記録的な大雨による浸水被害は発生した佐賀県で工場から大量の油も流出する事故が発生、災害対策の見直しも必要となる

 佐賀県を中心に記録的な大雨による浸水被害が発生していますが、鉄工所から大量の油が流出する事故も起きたことで消費者庁が流出対策を業界団体に通知したと NHK が報じています。

 浸水被害の復旧だけでも大変ですし、油の回収作業を放置することは環境に悪影響が及ぶことになります。そのため、「油を含む危険物の流出対策」だけでなく「流出事故が発生した際に行政が行う対応」も事前に用意しておく必要があると言えるでしょう。

 

 今回の記録的な大雨の影響で浸水被害が発生した佐賀県大町町では、鉄工所の工場から大量の油が流出し、排水作業に影響が出ています。

 これを受けて、総務省消防庁は危険物を扱う業界団体に対し、特に「浸水想定区域」や「土砂災害警戒区域」内にある施設や、過去に危険物が流出したことがある施設では、危険物の管理を徹底するよう、29日付けで通知しました。

 通知では、気象庁や地元の自治体が出す情報に注意したうえで、災害の危険性が高まった場合は、土のうや止水板を使って施設への浸水や土砂の流入を防ぐほか、配管の弁やマンホールを閉鎖するなどの対策をとって危険物の流出を防ぐよう求めています。

 

危険物を取り扱う資格を持った事業者や個人が責任を持って管理すべき

 消費者庁の通知は「妥当なもの」と言えるでしょう。危険物を取り扱うための『危険物取扱者』の “国家資格” がありますし、有資格者が責任を持って管理すべきだからです。

 ただ、個別の事業者が施すことができる対策には限界があることも事実です。

 例えば、燃料を精製する工場が多く存在する臨海部は基本的に「浸水想定区域」です。台風などの際は防潮堤を閉めるなどの対策が講じられますが、それでも全てを防ぎ切ることはできません。

 したがって、現実的な対応ができるラインを設けておく必要があると言えるでしょう。これを怠っていると、活動家などによる “後出しじゃんけん” が許されることになり、ビジネスそのものが成り立たなくなるからです。

 

「油のタンクに蓋がなかった」というのは現実的に問題視できるのかが今回の争点

 今回の記録的な大雨で佐賀県の鉄工所から油が流出した事故で注目されるべきは「油のタンクに蓋がなかった」と NHK が報じている部分でしょう。

 大町町福母地区にある佐賀鉄工所大町工場では、28日午前4時ごろ大雨の影響で建物に水が流れ込んで大量の油が周辺に流出しました。

 (中略)

 工場内にはおよそ1万2000リットル入る油のタンクが合わせて8つ並んでいましたが、ふたが無かったため、大雨で流れ込んだ水と一緒に外部に流出したとみられています。

 流れ出た油は「冷却用途の重油」ですから、どこかで「放熱」をする必要があるはずです。おそらく、タンクで重油自体を放熱によって冷却し、再び「熱処理加工後のボルト冷却のために利用」する形を採っていたのでしょう。

 この利用方法だった場合、タンクに蓋をするのは難しいと言わざるを得ません。したがって、屋根のある建物内にタンクが設置され、雨水の流入でタンクの容量を超えることが起きないような形で利用されていたかが焦点と言えるでしょう。

 それをしていたのであれば、責任の大部分は免罪されるべきです。また、土嚢や止水板などを活用していたのであれば、個々の企業としてやれることは全てやっていたと言えるからです。

 

油の流出事故が発生した際の自治体や各家庭での基本対応はマニュアル化しておく価値はあるのでは?

 佐賀県で発生した大雨による油の流出事故は「特異な事例」とは言い切れないだけに他の地域でも同様の事故が起きる可能性はあると言えるでしょう。

 なぜなら、近年は「線状降水帯」が発生したことで局地的に豪雨が降り続いたことによる水害が各地で発生しているからです。したがって、想定を超える降水によってタンクの内容物が敷地外へと流出するケースへの対応は用意しておくべきと言えるはずです。

 特に「家庭レベルでの漂着した油の除去・回収方法」はマニュアルとしてネットなどで配布できる状態にしておくだけの価値はあると考えられます。

 全国津々浦々で同じ災害対策が講じられていることは非現実的ですが、災害対策として有効な方法は誰でも簡単にアクセスが可能にしておくべきと言えるのではないでしょうか。