「後期高齢者の窓口負担を1割増の2割に引き上げ」を提言した健保連はマシだが、現役世代と同じ「3割負担」を要求しないことは問題

 NHK によりますと、高齢化による財政悪化で医療保険制度が崩れることを防ぐために健康保険組合連合会(= 健保連)が「後期高齢者の窓口負担は2割」とするよう提言したとのことです。

 これが実現すれば、ある程度は医療保険制度の崩壊を食い止めることができるでしょう。しかし、不十分であることは否めません。

 なぜなら、後期高齢者を除く世代の窓口負担は3割だからです。同じ医療サービスを受けているのですから、負担の割合は他の世代と同水準になっているべきだと言えるでしょう。

 

 高齢化で財政悪化が見込まれる医療保険制度を維持するため、健保連=健康保険組合連合会は、75歳以上の後期高齢者の病院などでの窓口負担を、今の原則1割から2割に引き上げることなどを求める提言を発表しました。

 (中略)

 いわゆる「団塊の世代」が75歳の後期高齢者になりはじめる2022年から医療費が膨らみ、保険財政が急激に悪化するとして、制度を維持するためには負担増を伴う改革は避けられないと指摘しています。

 具体的には、75歳以上の後期高齢者の病院などでの窓口負担を今の原則1割から、低所得者に配慮しつつ原則2割に引き上げるよう求めています。

 

現役世代は「保険料負担」が重くのしかかっている

 現状の医療保険制度が維持できないことは明らかです。少子高齢化が進行し、医療費を多く使う高齢者の数が増加しているからです。

 「高齢者が医療費を多く使っている」という事実は厚労省が発表している『社会保障と経済成長』からも明らかです。

画像:年齢別1人あたりの医療費と保険料

 75歳から79歳の1人あたり医療費は年77.7万円。80歳以上は年90万円を超え、85歳以上は年100万円の大台を突破する状況です。

 しかし、このような後期高齢者が窓口で自己負担するのは1割だけ。残りの9割は現役世代などが収めた保険料で賄われています。その結果、(数が少なくなっている)現役世代が「重い保険料」という形で負担を強いられているのです。

 この不公平さは是正する必要があると言えるでしょう。

 

同じ医療サービスを受けるにも関わらず、窓口負担の割合が異なるのはおかしい

 世代間の不公平さを是正するには「窓口負担の割合を一律3割」にすることが必要不可欠です。なぜなら、患者として提供される医療サービスは等しいものだからです。

 とは言え、このような主張には「金持ちにとっては負担度が低い」との批判が起きるでしょう。

 ですが、『保険料』の存在を忘れてはなりません。保険料は現役世代が「払い手」になっている上、給与所得で高給を得ている人ほど高額を納付しています。したがって、金持ちの負担度が低いということはなく、窓口負担以外の部分で既に負担しているのです。

 こうした部分を無視し、高齢者に対して医療費を湯水のように使い続けるほど生活に余裕のなくなる現役世代は苦しくなります。少子高齢化の進行を招いた大きな原因は「過剰なほどに優遇されている高齢者」と言わざるを得ないでしょう。

 

「後期高齢者の入院患者」が医療費を押し上げる最大の要因

 後期高齢者の場合、医療費に費やされるのは外来よりも入院の方が多くなるという現実がデータ(= PDF)から示されています。

画像:年齢別1人あたりの医科診療費

 75歳から79歳までの後期高齢者は入院の割合が 45% に留まっていますが、80歳を過ぎると 50% を超過。費やされる医療費の金額も大きく伸びている状況です。

 外来患者として費やされる1人あたりの医療費に大きな変化はないのですから、後期高齢者の入院患者への措置を考えなければならない時期が来ていると言わざるを得ないでしょう。

 「寝たきりの後期高齢者に医療費を惜しみなく投入して延命治療を続けるべきか」が問われているのです。その代償は「現役世代が(現在よりも)重い保険料を支払い続けること」です。これを明らかにした上でどうするかが問われているのです。

 

 事なかれ主義に徹し、現役世代の負担を可能な限り高くするような政策が続くのであれば、経済そのものが立ち行かなくなるのは時間の問題と言えるのではないでしょうか。