかったことの責任を取る必要があると言えるでしょう。

 

少子化で払い手となる現役世代の絶対数が減るため、割賦式の年金制度だけでは収入を確保することは困難

 日本の年金制度は割賦式が採用されています。これは「年金受給者が必要とする金額を “払い手である現役世代が” 拠出する」というものです。

 制度導入時は理想的だったと言えるでしょう。年金受給者である老人の絶対数が少なかった上、戦後で資産を持つ人の数も少なかったからです。そのため、当時の現役世代は数も多かったこともあり、負担はごく僅かで済みました。

 ところが、時代が流れて少子高齢化が進行すると『現行の年金制度の歪み』が無視できなくなったのです。

 まず、受給者の絶対数が増加したため、支出しなければならない年金の絶対額も増加しました。対処策として「年金支払い額の増加」を施したのですが、これにより現役世代の生活費が圧迫され、少子化を進める要因の1つになってしまったのです。

 「消費税が 10% になるかどうか」で揉めていますが、年金などの社会保険料の負担は「給与額の 15% 超」という状況です。現役世代は老後に向けた資産形成そのものが困難になっているという現実を与野党ともに認識する必要があると言えるでしょう。

 

与野党から聞きたいことは「現役世代が資産形成をしやすい社会を実現するための解決策」

 報告書を取り下げさせようが、時の政権を批判しようが、不足しているものは不足したままです。全員が高齢者となった際に2000万円が足りない訳ではありませんが、「将来に向けた資産形成ができる社会」であることが重要なのは与野党ともに一致することでしょう。

 つまり、与野党に要求されているのは次の参院選までに「年金不足問題に対する解決策」を示し、有権者に信を問うことなのです。

 一部の野党支持者が主張する「自公を落とす方が2000万円貯めるより簡単」と言うのは論外です。「1度やらせて欲しい」と主張した民主党政権が『具体的な政策』を持たず、日本経済を疲弊させたことは記憶に新しいことです。

 「二匹目のドジョウ」を狙って再び年金問題で政権交代を企むなど、一般企業で働く大多数の有権者にとっては悪夢以外の何物でもないと言わざるを得ないでしょう。

 

 票田である高齢層のために働くなら、現役世代の負担をさらに増す形で税金を重くすれば良いです。ただし、「子育て支援」など少子化対策とは相反する政策をすることになるため、高齢者優先であることを明らかにすることが絶対条件だと言えるでしょう。

 夏の参院選に向けて各政党・政治家が年金問題を含めた政策をどのような形で有権者に提示するのかが注目点と言えるのではないでしょうか。