2部レベルの審判員を「女性」という理由だけで「スーパーカップの主審」に指名した UEFA の “姑息な手法”
トルコ・イスタンブールで行われた2019年の UEFA スーパーカップで女性の審判団が試合を担当しました。
「素晴らしい姿勢」との称賛の声が上がっているでしょうが、主審を務めたステファニー・フラパール(Stephanie Frappart)氏が抜擢された理由は「女性」というだけです。UEFA による手法は「審判員への信頼を下げるだけ」と言わざるを得ないでしょう。
2018/19 シーズンでのフラパール主審の担当歴は「1部のリーグ戦で2試合、カップ戦1試合」だけ
まず、フラパール主審は所属するフランスで 2018/19 シーズンに『男子カテゴリ』での担当試合は以下のとおりです。
- リーグ戦(1部)
- 第34節:アミアン対ストラスブール (0-0 の引き分け)
- 第36節:ニース対ナント (1-1 の引き分け)
- カップ戦(= クープ・ドゥ・フランス)
- ラウンド64: オリンピック・ストラスブール対サンティエンヌ
→ 6-0 で勝利したサンティエンヌが勝ち上がり
- ラウンド64: オリンピック・ストラスブール対サンティエンヌ
フランス1部の試合を担当したのは4月末と5月に1度ずつ、一発勝負のカップ戦は実力差のあるチーム同士の対戦を1月に担当しただけです。
2部のリーグ・ドゥは13試合の担当歴があるのですから、フラパール主審の審判員としての実力は「2部相当」と判断するのが妥当でしょう。
しかし、エリート・レフリーが担当する UEFA のスーパーカップにいきなり抜擢されたのです。その理由は「女性」という点でしか説明ができないものです。
男子の審判員はヨーロッパリーグやチャンピオンズリーグで経験を重ねることが一般的
UEFA が主催する大会で審判員を務めるのは「各協会から選ばれしエリート」です。その審判員が段階を踏み、タイトルなどが賭かった重要な試合にアサインされているのです。
一般的な段階は以下のとおりです。
- 第4審判として審判団に参加
- ヨーロッパリーグ(= EL)で主審経験を積む
- チャンピオンズリーグ(= CL)の “戦力差がある試合” を担当
- CL のグループステージを担当
- CL や EL の決勝ラウンドを担当
- EL の決勝戦を担当
- CL の決勝戦を担当
“FIFA バッチ” を持つ各協会のエリート審判員は上記のプロセスを経て、UEFA が主催する大会の決勝戦を担当しているのです。
直近の3年で UEFA スーパーカップで主審を担当したのはミロラド・マジッチ、ジャンルカ・ロッキ、シモン・マルチニアクの3名で、全員がロシアW杯で笛を吹いています。
フラパール主審は FIFA 管轄の男子の試合では(親善試合を含めて)1試合も試合を担当していないのですから、「トップレベルの審判員ではない」と言わざるを得ないでしょう。
UEFA がフラパール氏をスーパーカップの主審に抜擢した理由と批判回避策
UEFA が実力不足のフラパール氏を含む女性審判団を決勝戦に抜擢した理由と、批判が生じた際の回避策は以下のものです。
- 指名の理由・動機
- 「男女平等」を語れる政治的な思惑
- 参加した2チームがスーパーカップを重要視していない
- 批判回避策
- VAR の存在
- 致命的な誤審は回避可能
- VAR はクレメント・テュルパン(フランス)
- 第4審判がジュネイト・チャキル(トルコ)
- VAR の存在
スーパーカップを戦ったリバプールやチェルシーの目標は「チャンピオンズリーグ制覇」です。既にリーグ戦が開幕している中でスーパーカップ獲得に目の色を変えて戦うことはないため、試合が荒れるリスクは低い状況にありました。
また、女性審判団のレベルがどれだけ低かろうとも、VAR が導入されているため、致命的な誤審は “抹消” できます。(しかもフラパール氏と同じフランス人のトップ審判が担当)
そして、判定に対する監督からの不満をダイレクトに受ける第4審判には名物審判のジュネイト・チャキル氏が “なだめ役” として任命されているのです。
手厚すぎるほどのサポートを得ていれば、2部レベルの審判員であっても決勝戦を担当することは可能でしょう。ただし、弊害はあります。
“大会賞金” に目の色を変えて戦うチーム同士の試合を担当するだけの実力はない
もし、UEFA がフラパール氏の “審判員としての能力” を評価しているなら、現在進行形で行われている CL や EL の予選を担当していることでしょう。
ですが、そうした試合には過去に1度も任命されていません。これは「大会賞金などに目の色を変えて戦うチーム同士を担当するだけの実力がない」と認めていることと同じです。
CL は本戦出場権を得ただけで約20億円の分配金が得られるため、どのチームも本気度が違います。誤審による敗退となれば、審判への批判が起きるのは当然ですし、“実績の乏しい審判員” を指名していれば任命者である UEFA も吊るし上げを受けるのです。
フラパール氏の審判員としてのレベルは「プレシーズンの試合なら許容範囲だが、シーズン中の真剣勝負では不合格」と言わざるを得ません。
他の男性審判員と同様の段階を経て、グループステージや決勝ラウンドを任せられるのから文句はありません。しかし、今回のように実力不足のままで主審を務めるなら、審判員のレベル低下を招くだけです。
少なくとも、フラパール氏が今季のチャンピオンズリーグで主審を務めることは「あってはならない」と言えるのではないでしょうか。