G20 を前にトランプ大統領が「日米安保条約は不公平」と再言及、安倍政権は騒ぐメディアを利用して憲法改正に向けた追い風を作るべき

 NHK によりますと、アメリカのトランプ大統領が FOX テレビとの電話取材で「日米安保条約は不公平」との不満を示したとのことです。

画像:安保条約に対する不満を述べたトランプ大統領

 このニュースを驚きを持って伝えるメディアなどがありますが、発言内容は3年前に述べていたものと同じです。安倍政権が憲法改正を考えているなら、トランプ大統領の発言を最大限利用する必要があると言えるでしょう。

 

 トランプ大統領は26日、G20大阪サミットに向かう前にアメリカのFOXビジネスネットワークの電話インタビューに応じました。

 (中略)

 日米安全保障条約について「もし日本が攻撃されれば、われわれは第3次世界大戦を戦うことになり、あらゆる犠牲を払って日本を守る。しかし、もしアメリカが攻撃されても日本はわれわれを助ける必要は全くない。彼らはソニー製のテレビでそれを見ていられる」と述べ、不公平だと不満を示しました。

 

2016年3月の時点で同様の主張を行っている

 トランプ大統領が日米安保条約に不満を述べるのは今回が初めてではありません。共和党の大統領候補を決める指名争いをしている2016年3月に今回と同じ不満を述べていることが報じられていたからです。

 不満の内容も「アメリカは日本を助ける義務があるが、日本にはその義務がない」というものです。

 安保条約が締結された当時とは国際情勢が全く異なりますし、日本側が大きな恩恵を受けている “不公平な” 現状を維持することは困難と言わざるを得ないでしょう。

表1:国際情勢の比較
1960年当時 2019年現在
  • 『資本主義』と『共産主義』による覇権争い(=冷戦の構図)
  • 資本主義が生き残る
  • アメリカは『資本主義』陣営のリーダー
  • 世界唯一の超大国
  • 絶対的な立場
  • アメリカが世界一の経済圏
  • アジアなどの台頭で “絶対的な優位性” は低下
  • 日本は途上国の経済規模(=戦後の混乱による共産主義化のリスクあり)
  • 日本は世界3位の経済圏
  • 『資本主義』陣営

 

世界3位の経済圏を持つ国が「防衛上の負担を一方的に押し付ける状況」は相手に不公平感を抱かせる

 日本が途上国レベルの経済規模であるなら、安全保障が片務的になっていても止むを得ないでしょう。これは予算面などが理由で満足に部隊を組織することすら難しいと考えられるからです。

 しかし、現在の日本は違います。世界3位の経済圏を持つ先進国であるにも関わらず、防衛費は GDP 比で 1%。NATO は 2% が要求されているのですから、日本の防衛費は「少ない方」です。

 要するに世界基準で見ると、「防衛費の出し惜しみをしているのが日本」なのです。

 世界最強のアメリカが日本を守る義務を負っているのですから、守られる側の日本は多額の防衛費を投じる必要性は薄れます。その結果、日本の防衛費は他国水準よりも低く抑えることができるという “からくり” が存在します。

 日本は安保条約を使って「アメリカの軍事力」にタダ乗りができますが、タダ乗りをされる側のアメリカが不満を募らせるのは当然です。

 日本国内に「韓国は日本にタダ乗りしている」との感情があるように、アメリカ国内にも軍事力にタダ乗りしているとの感情があることは十分に想定されることなのです。

 そのため、時代の情勢に合致した “対等な関係” となる安保条約に改正する必要があると言えるでしょう。

 

“タダ乗り” は是正しなければならないし、憲法改正も不可避である

 トランプ大統領の発言を受け、左派界隈からは「これを機に日米関係を対等にしよう」との声が出ています。ただ、主張内容がズレていることが問題です。

 野党やマスコミなどの左派界隈の主張は「日米地位協定の不平等な点を対等にしよう」というものです。しかし、トランプ大統領が不満を述べているのは「アメリカだけが相手国に対する防衛義務を負っていること」です。

 したがって、「地位協定の改善を求めるなら、日本がアメリカの防衛義務を対等に負うことが条件」と返される可能性が大です。

 対等な関係を構築するのは上記の条件を満たす必要がありますが、これは難しいと言わざるを得ないでしょう。なぜなら、日本は戦争の選択肢を言及した国会議員が大バッシングを受ける国だからです。

 そのため、突っ込んだ議論にはならず、野党やマスコミは表面的なキレイゴトを主張するだけに留まることが濃厚です。

 一方で憲法改正を目指す安倍政権は “選挙期間中” に「安保条約の見直しも含めた集団的自衛権の重要性」を野党やマスコミに問い詰めるべきです。

 総理のイラン訪問時に日本向けの原油を積んだタンカーが攻撃される事件が起きているのです。「現状で問題ない」との主張は現実逃避と同じです。

 

 安全保障は日本国内の経済に大きく影響します。特に中東からの石油資源にエネルギー源を大きく依存している現状では集団的自衛権を含む安全保障政策は重要なことなのです。

 この問題で野党やマスコミを公開討論の場に引きずり出すことは現実的な議論をする政党にとって大きなプラスとなります。トランプ大統領が以前から言及していた内容ですから、政策をまじめに考えている政党が右往左往することはないでしょう。

 無責任な政党やマスコミを白日の下にさらすという意味でも、今回のトランプ大統領の発言は最大限利用すべきと言えるのではないでしょか。