岐阜や愛知などで続く豚コレラ問題、「罠の増加」と「ワクチン入り餌の散布」による感染防止を図る

 NHK によりますと、岐阜県や愛知県で問題が続いているの『豚コレラ』に対し、農水省が感染拡大の原因になっているイノシシの駆除に本腰を入れる方針を固めたとのことです。

 具体策は「捕獲用の罠の設置条件緩和」と「ワクチン入りの餌を新たに散布」の2点となっています。これらの対策がどれだけ効果が出るかが注目点と言えるでしょう。

 

 豚コレラは去年9月、岐阜県の養豚場で発生が確認されたあと、合わせて7つの府県に拡大し、これまでに13万頭を超えるブタが殺処分されていますが、終息の見通しは立っていません。

 農林水産省は、今月9日で発生から1年となるのを前に、担当者を集めた対策会議を開きました。

 この中で、農林水産省は感染を広げる野生のイノシシ対策として、岐阜県と周辺の合わせて9つの県でわなの設置の条件を緩和し、わなを増やすなどして年間12万頭を目標にイノシシの捕獲を強化するとともに、岐阜県と愛知県を囲むように幅10キロ余りの帯状に感染を広げないための「防衛ライン」を設け、イノシシ用のワクチンを混ぜた餌を新たに16万個まくことを決めました。

 

山中に生息する野生動物が『豚コレラの感染源』になっているため、収束に向かうことが難しい

 豚コレラは「豚やイノシシなどの感染症」で、人間には感染しません。(豚コレラを発症した豚肉を食べても問題はありませんし、市場に出回る前に排除されています)

 豚コレラの問題で大きいのは「治療法が確立されていない」という部分です。そのため、感染が見つかった場合は「豚を殺処分することで感染拡大を止める」ことを余儀なくされているのです。

 ちなみに、日本で2018年から豚コレラの感染拡大が起きた可能性は以下のルートが高いと見られています。

  1. 豚コレラ・ウイルスが付着した肉製品が検疫をすり抜けて日本国内に持ち込まれる
  2. 『1』の食べ残しを野生のイノシシが食べ、豚コレラに感染
  3. 『2』のイノシシの体内で豚コレラ・ウイルスが増殖し、他のイノシシや野生動物に感染
  4. 「豚コレラに感染した野生動物」や「豚コレラ・ウイルスが付着した人や自動車」が養豚場にウイルスを持ち込む

 つまり、山中などに生息する野生動物が『豚コレラのキャリア(= 感染源)』となったことで、感染拡大が引き起こされたのです。問題が収束に向かうのは難しいと言わざるを得ないでしょう。

 

“ゲリラ戦を仕掛けて来る敵” を殲滅するのは簡単ではない

 なぜ、難しいのかと言いますと、対応に当たる養豚農家は “ゲリラ戦” を強いられているからです。農水省が「予防策のポイント」として紹介している資料(= PDF)からも、感染経路が複数存在していることが分かります。

画像:豚コレラの予防対策

 外部からのアクセスを完全に遮断することは不可能ですし、どこから豚コレラ・ウイルスが持ち込まれる可能性は十二分にあるのです。

 例えば、“豚コレラが発生した養豚場を取材したマスコミ” も豚コレラの感染拡大の片棒を担ぐ可能性がある容疑者です。取材カメラの消毒はしないでしょうし、取材に用いた車両で様々な場所を訪れることが考えられるからです。

 感染拡大の主要経路は「イノシシ」や「鳥類」などの野生動物ですが、人間も(自覚がないまま)ウイルスを持ち運ぶ恐れがあることは知られているべきと言えるでしょう。

 

「キャリアの絶対数を減らすこと」が問題の現実的な対応策

 今回、農水省が豚コレラ問題で打ち出した対策は以下の2点です。

  • イノシシ捕獲用の罠設置基準の緩和
  • イノシシ用のワクチン入り餌を新たに散布

 野生動物を捕獲するには狩猟免許が必要であり、狩猟期間や方法などに厳しい基準が設けられています。ただ、規則を遵守している現状では豚コレラの感染拡大を食い止めることができていないことから、罠の設置基準を緩和して捕獲のペースを上げざるを得ないとの判断をしたのでしょう。

 また、捕獲の網から漏れた野生のイノシシがワクチン入りの餌を食べたことで抗体を保持すれば、感染拡大のペースを鈍らせることが期待できます。

 対応が長引くほど最前線にいる養豚農家は疲弊しますし、都道府県が積極的な対応に乗り出す必要もあると言えるでしょう。特に、あいちトリエンナーレで評判を下げた大村知事は『豚コレラ問題』でリーダーシップを発揮し、汚名返上すべきと言えるのではないでしょうか。