NHKから国民を守る党・立花党首、放送法の “泣き所” を突く形で「受信契約は結ぶが受信料の支払いには応じない」と NHK を煽る

 日経新聞によりますと、NHK から国民を守る党の立花党首が「受信料は払わない」との考えを記者会見で明らかにしたとのことです。

 「受信契約の締結」は放送法で明記されていますが、「受信料の支払い」は「受信契約の履行」が根拠です。そのため、「法律で定められた義務ではない」と主張できるため、NHK にとっては悩ましい国政政党が誕生したと言えるでしょう。

 

 NHKから国民を守る党の立花孝志党首は8日、東京・渋谷区のNHK放送センターを訪れ、参院議員会館の事務所に設置したテレビに関し、NHKと放送受信契約を結んだ。立花氏は契約は法律上の義務だが、受信料の支払いは法律上の義務ではないと主張する。国会内で同日開いた記者会見でも「受信料は支払わない」と拒否する考えを示した。

 (中略)

 N国は受信料を払った人だけがNHKを視聴できるスクランブル放送の実現を掲げ、参院選で1議席を得た。立花氏は1日付で参院議員会館の事務所にテレビを設置した。

 

放送法で定められた義務は「受信契約を締結すること」

 NHK が得ている受信料の根拠となっているのは放送法第64条です。

第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

 要するに、NHK の放送が受信可能な機器を設置した者は NHK と受信契約を結ばなければならない」と法で定められているのです。

 ただ、この条文では「NHK を視聴していない人や視聴できない人も受信料の支払いを “強要” される」という問題が発生します。NHK 放送の他にも情報源はありますし、受信料を定めた法律が時代遅れになっていることは否めません。

 NHK への影響力を保持したい政治が「放送法の改善」に消極的だったことが『N国(= NHK から国民を守る党)』を誕生させる大きな原動力になったと言わざるを得ないでしょう。

 

受信料の支払いは「NHK との受信契約の履行」が根拠

 N国の立花代表が “NHK の痛いところ” を突いていることは事実でしょう。なぜなら、「受信料の支払い」を明記した法律は存在しないからです。

 もし、「受信料の支払い」が『義務』であるなら、これは NHK が徴税権を有していることになってしまうからです。

 したがって、NHK が視聴者に受信料の支払いを求める根拠は「NHK が個々の視聴者と締結した個別契約」です。つまり、受信料が支払われなかった場合は NHK が該当者を相手取った「締結した視聴契約が履行されていない」との訴訟を起こし、勝つ必要があるのです。

 放送法(= 第64条)の文言がある限り、NHK が最終的には裁判で勝つでしょう。しかし、時間がかかり過ぎるという問題があります。

 また、「受信契約は結ぶが支払いには応じない」というスタンスを採る視聴者の数が増加すると、NHK は訴訟対応に経営資源を割り当てざるを得なくなります。

 これを避けたいがために「受信料を支払わなくてもいいと公然と言うことは法律違反を勧めることになる」との声明(PDF)を発表したのでしょうが、余計な批判を招く結果になっただけと言えるでしょう。

 

NHK が『公共放送』を都合良く利用して詭弁を呈しているから批判が起きている

 忘れてはならないのは NHK の放送を視聴するために必要な電気は『利用契約』です。電気代を払えなくて電気を止められた世帯でも、受信機器が設置されていることを理由に NHK に受信料を払わなければならないという事態も想定できるのです。

 このような “穴” は複数存在しますし、NHK が主張する『公共放送』は「自分たちの利権」を守るための詭弁に過ぎません。

 『国営放送』なら、放送局の局員は国家公務員ですから、給与水準は公務員を超えることはありません。しかし、『公共放送』という立場が守られるなら、公務員の給与水準の倍以上を得ていても問題視されないのです。

 しかも、『公共放送』の看板を自由に使える上、“好き勝手な編集” をすることが可能です。これでは世間の反感が募るのは止むを得ないと言えるでしょう。

 

NHK にスクランブル化を実施させ、災害報道などの製作費用は国会が負担すれば問題ないのでは?

 N国は「見たい人だけが契約するスクランブル化」を求めていますが、NHK は「災害報道や教育・福祉・古典芸能などで貢献している」と反論しています。ただ、NHK 以外にも情報伝達経路が確立した現代で NHK の主張は批判を呼ぶだけです。

 『公共放送』を名乗るのであれば、災害報道は「スクランブル化の対象外」としなければなりません。NHK が取材コストを懸念するなら、国会承認を得た後に税金で補填される制度を作れば済むことです。この方式なら、国民からの理解は容易に得られることでしょう。

 教育・福祉・古典芸能などの番組を見る・見ないは個人の自由です。ただ、誰もが情報を発信できる現代で「NHK だけが文化を支えているとの認識」は傲慢以外の何物でもありません。

 テレビを見なくなった若者にそうした分野に触れて欲しいと思うなら、発信する側がネットなど “新しい情報伝達経路” を積極的に使う必要があるからです。放送法の内容が時代に合致していないのですから、改善しなければなりません。N国は一石を投じる存在と言えるのではないでしょうか。