「在京5社・在阪5社のテレビ局は吉本の株主やから大丈夫」との吉本興業社長の発言が指摘され、騒ぎが大きくなる

 7月20日に宮迫博之氏と田村亮氏が記者会見を行いました。その中で吉本興業の姿勢を批判する言動も発せられており、騒動は大きくなることでしょう。

 特に、「主要テレビ局が吉本興業の株主だから大丈夫」と社長から言われたとの部分です。普通は「株主(= 主要テレビ局)の方が強い」のですが、これは「吉本とテレビ局は一心同体」と “癒着” を認めたも同然だからです。

 

 もともと、謝罪会見をしたい、世間の皆様に謝りたいということだったのが、どこからか話が変わっていき、そして「記者会見やりたい」「ネットとかで全部見られるようにしてもらえませんか」と言うと、「そんなんこっちで決めるから」と。

 僕がすごく不信に思ったのが「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本が株主やから大丈夫やからと」言われました。何が大丈夫なのかわからないけれども、僕たちの言う事が、本当の気持ちが伝わるかどうか。ネットのことを止めようとしたという風に感じてしまいました。

 

「(吉本興業の)株主であるテレビ局は吉本に “忖度” するから大丈夫」と言いたかったのだろう

 吉本興業の社長が田村亮氏に「在京5社・在阪5社のテレビ局は吉本の株主やから大丈夫やから」と述べた背景は「テレビ局は無条件に吉本側に立つ」という確信を持っていたからでしょう。

 騒動の発端は「宮迫博之氏に反社会勢力との関係が指摘されたこと」ですが、この時点でテレビ局は静観しました。

 一部の大手企業は「広告出稿の見合わせ」を行い、コンプライアンス遵守の姿勢を見せていました。しかし、吉本興業の株主であるテレビ局は「問題とは認識していない」との立場だったのです。

画像:吉本興業の株主

 “隠蔽体質” が浮き彫りとなる発言を社長自らが行っていたことは問題視されるべきであると同時に、反社会勢力との関係が疑われる状況を “株主” として放置しているテレビ局の責任も問われるべきものと言えるでしょう。

 

『行動の基準や規範を定めた契約書』が存在しないため、性悪説による疑惑拡大に歯止めをかけられない

 吉本興業が「闇営業問題」と名付ける一連の騒動が尾を引く理由は「所属する芸人との間に契約書が存在しないから」でしょう。所属契約を締結する際には「対価と制約」が明記されているはずです。

 具体的には「芸人は “吉本興業が依頼した仕事のみ” を請け負う代わりに相応の賃金を得る」というものです。

 口約束でも契約は有効になりますが、「専属契約ではない」と主張される可能性があります。これは「 “吉本が依頼した仕事” の他に “個人で獲得した仕事” を請け負う自由はある」と主張できることが理由です。

 つまり、当事者双方が都合の良い解釈をすることを防ぐために、書面で契約の内容を明記しておくことがリスク管理になるのです。これを怠っていると、問題が起きた際に「問題ないと言い切れる根拠がない」と『性悪説』の観点から延焼に歯止めをかけられなくなるからです。

 「法令遵守を徹底していた」との根拠が「関係者の証言だけ」では弱すぎます。証言が後になって変わることがある訳ですから、吉本興業の現状では「対策は不十分」と言わざるを得ないでしょう。

 

在京・在阪のテレビ局には「株主という立場から吉本興業の姿勢をどう捉えているのか」が見られている

 宮迫氏や田村氏は「詐欺グループとの接点」が問題視されましたが、「該当のグループとは吉本興業も接点を持っている」フライデーが報じています。

 '14年の5月31日に、入江が主催する『AH!YEAH!OH!YEAH!2014』というイベントがあったんですが、そのイベントに詐欺グループは協賛として参加した。

 これは入江氏が “表営業” として主催したイベントですから、吉本興業も公認しています。このイベントに詐欺グループが協賛として参加しており、吉本興業のチェック体制も問われるべき件と言えるでしょう。

 吉本を「セーフ」とするなら、芸人も「セーフ」です。もし、芸人に「アウト」の判定を下すなら、吉本も当然「アウト」の判定が下されなければならない事案だからです。

 この “踏み絵” を迫られるのは「吉本興業の株主」であり、かつ「上場企業」である在京・在阪のテレビ局です。「芸人を切って終わる問題ではない」と吉本興業に対して責任を追求することができるかが問われていると言えるのではないでしょうか。