ヴィッセル神戸:イニエスタの加入でJ1史上最高の売上高を記録するも、“真のビッグクラブ” へは道半ば

 神戸新聞によりますと、サッカーJ1に所属するヴィッセル神戸が日本プロサッカー史上最高額にやる96億6600万円を記録したとのことです。

 ただ、内訳を見ますと親会社からのスポンサー収入に大きく依存する形となっています。ファン層に「真のビッグクラブ」と認識された数字が出るまでにはまだ時間がかかると言えるでしょう。

 

 サッカーJリーグ1部(J1)のヴィッセル神戸は、元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ選手(35)が加入した2018年度、営業収益(売上高)が日本のプロサッカー史上最高額の96億6600万円を記録した。スポンサー収入や入場料収入が大きく伸び、2位の浦和レッズを約21億円も上回った。親会社・楽天の事業戦略も大きく影響した。

 

「入場料と物販が強い浦和レッズ」と「スポンサーからの広告が強いヴィッセル神戸」

 ヴィッセル神戸はJ1での売上高でトップに立ちましたが、双璧をなす浦和レッズとは収入面で大きな違いがあります。

ヴィッセル神戸 浦和レッズ
17年度 18年度 17年度 18年度
売上高 52.3億 96.6億 79.7億 75.5億

広告 15.4億 62億 31.9億 32.2億
入場料 5.1億 8.4億 23.3億 19.2億
物販 1.9億 3.8億 8.1億 9.5億
人件費 31億 44.7億 26.4億 31億

 神戸の収益源は「スポンサーからの広告収入」です。この大部分は親会社である楽天からの収入でしょう。ただ、純粋な収入増ではありません。これはJリーグのクラブライセンス制度が関係しているからです。

 Jリーグに参戦するにはクラブライセンスが必要であり、累積赤字を計上することはできません。イニエスタ選手の巨額給与は人件費に計上されるため、この増加分をカバーできなければヴィッセル神戸はJリーグに参戦できなくなってしまいます

 だから、親会社である楽天はイニエスタ選手など助っ人外国人選手の年俸を上回るスポンサー料を投入することを余儀なくされており、その結果が見かけ上の売上高が増大する結果になっているのです。

 

物販収入で浦和レッズを上回ることがヴィッセル神戸の目標

 ヴィッセル神戸は親会社・楽天の潤沢な資金援助を受け、ビッグクラブへの仲間入りを果たしました。しかし、一般層への認知は道半ばです。

 現状は「話題先行型のチーム」と言えるでしょう。したがって、チームの実力が話題に追いつくことが求められます。

 ただし、入場料収入で浦和レッズを上回ることは不可能です。レッズの本拠地である埼玉スタジアムは63000人の収容人数を誇っており、これはヴィッセル神戸のノエビア・スタジアムの倍だからです。

 その一方でレプリカユニフォームなどの物販収入で3倍弱の差があるのは問題です。これは「選手」と「チームのブランド力」に依存するため、物販収入にある差は早急に埋める必要があると言えるでしょう。

 

「イニエスタ退団後」がヴィッセル神戸にとっての正念場

 ヴィッセル神戸にとっての正念場は「イニエスタ選手の退団後」に訪れます。現状はイニエスタ選手の年俸分をカバーする目的で売上高が大きくなっており、イニエスタ選手がチームを離れた時点でスポンサー収入が下がることが予想されるからです。

 そのため、イニエスタ選手が在籍している間にヴィッセル神戸は「 “ビッグクラブ” としての土台を完成させておくこと」がノルマです。

 『バルサ化』という目標は明確に打ち出されているものの、具体的なアプローチが右往左往している状況となっており、ここを固めることが今季の課題であると思われます。

 ボールを保持するスタンスで先行する横浜Fマリノスがマンチェスター・シティとの系列関係を活かし、チームの熟成を進め、成績を残すことに成功しています。Jリーグに成功例があるのですから、親会社の支援を受けるヴィッセル神戸も同じ成長曲線を描けるかが注目点になると言えるのではないでしょうか。