小泉進次郎環境相、就任2日で『原発問題』と『処理水問題』をポピュリズムで否定する “軽率なパフォーマンス” で失態をさらす

 環境相に就任した小泉進次郎議員が就任2日でポピュリストとして軽率なパフォーマンスを行い、“代替手段の存在しない不人気政策” を否定するという失態をさらしています。

 『原発問題』と『福島第一原発の処理水』に対する言及が問題なのですが、これらはどちらも環境大臣の所管外です。本人も所管外を認識している中で「自分の人気取り」のために『具体的な代替政策』を示すことなく、無責任な言動をする姿勢は閣僚として論外と言わざるを得ないでしょう。

 

「原発をどうやったらなくせるかを考えたい」と言いながら、「温暖化対策に取り組む」との夢物語を語る環境相

 小泉環境相が致命的なのは「矛盾に気づいていないこと」でしょう。就任会見で「原発をなくしたい」と意気込みを語った一方で、温暖化対策にも意欲を示しているからです。

 小泉進次郎環境相は11日夜、環境省内で行った就任記者会見で東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原発について「どうやったら残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と述べた。2030年度に再生可能エネルギーの電源比率22~24%を目指すと掲げた政府のエネルギー基本計画に関し、さらに比率を拡大すべきだとの認識を示した。

 まず、原発をなくすと2030年度の電源比率は化石燃料を使った火力発電の割合は 75% に達することになります。

 小泉環境相は「再生可能エネルギーの比率をさらに拡大すべき」と主張していますが、それでも火力発電の割合が 60% を下回ることはないでしょう。そのため、『パリ協定』を達成することは夢物語と言わざるを得ません。

 パリ協定での日本の目標は「温室効果ガスの排出量を2013年比で 26% 削減する」です。2013年は火力発電の割合が 90% 弱でしたから、水力発電を含めた再生可能エネの割合が 30% に達することは難しいと言えるでしょう。

 

日本のエネルギー政策は「経済問題」と「使用済み核燃料問題」から目を背けることはできない

 エネルギー政策は経済に大きな影響が及ぶため、無責任な発言は問題です。なぜなら、誰かが後始末をしなければならないからです。

 小泉環境相は「原発を止めて再生可能エネルギーを増やす」という野党や朝日新聞などから喝采を受けそうな発言をしていますが、これを実行すると日本国内の電気代が上昇することは不可避です。

画像:発電構成と電気代

 電力中央研究所の資料(= PDF)で示されているように家庭用電気代はドイツやイタリアのように 30円超/kWh と現在の2倍近い水準になるでしょう。

 この点に触れていないことはアンフェアですし、原発を止めるなら『使用済み核燃料問題』にも言及しなければなりません。「青森県六ヶ所村の核燃料サイクルをどうするか」などには触れておらず、全国の原発から集められた使用済み核燃料の処遇問題が生じることを完全に無視しています。

 具体策も方針表明も極めて稚拙であり、「小泉環境相に閣僚としての実力が備わっている」とは言えないでしょう。

 

「処理済みのトリチウム水を希釈して海洋放出するしかない」との前任者の発言を “お詫び” して風評に加担

 次に前任の原田環境相が「処理水を希釈して海洋放出するしかない」と述べたことに対し、小泉環境相は就任2日目に漁業組合に “お詫び” したと朝日新聞が報じています。

 小泉進次郎環境相兼原子力防災担当相は12日、就任後初めて、福島県を訪問した。事前の予定で報道陣に知らされていた県庁を訪問する前に、いわき市で県漁業協同組合連合会の関係者らと面会。原田義昭前環境相が、東京電力福島第一原発でたまり続ける処理済みの汚染水について「海洋放出しかない」と発言したことを、おわびしたという。

 原子力規制員会ですら、希釈して海洋放出を推奨しています。なぜなら、トリチウムを環境基準値以下に薄めて海洋に放出することは世界中の原発で行われているからです。

 難癖を付けてくる韓国も国内にある古里原発や月城原発から年間数十兆ベクレルの単位で海洋放出を行っています。福島第一原発は稼動時で数兆ベクレルと韓国よりも1桁少ない基準でしたから、過度に騒ぎ立てる必要のないもの問題です。

 にもかかわらず、パフォーマンスに走った小泉環境相の姿勢は論外として厳しい批判にさらされなければならないと言えるでしょう。

 

小泉環境相の行動は「安全だが安心できない」と言ってポピュリズムに走った小池都知事を彷彿させる

 所管外である小泉環境相が「漁協にお詫び」した時点でパフォーマンスです。お詫びするなら対象は「漁協」ではなく風評被害の当事者である「福島県民」でなければなりません。

 風評を懸念する立場を採り続ける漁協は「風評を引き起こす報道を続けるマスコミの共犯者」であり、加害者としての側面も持っているのです。

 したがって、「小泉進次郎という政治家は『処理水』に『汚染水』とのレッテルを未だに貼り続けるマスコミに閣僚として苦言を呈することができるか」が見られていたと言えるでしょう。

 しかし、結果は「小泉進次郎はポピュリスト以外の何者でもない」というものでした。「海洋放出の可能性を検討しているのは経産省の委員会。環境相である私の所管外なのでコメントは差し控える」と言及することすらできなかった現実は重いと言わざるを得ません。

 どうしても発言したいなら、「(海洋放出をするにしても)環境基準を満たしている必要がある」という内容までです。そこで踏み止まることができなかった小泉環境相の能力に批判が集まるのは止むを得ないと言えるでしょう。

 

 『原発の再稼働』や『処理水の海洋放出』は「賛成派の声は聞こえにくく、反対派の声が極端に大きい」という特徴があります。政府が掲げた政策は国益になるが不人気で、(一部の)有権者やマスコミに向けた人気取りをするようでは「撤退戦」を迫れれた際に不安を残すだけです。

 「反発の声に屈することなく、国益のための政治決断をできない」との現状を示してしまった小泉進次郎議員は閣僚の重責を担うことは問題と言わざるを得ないのではないでしょうか。